花粉、給気口でブロック フィルターの汚れにご用心
「給気口にフィルターをかぶせてから、砂ぼこりや花粉に悩まされることが減った」と笑顔で話すのは川崎市に住む田辺敏彦さん(63)。周囲に畑や森など自然が多い田辺さん宅は高台の9階にある。風の通り道になっていて、花粉に加え、砂ぼこりも室内に舞い込む。窓を閉め切っても給気口から砂が入りこみ、床が真っ白になることもあったそうだ。
田辺さんのマンションは自宅兼仕事場だ。世界中から注文を受けてギターの音色を変化させるエフェクターを製作している。「花粉シーズンは、頭痛や鼻水がひどく、集中力が落ちる」と悩んでいた。空気の汚れは電子機器の製造にとっても大敵だった。2年前、リビングと仕事場の窓側の壁についている給気口に花粉や砂ぼこりへの対応をうたったフィルターを取り付けたところ、部屋に入ってくる汚れは大幅に減った。
花粉対策に詳しい東急ハンズMD企画部バイヤーの園田節子さんによると、住居における花粉対策のポイントは「花粉を家に入れない、侵入した花粉は取り除くか、活動させないこと」だそうだ。特に給気口は、花粉の侵入口の盲点だという。
高気密で高断熱化しているマンションの多くで、外気は給気口から入り、浴室やキッチンの換気扇を出口として空気を入れ替えている。「花粉やほこりの侵入を嫌って給気口を閉じると、カビや結露などの原因になり、居住環境が悪くなる」(園田さん)。花粉や砂ぼこりなどの異物だけを除去する給気口用フィルターを選ぶようにしよう。
フィルターを使用するときに注意しなければいけないのは、汚れがたまること。放置すると空気の流れが止まり、換気ができなくなってしまう。フィルターを製造するアルファー技研工業(千葉県市原市)の中澤幸雄さんは「汚れ具合にもよるが、基本的には1、2カ月に1回は交換してほしい」と助言する。
家の中に侵入した花粉を取り除くには丁寧な掃除に加えて、空気清浄機を活用する。田辺さんは「仕事部屋や、リビング、ベッドルームでも、空気清浄機が欠かせない」と話す。遊びにくる花粉症の娘やアレルギーが心配な2歳と5歳の孫のためにも常に稼働させている。
パナソニックエコシステムズ家電営業部の加来あゆみさんは「花粉対策では、田辺さんのように部屋ごとに空気清浄機を用意することが有効」と説く。空中に漂う汚れの中でも大きく重たい花粉は、床への落下スピードが速い。そのため「花粉を遠くの部屋から吸い込むのは難しい」(加来さん)。とくに設置が必要なのは、家族が集まる居間、滞在時間が長く起床直後に花粉が舞うことの多い寝室、学習に集中したい勉強部屋だ。
空気清浄機の設置方法には、コツがある。床に落ちた花粉は「人の動きで舞い上がりやすいので、床上30センチ付近に多く分布する」(加来さん)。だから、吸い込み口を花粉に近づけるために直接床に置く。空気清浄機は、汚い空気を吸ってフィルターでこして空気をきれいにして放出する。性能を良く発揮させるためには、なるべく部屋の隅に置かない方がいい。
「最近は花粉がアレルゲンとして活動できないようにする商品も登場している」(東急ハンズの園田さん)。帰宅時に玄関先で体や床にスプレーで吹き付けて使う。花粉症の原因物質が不活性化され、アレルギー症状を抑えるとしている。
住まいの花粉対策は小さな工夫の積み重ねがポイント。快適さがぐっと違ってくるだろう。
清浄機、能力見極めて
性能が進化している空気清浄機だが、落とし穴もある。多くのメーカーで能力の基準が「たばこの煙での試験」(加来さん)なのだ。花粉はたばこの煙に比べ床に落ちるのが早い。購入時には、花粉対策に力を入れた製品か確認しておきたい。
(ライター 結城 未来)
[日本経済新聞夕刊2016年2月17日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。