原油安ってどういうこと? 売る国の増加が影響

イチ子お姉さん 生活に欠かせないエネルギー「原油」の価格が下がっているの。世界中で様々な影響(えいきょう)が出ているわ。いいこともあれば困ったこともあるのよ。
からすけ ガソリンが安くなっていると父さんが喜んでいたよ。原油安ってボクらの暮らしには良いことなんじゃない? 困ることって何だろう?

売る国の増加が影響

イチ子 日本は海外から原油(キーワード)などのエネルギーを買う立場なの。原油は使う地域によって目安となる価格が違(ちが)うけれど、日本を含むアジアで目安となる「ドバイ原油」は今年、一時1バレル30ドルを割ったわ。

からすけ それ、安いの?

イチ子 2014年半ばまで100ドル前後だったから3分の1以下ね。今の水準は12年ぶりの安さよ。

からすけ そもそも原油の価格は誰が決めるの?

イチ子 昔は原油を採る大きな石油会社が決めていたんだけれど、1970年代に原油が多く採れる「産油国」が決めるようになったの。特に量が多い中東地域は影響が大きくて、戦乱があると「足りなくなるかも」と価格が高くなるのが普通(ふつう)だったわ。70年代には「オイルショック」といって世界中で経済が混乱した事態も起こったの。

からすけ トイレットペーパーが売り切れたんだよね。

イチ子 ええ。その後は、原油を買う国々によって、価格は需要(じゅよう)と供給に応じて市場で決めるようになっていったわ。それでも中東で何か事件が起きると、価格が上がる事態は頻繁(ひんぱん)に繰り返されてきていたの。ただ最近は事情が変わってきたわ。

からすけ どう違うの?

<キーワード>
原油 古代生物の死骸(しがい)が長時間かけて変化した石油のうち地下から採れたままの状態。量は「バレル」(英語で樽(たる)の意)で表す。
シェールオイル 普通の原油より深い地下にある。昔から存在は知られていたが、開発が進んだのは技術革新が進んだ2000年代後半から。

イチ子 まず売り手の変化ね。産油国が多様化して、中東の事件だけで価格が上がるとは限らなくなったの。ロシアなど中東以外での産油国が増えたうえ、シェールオイル(キーワード)という今までより深い場所から採る原油が米国で急増したの。米国は昨年12月、40年ぶりに原油輸出の再開を決めたわ。

からすけ なるほど。

イチ子 買い手の変化も影響しているわ。昔は原油を使ってガソリンなどに加工する会社が買っていたけれど、2000年代に入って実際に原油を使わない人たちの取引が目立つようになったの。投資ファンドと呼ばれる会社よ。

からすけ 使わない原油を買ってどうするの?

イチ子 安く買った原油を高く売るともうかるわ。その利益を狙(ねら)うの。近年、原油価格の変化の幅(はば)が大きくなっていて、ファンドの取引増加のためとみる専門家も多いわ。

からすけ 今はなぜ価格が下がっているの?

イチ子 下がり始めたのは2014年後半から。米国などで生産が増える一方、多くの原油を使ってきた中国などの成長が鈍(にぶ)ったとの見方が広がった時期ね。今年は心配の声がさらに増え、原油も一段と安くなっているわ。

からすけ 中東は情勢不安と聞いたよ。影響はないの?

イチ子 2010年末の「アラブの春」からずっと政情不安だけれど、原油の量にほぼ変化はなく、価格上昇にはつながっていないわ。それに今後は有力産油国のイランが輸出を増やすの。イランが進めた核開発に世界の国々は怒(おこ)って、しばらく取引していなかったわ。でもイランが核開発を制限すると決めたので取引が復活するのよ。

からすけ 経済制裁解除ってやつだね。

イチ子 ええ。ちなみに1月、産油国のサウジアラビアはイランと国交を断ったの。普通だと中東諸国の対立は価格上昇につながるけれど、今回は「これで産油国同士で原油を採る量を減らす相談がしにくくなった」とみる人が多く、原油安が進んだわ。

収入減って困る国も

からすけ 原油安が続くとどうなるの?

イチ子 日本では車や暖房(だんぼう)の燃料代はもちろん、電気・ガス料金も安くなる可能性があるわ。ただ良い影響ばかりではないかもしれないの。

からすけ どういうこと?

イチ子 日本は燃料代などが減って助かるように見えるけど、原油を売っていた国は収入が減って困るわ。ロシアやブラジルなど以前は経済が好調だった国々も、今は苦しんでいるの。日本は工業品を輸出して稼ぐ会社が多いから、海外産油国の景気が悪くなり続けたら、製品を買う相手国を見つけにくくなってしまうかもしれないわよ。

からすけ それは困るね。

イチ子 それに原油は便利だけれど、使い過ぎれば地球温暖化につながるわ。原油が安いからと電気などを無駄(むだ)づかいする人が増えたら、地球環境には大(だい)打撃(だげき)よ。価格はどうあれ、限りある資源としてエネルギーは常に大切に使う気持ちが大切ね。

■日本の生産量は1日分

豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話 原油は古く「石脳油」とも呼ばれ、日本でも産出されています。668年、越国(こしのくに)(北陸地方)から燃ゆる土と燃ゆる水が献上(けんじょう)されたと「日本書紀」にあり、石炭と原油のことと考えられています。江戸時代にも、越後(新潟県)の生活を著した鈴木牧之の「北越雪譜」に、雪中の池の水が火と燃え、その水を引いて風呂のかまどを燃やしたり、灯火に使ったりしたと記されています。貝原益軒の「大和本草」にも臭水(くそうず)、つまり石油が越後の各地から出るとあるようです。
このように、新潟県は古くから石油の産地でした。現在は新潟県のほか、北海道や秋田県で原油が生産されていますが、その年間生産量は日本の石油消費量の1日程度を賄(まかな)えるにすぎません。日本は99.7%を海外からの輸入に頼っており、このことからも諸外国と友好関係を保たねばならないといえるでしょう。
今週のニュースなテストの答え 問1=春節、問2=黒字

[日経プラスワン2016年2月13日付]