遠隔会議、「隣にいない」意識を 名前呼び合う発言者、明確に 時間厳守・スケジュール配慮

2016/2/11

暮らしの知恵

テレビやパソコンを使った遠隔会議。情報通信技術の発達で、遠くにいる人とまるで会っているかのようなコミュニケーションが取れるようになり、導入する企業が増えてきた。ただ、会議の成否は主催する側の準備と配慮、参加者の心構え次第。実りある空間にするためのポイントをまとめた。
埼玉事業所とテレビ会議するサカエの営業担当者(東京都港区)

「埼玉事業所の松井さん、今日はよろしくお願いします」「坂本さん、こちらこそ」――。1月下旬の午後、シュレッダーなど事務用機器を開発するサカエ(東京・港)の本社6階。坂本誉さん(43)をはじめとした営業部の3人が、埼玉県神川町にある同事業所の工場部門の3人とテレビ会議を始めた。

機器チェック重要

工場側を映す画質は鮮明、音声もクリアだ。「でも彼らは私のそばにいない。私は発言する時、必ず名乗ります。私の質問に答えてほしい場合も相手の名前を呼ぶ」と坂本さんは言う。お互いの名前を呼び合うのは遠隔会議でのエチケットだという。

会議中は一方だけでの内々の話は禁物。マイクが声を拾い、画面の相手側が戸惑うからだ。「通常の会議より、相手の気持ちを考える」(坂本さん)

インターネット回線で複数の拠点を結べば、拠点別の画像を分割して映し、会議の資料もテレビやパソコンで共有できる遠隔会議。出張費の削減など企業の合理化が進んでいるのに加え、遠隔会議に使う情報通信機器やシステムの進歩もあり、大企業だけでなく中小の職場でも広がりつつある。

遠隔会議でまず欠かせないのは、機器や通信環境の事前チェック。会議で音声が聞こえない、ハウリングが起きるといったマイク、スピーカーの接続トラブルがあっては大変。接続状況は必ず調べておきたい。

サカエは会議の最低10分前に機器を立ち上げて点検。多くの職場で遠隔会議を取り入れて7年ほどになる帝人は、30分前などできるだけ早い時間に機器を作動させ、会議前に接続先と音声をやりとりするなど入念だ。

テレビ会議の運営では、このほかにも気をつけたい点がある。少人数の拠点を尊重するというのがその一つ。帝人のテレビ会議では主催者が冒頭、「本日は参加が2人と少ない事業所がありますが、みなさんよろしくお願いします」という具合に話す。その後、少人数拠点が発言できているか、議事についてきているか、進行役は通常の会議以上に気を配る。

通常の会議でも求められる時間厳守を、さらに徹底することも重要だ。「タイとシンガポールの現地法人とパソコンを使ったウェブ会議をする時は、時間厳守で1時間に収める。東京と現法は時差があり、それぞれのタイムスケジュールが違うから」とTOTO広報部の山下名利子さん(44)は話す。

その上で、「日本時間に合わせてくれているので、まず『ありがとう』とあいさつする」(山下さん)。日本人同士で顔を合わせる場合は、以心伝心で会議の成果を共有しやすい。だが、現法の外国人スタッフとはそうはいかない。「何が決まったのか、次の会議までに何をしなければいけないのかを盛り込んだ議事録を当日中に作り、参加者全員のパソコン上で共有する」(山下さん)

相手への配慮と、会議後のフォローが欠かせない。「いちいち言わなくても分かるでしょ」「空気を読んで」といったあいまいな進行では、まさに「会議は踊る」ことを肝に銘じた方がいいだろう。

在宅でも外見意識

在宅勤務でウェブ会議に参加する人も多いはず。スーツの着用が求められる企業で働く人は、外見を意識した方がよさそうだ。「カジュアルな服装は望ましくない。細い糸で編んだニットのセーターなどオフィスで着回すものを身につけたい。女性は、まゆ毛をいつも通りに描いた方がいい」。スタイリストの橋本ワコさんは指摘する。

日本能率協会(東京・港)の山崎賢司さんによると、日本の企業文化で遠隔会議の歴史は浅い。「よりよいコミュニケーションづくりのノウハウは個人や職場単位で持っている。今後はそのノウハウを全社的に広げ、社内ルールとして確立してほしい」と話している。

[日本経済新聞夕刊2016年2月8日付]

注目記事