国旗、変わることがあるの?

イチ子お姉さん オーストラリアの東にある島国のニュージーランドが、国旗のデザインを変えるかどうかで悩(なや)んでいるの。3月に国民投票をして決めるのよ。
からすけ 国旗って変えられるの? 知らなかったよ。どうしてわざわざ変更を考えているのかなあ。他にも国旗を変えている国って世界にあるの?

政治の変化や州の増加で

イチ子 家のトイレにある世界地図には、国旗がたくさん載(の)っているわね。覚えた?

からすけ トイレだと時間に余裕がなくて……。

イチ子 じゃあ特別講義ね。国旗はその国を象徴するものとして各国が定めているの。国際連合や五輪会場のほか、公海を通る船もどこの船か知らせるため掲(かか)げるわ。

からすけ 日本は日の丸だよね。

イチ子 ええ。江戸時代末期に開国してから、幕府は外国船と区別するために日の丸を日本の船の印にしたの。その後、明治政府は日の丸を日本の船に掲げる国旗として法的に定めたわ。現在のデザインに正式になったのは1999年よ。法律で日の丸の寸法などを規定したの。

からすけ なるほど。

イチ子 今、国旗で話題なのはニュージーランドよ。デザインを変えるかで議論しているの。でも実は国旗を変更すること自体は珍(めずら)しくないわ。この半世紀で見ても20カ国以上が変えているの。

からすけ そうなの?

歴史、文化、理想など映し出す

イチ子 国旗の色やデザインにはその国の文化や歴史、理想の未来への思いを託(たく)しているとされているの。例えばアルゼンチンの国旗は中央に太陽のマークがあるわ。スペインからの独立運動のときに降り注いだ太陽を自由のシンボルとしたそうよ。このように、新しい国ができたり、政治が変わったりすると国旗が変わることがあるの。

からすけ 例えば?

イチ子 アフガニスタンは政情が不安定で、1919年の独立以降、10回以上も国旗を変えているの。他にも最近ではルワンダやミャンマー、リビアが政権交代や民主化の過程で変えたわ。領土の変更でもあるわ。ブラジルでは1992年に新しい州が加わり星の数が増えたの。

からすけ 国旗の星の数にそんな意味があったのか。

イチ子 同じ国でも国旗を2パターン用意することもあるの。フィリピンの国旗は左に三角の白地、上半分が青、下半分が赤のデザインだけれど、国が戦争状態のときは上下の色を入れ替えて掲げるの。青は平和と真実、正義を、赤は勇気と愛国心を表すからですって。実際、第2次世界大戦時に実施したそうよ。

からすけ 間違(まちが)って逆さまにしちゃったら大変だ!

イチ子 そしてニュージーランドでの議論のように左上の英国旗を外す例ね。国旗変更を公約にしたキー首相が中心に進めているわ。今は左上に英国旗を配し、青地に南十字星を表す4つの赤い星よ。隣国のオーストラリア(英国旗に6つの白い星)にそっくりなのが理由の一つみたい。

からすけ どうしてこんなに似ているの?

<キーワード>
英連邦 英国と、かつての英国の植民地だった独立主権国家からなる自発的な国家連合。現在、インドやカナダなど53カ国が加盟。
マオリ 英国入植前からのニュージーランドの先住民。1840年に英国に主権を譲渡(じょうと)した。言語や文化は同国に深く根付いている。

イチ子 2つの国は英連邦(キーワード)の加盟国で、かつての英国植民地だったの。左上の英国旗はその名残よ。同じ植民地だったインドやカナダなどほとんどの国は、英国旗を廃(はい)して独自の国旗に変えてきたわ。英連邦に加盟する53カ国中、今でも英国旗がついているのはニュージーランドやフィジー、オーストラリアなど少数なの。

からすけ そんなに減っちゃったのか。

イチ子 ニュージーランドでも、植民地時代を連想する英国旗は時代にそぐわないとの声があるわ。昨秋の1回目の国民投票では、南十字星はそのままに、ラグビー強豪チームのマークで先住民のマオリ(キーワード)の信仰(しんこう)の対象であるシダの葉「シルバーファーン」を配したデザインが新国旗案として複数あるなかから選ばれたの。

からすけ 見たことある!

イチ子 でも賛成派ばかりじゃないの。今の旗を掲げて戦った退役軍人など、親しみを持つ人も多いわ。それと国民投票などに約20億円もかかるので批判もあるの。

からすけ 国の顔を変えるのは簡単じゃないんだね。

イチ子 3月の国民投票で国民の最終的な意思が明らかになるわ。実はお隣のオーストラリアでも、国旗変更の議論は何度も繰り返され、フィジーでも変更を考えているの。結果次第ではこれらの国にも影響があるかも。2020年の東京五輪で、各国の国旗のデザインがどうなっているか楽しみね。

■米国、1776年の独立後「英国旗」外す

灘中学校・高等学校の藪本勝治先生の話 国旗は軍旗に起源を持つとされています。中世ヨーロッパの十字軍遠征では、各地の軍団がキリスト教の象徴・十字を描いた旗を掲げ、自分たちを象徴する色を用いました。今もスイスや北欧諸国の国旗に受け継(つ)がれています。英国のユニオンジャックの基になった3つの国旗も皆(みな)、十字のデザインでした。
英国から1776年に独立した米国の星条旗は、当初連邦(れんぽう)を構成していた13州を表す赤白13本の横筋と、左肩には今のニュージーランド国旗と同様に英国旗が描かれていました。しかし翌年、英国からの独立を表して、左肩は青地に13の白星に変更されました。その後も州の増加に伴い星は増え、今では50を数えます。
国旗が共同体としてのまとまりを象徴するものである以上、国家アイデンティティーの変化に従ってデザインを変えていくのは、むしろ自然だともいえます。
今週のニュースなテストの答え 問1=ジカ、問2=13時間

[日経プラスワン2016年2月6日付]