謎多きウナギ 南に3000キロ、深い海で産卵

ウナギはどこからやってくるの?

スーちゃん 冬にも土用丑(どよううし)の日があるって知ってた? 今年は1月20日と2月1日だって。かば焼きを食べに行ったらおいしかった。ウナギってナゾが多い魚だって聞いたよ。どこまでわかっているのかな。

南に3000キロ、深い海で生まれるんだよ

森羅万象博士より 「ウナギはどろから生まれる」。古代ギリシャの哲学者で科学の基礎(きそ)を作ったアリストテレスはウナギを観察してこう考えた。山いもがどろの中で変身するという説もあった。海や川とつながっていない池でウナギが現れたからのようだけど、今ではウナギはえらだけでなく皮膚(ひふ)で呼吸できて雨の日に地面をはって移動したとわかっている。

なぜ、まちがった考え方が長く信じられてきたのかな。生まれたばかりのウナギの赤ちゃんも、おなかに卵を持った親ウナギもなかなか見つからなかったからだ。

ウナギは日本では川や池、湖で見かけるけど、実は海と川を行き来する回遊魚だ。日本から南へ約3000キロメートルはなれたマリアナ諸島に近い深い海で生まれ、数千キロメートルも旅をして日本にやってくる。

ウナギの赤ちゃんや卵を探す研究が始まったのは1930年ごろ。まず日本の近海で始めた。ウナギの赤ちゃんの「レプトセファルス」を台湾の沖で見つけたのは30年以上もたった67年だ。大がかりな調査が進み、91年にフィリピンとマリアナ諸島の間の海で、生まれて間もないレプトセファルスが大量にとれた。

そして2009年、マリアナ諸島の西の海で東京大学などのチームがウナギの卵を見つけた。ウナギが日本にやってくる道のりを逆にたどりながら80年かかって、ようやく産卵場所を突き止めたんだ。

ウナギの卵は直径が1.6ミリメートルしかない。夏に産卵して受精した卵は1日半ほどでふ化する。生まれたばかりのウナギの赤ちゃんは長さが約3ミリメートルで、体にたくわえられた栄養で成長する。1週間ほどで、ヤナギの葉のような形をしたレプトセファルスになる。海流に流されながら、エサを食べて成長していく。

日本海流(黒潮)に乗って日本の近海にやってくるころには細長い形をした「シラスウナギ」と呼ぶ稚魚(ちぎょ)になる。これをとって、いけすで養殖(ようしょく)してウナギに育てている。かば焼きとして食べているのはこのウナギだ。

シラスウナギは日本近海にしばらくとどまって体長が5~10センチメートルに成長し、体が黒っぽくなると川をのぼる。川や池などですむ場所を見つけると、小さなエビやカニ、小魚、昆虫などを食べて成長して大人のウナギになる。

さらに成長して再び海に戻り、マリアナ諸島の産卵場所を目指して泳ぐと考えられている。最近の研究で、ずっと海でくらすウナギもいることがわかってきたよ。

でもまだナゾも多いんだ。日本へやってくるルートはわかったけど、大人になったウナギがどう産卵場へたどりつくのかはわかっていない。卵が見つかってからも毎年、付近の海域を調査しているけど、産卵中の親ウナギは見つかっていない。広い海原でオスとメスがどうやって出会うのかは最大のナゾといわれているよ。

ウナギのナゾは少しずつわかってきた。でもナゾを追う研究はまだ続きそうだね。

■急減、環境変化も影響

博士からひとこと かば焼きなどで食べているウナギのおよそ99%がシラスウナギを人工的に育てた養殖(ようしょく)ウナギだ。しかし近年はシラスウナギが大きく減った。それで日本にやってくるニホンウナギは2014年に絶滅(ぜつめつ)のおそれがある「レッドリスト」に加えられた。
シラスウナギをとりすぎたり、海流の変化で日本にたどりつくシラスウナギが減ったりしたことが理由と考えられている。でも、ダムや護岸(ごがん)などで日本の河川がウナギにとってすみにくくなったことも大きいんだ。乱獲(らんかく)を防ぐ以外にもウナギを守るためにやるべきことは多い。でないとウナギを食べられなくなってしまうよ。

(取材協力=塚本勝巳・日本大学教授(東京大学名誉教授))

[日経プラスワン2016年1月23日付]

注目記事