南極観測隊の役割は 環境問題の解決に貢献

イチ子お姉さん 南極のことを調べる日本の観測隊を乗せた船が今月、現地に無事に着いたわ。隊員の多くはこれから1年間、基地に住み込んで活動するのよ。
からすけ 地球儀を見ると、南極って日本からとても遠いよね。寒い所だって聞くよ。観測隊の人たちはそんな遠くまで行って、一体何をしているの?

手つかずの自然調べ 地球の謎解く

イチ子 南極は日本からはるか1万4000キロ。地球儀の底にあたる部分ね。氷に覆(おお)われた大陸で、面積は日本の37倍。気温も低くて、南極点といって一番底にあたる地点は夏でもマイナス40度、冬にはマイナス70度になるの。季節は日本と正反対。今は夏よ。寒いけれど、船で何とか行き来できる天気だわ。

からすけ その寒さ、かなりキツいね。

イチ子 南極へ行く船は「しらせ」(キーワード)といって、昨年11月16日に日本を出発したの。今月4日に到着したわ。南極に近づくにつれて海も氷だらけになるので、船は氷を砕(くだ)きながら進むのよ。南極観測をする隊員たちは、まずオーストラリアまで飛行機で行って、そこから「しらせ」に乗ったの。船は何度も往来できないので、1年分の食料や燃料、観測に必要な機械を積み込むのよ。

からすけ 隊員は何人で、どんな人たちなのかな。

イチ子 今回は総勢62人。夏の3カ月間、滞在(たいざい)する夏隊が32人で、1年を通して滞在する越冬隊が30人。気象や地形の研究者のほか、基地に新しい建物をつくったり補修したりする土木、通信の技術者、隊員の健康を管理する医師、コックさんなどね。大学や研究機関から選ばれるほか、一般募集もあるの。62人は2月下旬、今いる越冬隊と交代して活動を始めるわ。

からすけ みんなの暮らしは大変なんだろうね。

イチ子 外での仕事は防寒服を着てするから大変よ。その分、仕事が終わったら快適に基地で暮らせる工夫を凝(こ)らしているの。基地は4つあって、一番大きい昭和基地は暖房完備(かんび)はもちろん、宿舎は一人部屋。電話もインターネットもOKよ。一番の楽しみは食事。フランス料理のフルコースが出ることもあるのよ。

からすけ フルコース? ボクも食べたいな。

イチ子 ふふ。ところで、日本の観測隊は1957年から始まり、今回の派遣(はけん)で57回目になるわ。日本以外の国も観測隊を派遣しているの。昔は雪上車といって雪の上を走れる車がなかったので、犬ぞりが活躍したのよ。当時、タロ、ジロという犬がやむをえない事情で置き去りになったものの、奇跡的に生き残り日本に帰った話は有名よ。

からすけ 知らなかった。

<キーワード>
しらせ 日本の南極観測船の4代目で2009年から使用。1910年に南極点を目指した探検家、白瀬矗(のぶ)から命名した。
南極条約 1959年、12カ国で採択。南極を平和的利用に限る内容で、現在50カ国が加盟。2009年時点で基地数は日本を含め約40。

イチ子 昔、世界各国は南極を観測すれば地球の過去を知り、未来を予測できると考えたの。人間が住まない南極は手つかずの自然が残り、大気や氷、海といった地球環境を正確にモニターできる貴重な大陸ということに気づいたわけ。そこで61年、国同士が協力し合って南極を平和的に利用し、科学的な調査を自由に進めようという南極条約(キーワード)が発効したわ。南極はどの国にも属さない、国境のない大陸なのよ。

からすけ それで地球のことは何か分かったの?

イチ子 有名なのはオゾンホール(オゾン層の穴)を南極上空で観測したことね。オゾン層は大気のことで、地上から10~50キロ上空にあって、太陽の光に含まれる有害な紫外線を吸収し、生き物を守っているの。これをヒトが浴び続けると皮膚(ひふ)がんや白内障といった病気にかかりやすくなるといわれるわ。穴がヒトが住む所に広がっては大変なので、オゾン層を壊(こわ)す物質であるフロンガスを使うことが世界中で禁止になったの。

からすけ 地球環境を守る観測だったんだね。

イチ子 実はこれ、日本が1982年に発見したの。日本はほかにも発見をしているわ。例えば基地の一つ「ドームふじ」でも氷を掘り出して成果を上げているの。2007年に深さ3000メートルにある氷を採取したのだけれど、氷は72万年前と大昔のものだったの。氷に閉じ込められた空気と現在の空気を比べた結果、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)が増えていることが分かったわ。

からすけ すごいや。

イチ子 それでも南極にはまだまだ謎(なぞ)が多いの。将来南極に行って、いろんな謎を解き明かしたいと考える子どもが増えるといいわね。今回の観測事業には約46億円の税金が使われているのよ。大人ももっと関心を持つ必要がありそうよ。

■暮らし豊かにした技術 発展支える

東京都立桜修館中等教育学校の荒川美奈子先生の話 南極観測隊はいつどこで観測をしているのでしょう。南極観測船しらせの後方には巨大な理科室のような施設が置かれ、日本と往復する間に海洋生物の観測をします。南極では研究者による大気・氷雪などの観測以外に、設営隊員と呼ばれる人々が、雪上車などの機械や通信施設などを設置し、製品の研究開発データを取ります。
研究の中には、気温の条件でチャンスが数日間という観測もあります。しかし、専門分野の異なるスペシャリスト達が長期間交流し、互いの研究を間近で見る機会はなかなかありません。南極という場が発展を助けた技術は、例えばプレハブ建築やフリーズドライ食品として暮らしを豊かにしています。
しらせで往復する時間があり南極という目標があるから生まれる知見を、日本が技術大国として存在するために守り続けてほしいものです。
今週のニュースなテストの答え 問1=21、問2=野党

[日経プラスワン2016年1月23日付]