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ザ・ウォーク 綱渡りのスリル、3Dの衝撃

2016/1/22付 日本経済新聞 夕刊

1974年、当時世界最高層だったニューヨークの2棟建てのビル、ワールド・トレード・センター(WTC)の片方からもう片方へワイヤーを張り、フランス人フィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が渡った。

東京・新宿の新宿ピカデリーほかであす公開

その衝撃的出来事は英国製ドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』(2008年)になったが、こちら『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などのロバート・ゼメキス監督は、プティの決行までの下準備から、ワイヤーの上を歩き、向こう側に着く前に違法行為で逮捕に来た警察官を挑発するような行動まで描いて見る者の肝を冷やす。

幼いころから綱渡りに魅せられていたフィリップ・プティは、サーカス一座の団長(ベン・キングズレー)に弟子入りする。彼が目指したのは芸人ではなく、アーティスト。やがて一座を離れてパリへ出た73年、偶然見た建設中のWTCの記事に心は決まった。世界最高層ビルの屋上と屋上を結び、そこを渡る!

綱渡りはアート、と信じる男を体当たりで演じ、寡黙にして細やかな表情を見せるゴードン=レヴィットが適役だ。彼の夢に美術学校生のアニー(シャルロット・ルボン)と友人たちが共感、仲間に加わってくれた。渡米し、下準備は建設工事現場関係者の目を盗んで行われ、2棟の間をワイヤーで結ぶことは弓矢の使用で解決した。

強盗や脱獄の下準備のような人目を避ける行為の連打がスリルを生み、そこに輪をかけるのが、3D映像による衝撃。そしてついに不安と恐怖を道づれに命綱もなく、ワイヤーの上にプティの足が踏み出された。

2001年9月11日。WTCは瓦礫(がれき)の山と化したが、そこにアメリカの自信と繁栄の象徴だった超高層ビルがあったことは決して忘れない。ここにはそんな思いが確かにこめられている。2時間3分。

★★★★

(映画評論家 渡辺 祥子)

[日本経済新聞夕刊2016年1月22日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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