人とペット、快適に暮らす 扉やタワーで工夫いろいろ

どうすればペットも人も一緒に快適に楽しく過ごせるだろうか――。愛犬や愛猫と一つ屋根の下に暮らす人たちが住まいに工夫を凝らしている。戸建ての本格的なリフォームから賃貸住宅の小規模な改修まで形は様々。飼い主たちの取り組みや、注意すべきポイントをまとめた。
古谷さん宅では、犬はドアの下部に設けた出入り口から自由に行き来できる(横浜市)

「べべちゃん、こっちよ」。横浜市在住の古谷晴世さんの声にドア下にある専用くぐり戸から顔をのぞかせたのは愛犬のトイプードル。「人と一緒にいたがって」。足元にじゃれる姿に古谷さんは目を細める。

段差をなくしたフロアは歩きやすい防滑効果がある床材で足腰の負担を抑えた。収納の下には犬が落ち着けるような穴蔵風スペースも設けている。ドアの下部につけた専用の扉で、犬は人が開け閉めしなくても好きなように部屋を行き来できる。音漏れも防げて冷暖房の効率も上がる。既存建具に扉をつけるリフォームなら、扉代以外の工賃は3万~5万円程度だ。

◇            ◇

ペットと暮らすことで生じる傷や汚れなどへの効果をうたった建材や設備は近年充実している。「臭いに強いとか調湿効果があるなど様々で質感や価格も幅広い。サンプルで比べてみて」と古谷さん宅の設計を手掛けた藍プランニング(神奈川県茅ケ崎市)の川上章彦さん。犬の育て方や住まいの専門知識を持つ愛犬家住宅コーディネーターの資格を持つ川上さんは、住まいのリフォームを考える際に「不便な点の改善はもとよりペットとどう暮らしたいか見直して」とアドバイスする。さらに「かわいい姿に見落としがちだがペットは人より早く年をとる点も忘れないで」と説く。

カタログで、様々なサイズのドアを選べる

賃貸でペットと暮らす人も増えている。ペット可物件の情報サイト「ペットホームウェブ」を手掛けるエフ・ディ・エス(東京・中央)の有滝敬之さんによると同サイトのペット可賃貸登録物件は2015年末で約13万7000件。時期による増減もあり単純比較はできないが、この3年半で4万件弱増えた。

ただ、実際に物件を探すとなると一筋縄ではいかないようだ。例えば情報の書き方に統一性がなく、同じく「中型犬可」とあってもA物件では入居可でもB物件では不可だったり。「ペット絡みの項目は細かく確認して」(有滝さん)

ペット可賃貸物件に入居できても、大半の賃貸には退去時に原状回復義務がある。高いハードルだが、努力とアイデアで乗り切る飼い主もいる。

東京都中野区に愛猫と暮らす40代の会社員、中根美貴子さんの部屋の壁には手作りの猫タワーがある。愛猫の運動のためにと、市販の据え置き製品も検討したがサイズもデザインも妥協できなかった中根さん、一念発起して未体験のDIYに挑んだのだ。

自室に設置した猫タワーで遊ぶ飼い猫のニコと中根さん(東京都中野区)

壁穴を開けずに柱を設置できる用具を用いた猫タワーの作り方の情報をネットで探し、手本にした。費用は木材、棚板、金具、電動ドライバーなどで1万円強。猫が棚板に移りやすいよう脇に足がかりのチェストを置き、飛び降りたときに足を傷めないよう床にマットを敷いた。

大小失敗はあるものの、仕上がりには満足している。「前の部屋は天袋などで猫が上り下りできたが、今の部屋では無理。タワーを使ってくれてうれしい」。中根さんのように原状復帰が可能なDIYでも、事前に不動産屋や大家に可能かどうか確認しておいた方が安心だ。

◇            ◇

犬や猫との住まいの工夫で大切なのは「採光や通風など基本的な住性能の充実」と1級建築士で家庭動物住環境研究家の金巻とも子さんはいう。人にも動物にも健康で衛生的であってこその快適な暮らしだ。「特に乾燥には要注意。皮膚の免疫力が下がると同時に静電気によりハウスダストが引き寄せられやすくなり健康を害す恐れもある」

ペットに「よかれ」と思って作った設備なのに、使ってくれなかったり、動物にストレスになったりすることもあるという。金巻さんは「人とは常識や行動パターンが違うのを忘れないで」と指摘する。ペットの思いをよくくみとって、ともに楽しく暮らせる住まいにしよう。

■敷金などの上乗せも
ペットと暮らせる賃貸には一般賃貸でペットも可とする物件と、ペットと暮らすことを前提に企画した物件の2種類ある。前者は通常の退去時にかかる原状回復費用以外に脱臭費用などのため1、2カ月分敷金が上乗せされることが多い。

(ライター 村樫 裕理子)

[日本経済新聞夕刊2016年1月13日付]