佐賀に根付くレンコン料理もちもち食感 干潟育ち

先を見通す縁起物としておせち料理や祝い膳に欠かせない食材がレンコンだ。もちもちとした食感が特徴の佐賀県産レンコンは、有明海干拓地の豊富なミネラル分をたっぷりと吸って育つ。きんぴらや煮物の具材だけではなく、地元ではおでんやすしのタネに使うなど、多彩なレンコン料理が楽しまれている。

もちもちした食感が特徴
レンコンの収穫は需要が膨らむ正月にかけてが最盛期だ(佐賀県白石町)

蓮根(はすね)掘る広大な佐賀平野のレンコン農家は、正月向けの出荷で最も忙しく過ごす。佐賀県農業協同組合(JAさが)白石(しろいし)地区蓮根(れんこん)部会長の片渕文俊さん(65)も蓮田の泥に腰までつかり、専用の機械で勢いよく水を出し、土を吹き飛ばして収穫する。「外から見えないレンコンは、掘り出して出来栄えを見てはじめてほっとできる」

レンコンは、乾燥を防いで日持ちさせるため、泥を塗って蓮田から運び出す。その後、泥を薄くまんべんなく塗り直し、大きさごとに8種類の規格で選別して出荷する。福富産物直販所をはじめ地域の小売店などでは泥付きのままビニール袋に入れて販売している。

家庭料理として出されるお好み焼き(左)チップス(中)めんたいこのあえ物

地域の食卓には、素材そのものの風味を感じられる家庭料理が日々並ぶ。お昼時に片渕部会長の夫人、純子さん(59)がレンコンをつなぎに使ったお好み焼き、レンコンチップス、レンコンのめんたいこあえを紹介してくれた。「このあたりではダイコンのように厚く輪切りにしておでんに入れている」とも話す。ふっくらしておいしいそうだ。

他産地のレンコンは一般にさくさくとした歯触りが印象深い。JAさが白石地区中央支所生産指導係の林智寿係長(37)は「冬の佐賀県産レンコンが糸引きも良くもちもちの食感となる理由の1つは、干拓で広げた重粘土質の農地にある」と説く。砂地が多い他県と比べても独特な土壌という。

佐賀県の南西部に位置し、有明海に面した当地のレンコン栽培は、1922年(大正11年)に福富町で始まった。47年に出荷組合を結成。2005年に福富町、有明町、旧白石町が合併して一大産地に発展した。同県は茨城、徳島に続く全国3位の生産量を誇る。

白石町で一般にレンコン栽培は、晩冬に蓮田の施肥を始め、春先に植え付ける。夏に花が開いて肥大し、お盆用に早掘りした後、秋から正月にかけて収穫する。9月頃に葉や茎が枯れ成長が止まるため、それ以降は需要に応じて掘り起こし出荷している。

晩夏の成長途上にあるレンコンは、やわらかくあっさりしており、先端部分を生のお刺し身でも食べられる。ただ、特に新鮮でなければならず、農家やツテがある地元の限られた飲食店だけで食べられている。

こうした逸品に運が良ければありつける白石町内の一店が「だるま寿し」だ。この時期にレンコンを使ったメニューを頼むと、料理長の古賀和幸さん(35)が厚揚げとポタージュを出してくれた。

厚揚げは皮付きのまま蒸し焼きにした後に揚げ、ふっくらほくほく。ポン酢を吸った大根下ろしが引き立てる。ポタージュはレンコンをすり下ろし、搾り汁にだしを加えてからとろみを付け、すり身と合わせた。焼いたレンコンとベーコンの香ばしさがアクセントになっている。

厚揚げ(左)とポタージュ(だるま寿し)
すしはシャリ、有明海産ノリとよくあう(だるま寿し)

大将の小野和則さん(59)がレンコンのすしを握ってくれた。薄い輪切りの握りも縦に短冊切りした巻物もシャリや有明海産ノリとの相性がよく、辛子味噌やゴマなどの薬味も効いて、レンコンを堪能できる。

同じ町内でコース料理が中心の「野々香」では、サワラのはす蒸しなどが入る。料理長の小野智史さん(35)は「地元の鶏肉や佐賀牛を使ったレンコンまんじゅうもメニューに加えていく」と話す。

JAさがは15年6月、白石町内に共同選果施設を整備した。新規就農者も出てきた。佐賀県産レンコンの供給体制を充実させるとともに、独自の味わいを訴えて需要を掘り起こし、消費拡大が見えてくるのか注目だ。

<マメ知識>実はイモと同じ「茎」
レンコンは漢字で「蓮根」と書くので、ハスの根っこと思ってしまうが、実は地下の茎。地下茎へ養分を蓄えて大きくなったものにジャガイモやサトイモなどがある。ほくほくもちもちした食感がイモを思わせるのも、この共通点からかもしれない。
レンコンの穴は通導組織と呼ばれ、葉や地上の茎から取り込んだ空気を泥の中に沈む茎や根へ送る通気孔だ。開いている穴の数は、品種や成長段階などによって異なるものの、中心に1個と周りに9個の合計10個が多いという。

(佐賀支局長 田中浩司)

[日本経済新聞夕刊2016年1月5日付]

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