宝くじ 売れたお金どこへ?

2015/12/22

イチからわかる

イチ子お姉さん 年末ジャンボ宝くじの1等賞金が前後賞をあわせて10億円に増えたの。人気の売り場で買う人の行列は年末の風物詩になっているわ。
からすけ すごい賞金だけれど、もともとはハズレくじを買ったたくさんの人が払ったお金だよね。宝くじって、いったい何のためにあるのかな?

道路や公園つくる費用に

イチ子 日本の宝くじの歴史は古いわ。江戸時代初め、瀧安寺(りゅうあんじ)(現在の大阪府箕面市)というお寺に初詣(はつもうで)をした人から、くじで当たった3人にお守りを授けたのが始まりとの説があるわ。それがくじを買った人にお金が当たる「富くじ」に発展していったの。

からすけ お寺が富くじを売っていたんだね。

イチ子 町中でも売られていたらしいわ。でも徳川幕府は1692年に一般(いっぱん)の富くじを禁止して、お寺や神社だけに売ることを許したの。人々が富くじに熱中しすぎると、まじめに働く気持ちがなくなると心配したからよ。

からすけ どうしてお寺や神社が特別扱(あつか)いなの?

イチ子 寺社が売る富くじは、売上金の一部をお堂やお社の修復費用に充(あ)てるのが目的だったの。信者みんなに役立つから許されたわ。でも「天保の改革」で1842年、幕府は寺社の富くじも禁止したの。復活したのは1945年の太平洋戦争の終戦直前。日本政府が戦争を続けるお金を集めるためだったの。

からすけ 今の宝くじは、みんなの役に立ってるの?

イチ子 今売っている年末ジャンボ宝くじは「全国自治宝くじ」といって、北海道から沖縄まで47の都道府県と20の政令指定都市が共同で売っているの。実は今も「刑法」という法律で富くじや賭(か)け事は禁止しているんだけれど、売上金の一部で自治体がみんなのための仕事をする場合に限って「当せん金付証票法」(キーワード)という特別な法律で認めているの。

からすけ 売上金の一部ってどのくらい?

イチ子 1枚300円の年末ジャンボ宝くじで説明するわ。大まかに言うと、このうち140円が当せんした人に払う賞金、40円がくじの印刷や販売にかかる費用、残りの120円が自治体に入るお金よ。2014年度はいろんな種類の宝くじの売上金が合計9007億円あって、その約4割に当たる3581億円をそれぞれの自治体での売上金の割合に応じて分けたわ。

大災害の復興にも一役

からすけ そのお金はどんなことに使ったの?

イチ子 自治体によって使い道は違(ちが)うけれど、宝くじの売上金が一番大きい東京都の15年度の予算を見てみると、総額は約619億円。このうち68%を少子高齢化の対策に使っているの。保育所や老人ホームの運営、赤ちゃんの医療費などよ。道路や公園をつくったり、学校の校舎を改築したりする公共事業は29%。残りの3%は国際的な映画祭を開いたり、貴重な文化財を保護したりするお金ね。

からすけ ずいぶんいろんなことに使われているね。

イチ子 宝くじは国をあげて取り組む大きなイベントや大災害からの復興にも一役買っているのよ。例えば東京オリンピックが開催された64年には記念宝くじが発売されたし、95年の阪神大震災、11年の東日本大震災では宝くじで復興支援のお金を集めたわ。

からすけ 宝くじが売れればみんなが助かるんだね。

<キーワード>
 当せん金付証票法 宝くじのやり方を定めた法律で1948年にできた。当たりくじの賞金は、くじ1枚の価格の250万倍までと決まっている。
 スポーツ振興くじ サッカーの試合結果を当てると賞金が出る。売上金の一部を競技場の整備などに充てる。2014年度の売上金は1107億円。

イチ子 そうね。でも宝くじの売上金は、05年度の1兆1047億円がこれまでの最高。年末ジャンボの1等賞金を引き上げたのに、ここ数年は売れ行きが落ちているの。少し前までの景気低迷のせいみたい。01年に全国で始まった「スポーツ振興(しんこう)くじ」(キーワード)の影響もあるようよ。「toto(トト)」って聞いたことある? サッカーの試合結果を当てるの。

からすけ 宝くじは外国にもある?

イチ子 主要国にはみんなあるわ。世界の宝くじの起源は2000年前のローマ時代という説もあるの。宝くじの売上金が多いのは米国やイタリア、中国など。日本と同じように、国や自治体が宝くじを売って売上金の一部を公共事業や社会福祉、スポーツ振興などに回しているのよ。

からすけ 宝くじに興味が出てきたよ。1枚300円ならお小遣(こづか)いで買おうかな。

イチ子 残念。法律では年齢(ねんれい)制限はないけれど、宝くじ売り場では、通常子どもには販売しないわ。からすけがもし10億円当たったらどうする? がんばって勉強して、大人になったら一生懸命働こうなんて思わなくなるでしょ。教育上よくないものね。

■古代、くじは神の意思問う行為

灘中学校・高等学校の藪本勝治先生の話 確率論的に考えれば損をする可能性が高いにもかかわらず、多くの人が購入(こうにゅう)する宝くじ。その消費行動は、損得勘定(かんじょう)とは異なる論理に基づくように思われます。
 くじそのものの歴史は古く、『日本書紀』にも記されています。古代・中世の日本では、為政者(いせいしゃ)が大きな判断を迫られた時に神前でくじを引き、神の意思を問うことが広く行われました。また、宝くじの前身である富くじも、買うことで神仏と直接的に関係を持てること自体に意義がありました。古来くじを引く行為には、利害計算のような世俗的(せぞくてき)論理を超えた、神聖な力に触(ふ)れるという宗教的感覚がまつわっているのです。
 決まりきった日常の論理から離(はな)れ、その外側で誰もが平等に「夢を見る権利」を与えられる。そんな特別な場に参加できるという点にこそ、宝くじを買うことの大きな意義がありそうです。
今週のニュースなテストの答え 問1=2008、問2=水素

[日経プラスワン2015年12月19日付]

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