仕事×社外活動 二足のわらじ 成功の極意本業大事に、無理しない 周りに伝え、協力得る

働きながらNPO活動をしたり、大学院に通ったり、別の仕事をしたりと、進んで「二足のわらじ」を履くビジネスパーソンが増えている。社員の社外活動は会社にもメリットをもたらすと、企業が後押しする動きも広がっている。だが、二足のわらじは一歩間違うと本業にも支障を来す恐れがあるなど、両立はそう簡単ではない。成功の秘訣をまとめた。

「本業以外でも社会貢献したいと考える社会人は多い」と話すのは、社会人のボランティア活動を支援するNPO法人「二枚目の名刺」の常務理事、松井孝憲さん。「社員の社外活動は、会社にイノベーションをもたらすなど様々な効果が期待でき、積極的に後押しする企業も増えている」

エン・ジャパンが運営するウェブ・IT業界のキャリア情報メディア「CAREER HACK」編集長の松尾彰大さんも「優秀な人材確保の面からも、社員に副業を認める企業が大企業も含めて徐々に増えている」と、背景を説明する。

半面、二足のわらじを目指したが「長続きしない人も少なくない」(松井さん)のも事実。両立させるには、どんな点に注意すればいいのか。

松井さんは「NPO活動を本業の憂さ晴らしのように考えている人は、長続きしない」と、まず心構えをポイントに挙げる。「NPO活動で活躍する人は本業でも成果を上げている人が多い。本業をおろそかにしてはいけない」

松尾さんは「重要なのはタイムマネジメント」と強調する。「会社勤めの人は、普段は管理される側。自己管理は必ずしも慣れていない。注意しないと、意欲が空回りし、仕事が遅れたり仕事に穴を開けたりして、周囲に迷惑をかける」と指摘する。その上で「無理に頑張り過ぎないことが成功のコツ」とアドバイスする。

■時間管理、ITで

好例が、大手機械メーカー勤務の加賀宝さん(46)だ。2年半ほど前から、二枚目の名刺を通じて、聴覚障害者の教育支援に取り組むボランティア活動をしている。本業に支障が出ないよう、仲間との会議はもっぱら週末。急ぎの用事の場合は、平日夜にインターネット電話を使って会議をするなど、ITを上手に活用しタイムマネジメントをしている。

本業以外に社会活動を行うNPO法人「二枚目の名刺」の加賀宝さん(左から2人目)=東京都大田区

加賀さんは、活動を始める際、「自分ができるのはここまで」と仲間にはっきり伝えたという。「自分のペースを守ることが成功のコツ」と話す。

会社との十分なコミュニケーションも欠かせない。会社によっては就業規則で副業を禁止しているところもある。「仮に副業が認められていても、無用のトラブルを避けるためには、人事部門などときちんと話し合っておいた方がいい」(松尾さん)

就業時間外にするボランティア活動や習い事は、原則、個人の自由だ。ただ、「人事部門や上司に事前に伝えておいた方が、協力を得やすいこともある」(松井さん)。

投資運用会社取締役の白水美樹さん(47)は、前の会社で管理職をしていた時、働きながらビジネススクールに通学した。上司には、なぜビジネススクールに行きたいのかを説明し、同僚や部下には「今の自分の力では仕事で皆さんに迷惑をかけるので、勉強する機会を下さい」と理解を求めた。

平日夜の残業時間帯に、授業のために中抜けすることもあったが、周囲に伝えておいたおかげで、仕事に大きな支障が出ることはなかったという。

今年4月からやはりビジネススクールに通う、ワイン輸入会社取締役の波木居恵一さん(48)も、授業を欠席できないので、会社には「週末の顧客向けイベントには顔を出せない」と理解を求めた。専務からは「勉強、頑張ってね」と激励されたという。日ごろの会社への貢献が、好意的な返事につながったようだ。

業種によっては、個人の業務時間外の活動とはいえ、特別の配慮を求められることもある。

■会社名ださない

外資系金融機関に勤務する30代の男性は、複数のNPO団体で活動しているが、NPOの仕事で講演をする時などは、講演先の情報を会社に逐一届け出ている。万が一、反社会勢力とのつながりがあると、金融機関としての信用にかかわりかねないためだ。

「会社名をむやみに出さない」(松井さん)ことも心掛けたい。社外活動の場で不用意に会社の名刺を配ったりすると、ネット上に会社名が流れるなどで会社から要らぬ詮索を受けることもある。連絡用のメールアドレスも、ウイルス感染などのリスクを避けるため、会社のドメインとは別のものを使うべきだろう。

(ライター 猪瀬 聖)

[日本経済新聞夕刊2015年12月14日付]

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