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歌舞伎座12月公演 玉三郎主導で花形が大健闘

2015/12/16 日本経済新聞 夕刊

花形たちを糾合して玉三郎が主導する今月の歌舞伎座はさながら玉三郎歌舞伎学校の趣きである。独自の歌舞伎美学、独自の芸風を以(もっ)て一代を築いた異能の天才のこと、おのずから玉三郎校長の教育もそれを反映して、見る者はときに頷(うなず)いたり首をかしげたりすることになる。松緑、七之助、松也、児太郎等がひとつだけでも大変な大役難役に二つも三つも取り組むなど、カリキュラムもハードである。

七之助の八重垣姫、児太郎の濡衣(ぬれぎぬ)、松也の勝頼での「廿四孝(にじゅうしこう)」は型の定まった古典中の古典、皆々神妙につとめるオーソドックスな舞台。中では七之助が一日以上の長。

異色の新入生?中車が木下順二作の民話劇「赤い陣羽織」に取り組む。玉三郎演出と明記した舞台は客席を使った追駆けなど従来版より振り幅大きく、満場を沸かせる。

玉三郎の名は出さないが常磐津屈指の大曲「積恋(つもるこい)雪関扉(ゆきのせきのと)」を外題も「重恋(つもるこい)雪関扉」として竹本と常磐津の掛け合いの曲に改めた新演出で見せる。松緑の関兵衛実は黒主、松也の宗貞、七之助の小町姫がそれぞれ健闘する中、玉三郎みずから墨染(すみぞめ)をつとめる。竹本との掛け合いで人物の対比が明確で分かりやすい半面、常磐津の大曲らしい濃厚な味わいが玉三郎好みのテイストに変質する。

夜の部は「妹背山婦女庭訓(おんなていきん)」から珍しい「杉酒屋」を出して「道行」「三笠山御殿」とお三輪に関する筋で通すのは妙案。玉三郎は「御殿」のお三輪をつとめ前半の七之助と分担。この七之助が「御殿」まで通して見たくなるほどいい。松也の求女、児太郎の橘姫も相応の実力を見せる。歌六の入鹿が地声でなく役の声を作った発声でさすが。中車が初の女形豆腐買い、団子が子太郎で活躍する。26日まで。

(演劇評論家 上村 以和於)

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