007 スペクター
肉体を駆使、鮮やかな動き
007シリーズの第21作『カジノ・ロワイヤル』から007号ジェームズ・ボンド役がダニエル・クレイグに交代して4作目。今回も従来通りCGを使わず、肉体を駆使した鮮やかな動きでスパイ・サスペンス映画の王者の風格を見せる。
前作『スカイフォール』で英国秘密情報部MI6の刷新を予告、レギュラー・メンバーを入れ替えるなど、シリーズの若返りを図ったのがサム・メンデス監督。続投の今回はボンドの敵の背後に見え隠れする謎の国際犯罪組織スペクターの存在を明らかにして、ボンドとの関係を語っていく。
メキシコからロンドンに戻ったボンドがMI6の本部に顔をだせば、統括責任者M(レイフ・ファインズ)は傲慢な国家安全保障局員Cの言うがまま。ドラマの進行と共にCが各国の諜報(ちょうほう)機関を統合する世界最大の情報システム"ナインアイズ"設立を主導しているらしいことが見えてくる。
ローマへ飛び、暗殺者から救ったマフィアの未亡人(モニカ・ベルッチ)にスペクターの総会の場を教えられて潜入。首領の席にはなんと幼い日のジェームズを愛して育てた恩人の息子フランツ・オーベルハウザー(クリストフ・ヴァルツ)がいた。
悪党たちを操っていたのがスペクターと知ったボンドの戦いが始まる。今度の彼らの狙いは? 味方はボンドに娘を守る約束をさせて秘密を洩(も)らして死んだスペクターの一員の娘マドレーヌ(レア・セドゥ)だけ。
アストンマーティンDB10の登場や列車内での死闘が目を奪う。巨悪がクリストフ・ヴァルツでは少々小粒だが、ボンド・ガールを大物女優2人に絞ったのが成功して、女殺しで売ってきた色男ボンドの魅力が際立つ。まだまだいけそうなボンドだが、演じるダニエルは続投か否か? それが気がかり。2時間28分。
★★★★
(映画評論家 渡辺 祥子)
[日本経済新聞夕刊2015年11月27日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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