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暮らしの知恵

省エネ極め快適な我が家 太陽光発電、効率良く運転

2015/11/28

暮らしの知恵

「ゼロエネルギー住宅」という言葉を最近目にする。エネルギーの利用効率の高い住宅設備と太陽光発電を組み合わせ、年間の消費エネルギーの購入負担を減らす住宅のことだ。1年を通して屋内の温度差が小さく、暮らしも快適になるという。ある利用者を例に実態を探った。
洗面台の裏に収納した容量8.9キロワット時の蓄電池(埼玉県志木市の芝崎さん宅)

「太陽光発電と蓄電池、燃料電池を組み合わせれば、1日の電気はまかなえるな」。埼玉県志木市に住む会社員、芝崎和孝さん(57)はそう考えた。自宅は2階建て。妻の尚子さん(55)らと一家5人で暮らす。

この家の屋根には最大出力6.7キロワットの太陽光パネルを搭載している。太陽が昇ってからパネルで発電し、生み出した電気でテレビやエアコン、冷蔵庫など家電製品を動かす。余った電気は東京電力に売っている。

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2011年3月11日の東日本大震災のときは、翌日まで電気が復旧せず、不安な夜を過ごした。「停電があっても1日過ごせる家にしたい」。芝崎さんは発電や蓄電、省エネを組み合わせたゼロエネルギー住宅を建てることを考えた。築40年を超える木造の家を壊して鉄骨の家に建て替えた。12年12月の完成からまもなく丸3年を迎える。

太陽光発電と容量が8.9キロワット時の蓄電池、発電しながらお湯を沸かす燃料電池の3つを使っている。蓄電池は停電が起きた場合に備えて電気の残量を常に50%を下回らないよう確保しておく。平日の昼間など、電気の消費量が少ないときは余った電気を電力会社に売る。深夜の安い電気をためて朝に使う。発電や電気消費の状況を一目で把握できるエネルギー管理システム(HEMS)で空調などを無駄がないように管理する。

大型のテレビモニターで、今月どれだけの電力を使ったか確認する芝崎さん夫妻

屋内でエネルギーを消費するのは主に冷暖房設備、換気システム、給湯器、照明器具、家電製品の5つ。消費を実質ゼロにするには、エネルギー効率の高い住宅設備も欠かせない。

ちょうど今ごろ、晩秋から冬にかけては、室内の暖めた空気を外に逃がさないようにする。夏であれば外の熱気が入り込むのを防ぐ。1年じゅう外気温の影響を受けにくくできれば、空調でかかるエネルギー負担を抑えられるというわけだ。

この家では、熱の出入りが最も大きい窓を複層ガラスにしている。2枚の板ガラスの間に熱を伝えにくい金属膜を挟み込んでいる。室外から入る日射熱を遮り、室内の熱を室外に逃がさない。夏に室内の温度上昇を防ぎ、冬には温度低下を防ぐ。天井や壁、床には熱を室外に出さないよう、日本の北海道や東北など寒冷地で使われている断熱材を取り入れた。

給湯器は発電機を兼ねる。燃料電池「エネファーム」は、都市ガスで発電しながらお湯を沸かす。照明には、電力消費の小さい発光ダイオード(LED)をふんだんに使っている。

2014年の光熱費全体は約18万円だった。電気代だけをみると、太陽光発電の売電による収入が約19万円に比べ、東京電力からの買電による支出は約16万円と3万円近く収入が上回った。冷暖房を使わない5月単月ではガスを含めても光熱費の収入が支出を上回った。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度が始まった12年以降、太陽光発電などでエネルギーを自給する動きは一般家庭にも少しずつ広まっている。

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住宅の省エネ化と、健康で快適な暮らしとの関係も注目されている。断熱性能の高い建材を使用すると、冷暖房の効率がアップするだけでなく、季節の変化に伴う屋内全体の温度や湿度の変化も小さくなるからだ。

冬であれば、暖かい部屋から寒い浴室に移動するなど急激な温度変化で体調が急変する「ヒートショック」を予防できるかもしれない。蒸し暑い季節にカビの発生を抑えることも期待できそう。

ゼロエネルギー住宅は太陽光や高性能な断熱材などを導入するため、価格は通常の住宅よりも一般に2割程度高くなるともいわれる。積水ハウス執行役員の石田建一さんは「快適な空間で居住者の心身の健康が保たれれば医療費などの負担も減る」と、かけたコストに見合うだけのメリットがあると説明している。

■保証・保守体制に注意
 太陽光パネルは15年以上、蓄電池は10年間と一般の家電製品に比べて長い期間使い続ける。高価な買い物だけに保証期間や保守点検の体制も確認したい。パネルも発電効率、価格の違いなど何を重視するか比較検討したうえで選びたい。

(企業報道部 後藤健)

[日本経済新聞夕刊2015年11月25日付]

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