女性に多い尿漏れ・頻尿 骨盤底筋鍛え対策を

尿漏れや頻尿といった悩みは、なかなか他人に話せないものだ。一人で悩んでいる中高年女性は多いという。トイレを気にして外出が憂鬱になり、好きな趣味もできなくなるなどし、生活の質が低下することも。だが、悩むよりも、適切な対策をとることで、実は改善することは多い。今から予防もできる。

「一瞬だった」。東京都に住む53歳の女性は、10年ほど前、エアロビクス中にジャンプしたら尿が漏れて下着がぬれた。突然で驚いたが、日常的に困るほどではなく、医療機関は受診しなかった。ところが「2年前に外出先で笑いすぎたら服までぬれて焦った」。

思い切って女性医療クリニック・LUNAグループ(横浜市)を受診。骨盤底筋トレーニングの指導を受け、取り組んで1カ月で少し変化が出てきた。「もっと早くやっておけばよかった」と話す。

■20~30歳代でも

「女性は骨盤底筋が弱くなりやすく、尿漏れや頻尿になりやすい」(泌尿器科医で同クリニックの関口由紀理事長)。女性下部尿路症状診療ガイドラインをまとめた、日本大学医学部泌尿器科学系の高橋悟主任教授は「40歳以上の女性の3人に1人は尿漏れ症状があり、20~30代の女性もいる。だが、受診率は1割ほどと低い」と話す。

適切な対処で生活の質は大きく改善するので一人で悩まないことだ。「女性の尿失禁の大きな理由は、腹圧性尿失禁と過活動膀胱(ぼうこう)によるもの」(高橋氏)

腹圧性尿失禁は、くしゃみやせき、運動、笑いなど、おなかに力が入った瞬間に尿が漏れる。最も関連するのは股部分にある骨盤底筋。複数の筋肉が集まっている。この筋肉群が弱まると、しっかりと尿道を締められない、膀胱を支えられず不安定になるなどで意図しない排尿につながる。「少量でも尿失禁。早めに対処を」と関口氏。

加齢による筋力低下のほか、女性の場合は妊娠や出産で傷めやすい。閉経期に女性ホルモンの分泌が低下し、筋肉に張りが無くなることも一因と考えられるという。「肥満も骨盤底筋の負担に。痩せると改善する人が多い」(高橋氏)

正しく骨盤底筋を動かすトレーニングで対処できることが多い。動かせているかどうかみるには入浴時などに、膣(ちつ)で指をしめられるかどうか試すとよい。2~3カ月の筋トレで効果がみられる。立ちながらや椅子に座ってでもできる。

「中等度までなら6~7割の人が改善する」(高橋氏)。予防にもなるので、妊娠・出産時期など、どのライフステージからでも始めるといい。ほかの治療としては、補助的に薬で症状を緩和することやテープで尿道を支える手術などもある。

■神経伝達も一因

腹圧性の失禁とは少し症状の違うものに切迫性尿失禁がある。多くは過活動膀胱と呼ばれる、尿意切迫感があって頻尿の症状を伴うものが原因だ。急に尿意を感じ、トイレまで間に合わない。膀胱と脳の伝達がうまくいかず、膀胱が勝手に収縮し漏れてしまうという。

水分の取りすぎのこともある。1日の標準水分摂取量の目安は1~2リットルと考えよう。また、抗コリン薬などの薬物療法で緩和できることも多い。骨盤底筋トレーニングもいいが、腹圧性の場合より効果が落ちる。

この場合は膀胱訓練もいいという。過活動膀胱の人の多くは、尿意を感じても膀胱に尿があまりたまっていない。それなのに排尿していると、膀胱自体が縮んでますます頻尿になる。心配するあまり、早めにトイレに行く場合も同様だ。

ためられる尿量を増やし排尿間隔をあける訓練をする。尿意を感じたら5秒ほど我慢する。1週間ほど続けたら、5分、10分と延ばしていく。1カ月ぐらいで効果が見え始めるという。

腹圧性と切迫性の両方の症状がある混合性尿失禁の人は3割。主な症状に応じた治療をする。

自分の症状を知るためには排尿日誌をつけてみよう。トイレの時刻、排尿量、尿意の有無、尿漏れの程度、水分摂取量などを2~3日分記す。標準の排尿回数は昼が5~7回で夜は0~1回、量は1回200~400ミリリットルだ。「日誌は診断にも役に立つ」(関口氏)

「尿漏れや頻尿が心配で外出したくない、好きな趣味をやめたくなったなど、あればぜひ受診を」と関口氏。「泌尿器科の中でも排尿機能の専門医が望ましいが、まず内科や婦人科のかかりつけ医でもいい」(高橋氏)

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排尿痛あれば膀胱炎も疑って

頻尿でも、きちんと医療機関で診てもらった方がいい場合がある。頻尿だけでなく、膀胱や会陰部が痛むときは、間質性膀胱炎の疑いがあるという。

膀胱炎には細菌性のものもあり、頻尿となるが、尿検査でわかるほか、尿を出し終わるときに痛みがあるのが特徴だ。一方、間質性膀胱炎は、原因不明で膀胱に炎症が起こる。尿がたまると痛い。抗生剤を飲んでも過活動膀胱の薬を飲んでも症状がよくならず「慢性膀胱炎」などと見逃されがちな疾患だ。

40歳以上の女性に多い。適切な治療で生活に支障のないところまで緩和できる。自己判断せず、必ず受診しよう。

(ライター 小長井 絵里)

[日経プラスワン2015年11月21日付]

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