パルコ劇場「オレアナ」男女の闘い、恐ろしい狂信

日々忙しく働く人こそ、ご覧あれ。セクシュアルハラスメントの恐怖劇は人ごとではないのだから。鬼才デイヴィッド・マメットの代表作。

出演者はふたり、およそ2時間の密室劇。1992年初演のアメリカ演劇で、日本でも過去の翻訳上演が演劇賞を受けている。今度の栗山民也演出は男女の闘いに恐ろしい狂信を映しだし、出色だ。

舞台は大学教師ジョンの研究室。女子学生キャロルが授業がわからないと訴えると、ジョンは個人授業を前提に単位を約束する。後半のキャロルは見るからに別人。組織の指導を受けたらしい。不用意な発言を暴き、やがて……。

ジョンは終身在職の栄誉が目前、新居購入にかかわる電話が繰り返し入る。呼び出し音が会話を断つたび言葉は心を失って、制御不能に(小田島恒志訳)。意味のとり違え、ふいの沈黙。間が魔に転じて人間をおかしくする不気味さは、マメット劇ならでは。

田中哲司は異様な熱を帯びるセリフに鋭い痛覚がある。動揺し、抑鬱となり、怒りを爆発させるまでがピンとはった糸のよう。あとは静の演技の奥行きをもっと。キャロル役で初舞台の志田未来はセリフが上滑りしないのがいい。言葉のゆがみがくっきり。

初演当時の風俗的目新しさはもうない。体面にこだわり、意外な本性をあらわすジョン。生硬な言葉に傾斜するキャロル。ここにある修羅の光景をどう受けとればいいのか。観客も激しい葛藤の渦に巻きこまれる。正義が狂気に裏返るアーサー・ミラーの名作「るつぼ」にも通じる作意が今、掘り起こされる。

シャープな演出が観客に問いかける。非寛容の連鎖は止められるのか。題名は理想を求めて陥る絶望をいう慣用語。

(編集委員 内田洋一)

11月29日まで、東京・パルコ劇場。12月1、2日、愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLATホール。12月5、6日、福岡・北九州芸術劇場・中劇場。12月8日、広島・JMSアステールプラザ大ホール。12月12、13日、大阪・森ノ宮ピロティホール。

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