公立図書館、民間が運営 メリット・デメリットは

イチ子お姉さん 街の公立図書館が変わってきているの。民間の会社が運営者になって、夜でも本が借りられたりカフェでお茶が飲めたりするのよ。
からすけ 図書館のイメージとはだいぶ違うね。なんで民間の会社が図書館を運営するのかなあ? 便利なのはいいけれど、問題はないの?

夜の利用やカフェで便利に

イチ子 公共図書館というのは、図書館法(キーワード)という65年前にできた法律に基づいているのよ。国民の誰(だれ)もが自由に必要な本に触(ふ)れられるように、本の無料貸し出しなどを定めているわ。法律に従って自治体が図書館を設置・運営してきたの。

<キーワード>
図書館法 1950年に制定された。図書や資料を一般利用者に無償で提供することなどを定めている。
指定管理者制度 自治体などに限っていた図書館や博物館などの運営・管理を企業やNPO法人に代行させる制度。

からすけ 法律があるおかげで誰でも手軽に本を借りられるんだね。

イチ子 でもね、都道府県立の図書館は1館あたり年1億9000万円近くお金がかかるわ。そこで2003年に指定管理者制度(キーワード)という仕組みができたの。図書館など公共施設(しせつ)の管理・運営を、民間の会社やNPO法人などに任せることができるようになったの。コスト削減(さくげん)やサービス向上のためよ。

からすけ 会社が運営する図書館は増えているの?

イチ子 ええ。全国の公共図書館のうち、1割以上を会社やNPO法人などが運営しているわ。夜まで開けたり、家にいながら図書館の本を借りられたりと便利になってきたの。

からすけ ニュースで見たよ。おしゃれなカフェ風の図書館もあったなあ。

イチ子 今年10月にレンタル大手「TSUTAYA」の会社などが運営を始めた神奈川県海老名市の図書館は、カフェと図書館、書店が一体となったライブラリー・カフェとして注目されているわ。同社が13年4月から手掛(てが)ける佐賀県武雄市の図書館では、14年の来館者が以前の3倍以上の約80万人に増えたの。

からすけ そんなに!

独自のやり方 時には混乱

イチ子 でも問題も出てきたわ。武雄市の図書館では、この会社が新たに買った本の中に、誰も読まないような古い資格本などがあったの。本の分類も独自の方法にした結果、例えば海老名市の図書館では、小説が旅行本と一緒の分類になっているなど混乱する利用者もいたようよ。

からすけ それは困るね。どうしたらいいの?

イチ子 重要なのは、公共の施設にふさわしい運営がされているかどうか市民が見守ることね。そして運営側も、利用する市民の意見を聞いて必要なら反映していくことが大事よ。

からすけ なるほど。

イチ子 それと、レファレンスサービスといって、必要な資料を専門的な立場で助言するサービスの重要性を指摘する声もあるの。図書館では司書という専門の人が地域特有の事情や住民のニーズに応じて情報を教えてくれるのよ。

からすけ 司書の人は図書館に必ずいるの?

イチ子 日本の図書館では司書の人を置くのは義務じゃないわ。毎年1万人以上の人が資格を取るけれど、パートや非正規の人も多く、雇用(こよう)が不安定でお給料が安いケースも少なくないみたい。人を雇(やと)うのにお金がかかるから司書を減らす動きもあるの。

からすけ それは残念だなあ。

イチ子 困っているのは司書だけじゃないのよ。図書館の数は毎年増えているけれど、本の販売は減っているの。みんなが図書館で借りるばかりで本を買わなくなったら、作家さんなどの暮らしが大変になるし、新しい本を出しづらくなるわ。だから図書館で貸し出した本の量に応じて、作家さんなどにお金を払う仕組みを訴(うった)える人もいるの。

からすけ 本を借りるのにお金を払うの?

イチ子 例えばカナダでは借りるために会費を取る州もあるわ。でも日本は法律で無料貸し出しを決めているから、それは考えにくいわね。英国では、政府が代わりにお金を払う制度を導入しているの。

からすけ でもそれだとお金がかかっちゃうね。

イチ子 そうね。だから議論は慎重(しんちょう)に進めなくちゃね。新しい本の貸出時期を遅(おく)らせてほしいという訴えもあるわ。イタリアでは最短でも1年半ほどは新しい本を貸し出さず、作家や出版社を守っているの。いろんな図書館のあり方を知って、みんなでいい形を探せたらいいわね。

■江戸時代も民間が担う

灘中学校・高等学校の藪本勝治先生の話 日本最初の図書館は、奈良時代に石上宅嗣(いそのかみのやかつぐ)がつくった「芸亭(うんてい)」だといわれています。これは貴重な蔵書を公開した施設で、平安時代に菅原道真がつくった紅梅殿(こうばいどの)も同様です。
また、鎌倉時代の金沢文庫(かねさわぶんこ)や江戸時代の紅葉山文庫(もみじやまぶんこ)など、将軍のお膝元(ひざもと)には図書館が設けられました。ただ、一部の知識人や上流階層のためのもので、誰もが利用できる公共図書館が整備されていくのは明治時代になってからです。
では庶民(しょみん)向けはどうだったのでしょうか。実は大衆文芸の発達した江戸時代に、貸本屋という民間業者が図書館の役割を担い、大いに繁盛(はんじょう)しました。1800年頃(ごろ)には江戸・大坂で1000軒(けん)近くが営業していたとの記録が残っています。近年、図書館と民間企業との連携(れんけい)が話題になっていますが、日本ではもともと両者が一体であったといえそうです。
今週のニュースなテストの答え 問1=イラン、問2=830

[日経プラスワン2015年11月14日付]

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