ぷくぷくかわいい多肉植物を身近に

ぷっくりとしたユニークな姿形と、丈夫で手入れのしやすいのが魅力の多肉植物。もともとは高温乾燥地帯が原産だが、近年は日本で栽培された多肉植物が中国や台湾などアジアでもブームになっているという。今年の冬の切手にもデザインされた。上手な育て方や、寄せ植えなどアレンジの楽しみ方を紹介する。

絵を描くように植える

寒くなると葉の先が桃色に色づく「乙女心」、今にも水滴がこぼれそうに光が透ける感じが美しい「雫石」。見る角度で小さな動物のようにも思える姿形。葉や茎が肉厚なのは、南米やアフリカなどの厳しい環境で生き抜くため、水や養分を蓄えられるように進化したからだ。おかげで育てる際、手間がかからない。

創業85年のサボテン・多肉植物専門店「鶴仙園」(東京・豊島)の鶴岡秀明さんは「セダム、エケベリアといった属性に分かれ、品種は数千種ともいわれる」と話す。園芸品店だけでなく、雑貨店などでも販売されるようになり、多くの人に親しまれているという。

多肉植物の寄せ植えを習う参加者(東京都千代田区)=写真 五十嵐 鉱太郎

10月半ば、ギャラリー「組む 東京」(東京・千代田)で、多肉植物のアレンジや販売のアトリエ「季色(ときいろ)」(千葉県浦安市)がワークショップを開催。男女8人が寄せ植えを体験した。季色が監修する「多肉植物BOOK」(メイツ出版)は1年で5刷、台湾でも売られる人気。

講師は季色代表の近藤義展さん。「寄せ植えは『植える』というより、絵を『描く』ようなイメージで自由に置いて表現するとよい」と助言。色々アレンジできるが「中央に背の高い苗を置き、その周囲に小ぶりな苗を配置していくと奥行きが出る」(近藤さん)。

今回は磁器ブランド「JICON・磁今」のぐいのみを器にしたが、好みの鉢や器なら愛着も増す。初心者は底穴のある素焼きや陶器などの通水性や通気性のよいものがおすすめ。底穴がない場合は、石を少し深めに入れて、水の逃げ道をつくっておこう。

「多肉植物のかわいらしさにひかれた」という30歳代の田口有香さん。「同じ器と苗でも、人それぞれ。個性的に仕上がるのが面白い」と話す。つい欲張って植えてしまったという作品は小さな森のようだ。「ベランダ栽培をしている。交流サイト(SNS)に投稿されるアレンジ写真を見たり、栽培のコツを情報交換したりするのが楽しい」と夫と参加した20歳代の菅野永梨さん。

多肉植物には生育期によって春秋型、夏型、冬型の3タイプがある。植え替えは3月と9月の彼岸を過ぎたころが最適だが、「今の時期なら紅葉するエケベリアやハオルチアなど春秋型から冬型の苗を選ぶといい」(鶴岡さん)。本来は屋外で育てるものなので、日中は十分日光を当て、通気をよくし、2週間に1度程度を目安に、土がしっかり乾いてから水を与える。

土なしで育つリースに

植物の扱いに慣れたら、リースに挑戦してみよう。針金に水ゴケと土を敷き丸めたものを土台にしてもいいが、緑・器・アートの店「ゆずりは」(茨城県古河市)の西美奈さんのお薦めはローリエの枝と麻ヒモなど自然の素材で作るもの。

土が無くても育つので、植物の下の葉に引っかけるようにヒモを結んで、1つずつ土台に結びつけていく。色や形の違うものを選び組み合わせるとかわいく仕上がる。クリスマスリースのほか、稲穂やしめ縄と合わせれば、正月飾りにも早変わりする。リースのまま土に置けば寄せ植えにもできる。

室内なら日当たりと風通しのよい場所に置き、1週間に1回を目安に水を張った皿に半日ほどつけておく。「根が出てもそのままで大丈夫。気になるときは、根より少し上の葉からカットして土に埋めておくと、切り口から新しい芽が出て増やせる」(西さん)

季色のスタイリストの近藤友美さんは「多肉植物は季節ごとに色などの変化が美しい」と話す。まずは気になる形や名前のものを選び、暮らしに彩りを添えてみてはいかが。

(ライター 田村 知子)

[日経プラスワン2015年11月14日付]