働き方・学び方

イチからわかる

会社の上場って? 株売買でお金集めやすく

2015/11/10 日本経済新聞 プラスワン

イチ子お姉さん 日本郵政という会社のグループが、4日に東京証券取引所に上場したのよ。上場すると、誰でもこの会社の株が買えるようになるのよ。
からすけ 上場って何のこと? どうして会社の株をいろんな人が買えるようにするの? 誰にとって、どんないいことがあるのかなあ。

■株売買でお金集めやすく

イチ子 上場の「場」は株式市場のこと。株式市場に上がって、誰でも売り買いできるようになるという意味よ。

からすけ 上場するといいことがあるの?

イチ子 会社がお金を集めやすくなるの。工場を建てたり、新たな分野に進出したりするときってお金がいるわ。新しく株を発行してそれを売り、買った人からお金を払い込んでもらえれば、会社をより成長させられるの。

からすけ お金を払っても、すぐつぶれたらイヤだな。

イチ子 当然よね。だから上場するためには、株をやりとりする証券取引所(キーワード)というところなどが、利益や株主の数、経営がしっかりしているかなどを厳しく事前に審査(しんさ)するの。上場できたということは、そうした審査に耐(た)えたということ。

からすけ じゃあ信用していいんだね。

イチ子 中には上場後すぐに業績が悪くなる会社もあるけど、基本的には厳しく審査されているわ。だからこそ知名度や信頼(しんらい)が高まるという効果もあるの。その結果、社員の募集(ぼしゅう)が有利になったり、製品やサービスがよく売れるようになったりもするわ。

からすけ 会社をつくった人もうれしいね。

イチ子 創業者というんだけれど、ほかにもいいことがあるわ。株主の数を増やして多くの人に売買してもらうために、自分がそれまで大量に持っていた株式の一部を、上場の時に売ることが多いの。上場できるようになったということは、株式の価値が大きく高まっているということだから、一部を売れば大きな財産を得ることができるの。

からすけ なんかずるい。

イチ子 そうとはいえないわ。創業者は会社が小さいうちから苦労をして一生懸命(いっしょうけんめい)会社を大きくしてきたでしょ? 様々なリスクに耐えてきたのだから上場で報われてもいいんじゃないかしら。これを創業者利得っていうの。

からすけ 会社をきちんと育てたんだから、上場で報われるというのはおかしなことじゃないってわけか。

<キーワード>
証券取引所 投資家の株式などの大量の注文を集中させることによって、売買相手をすぐ見つけられるようにした機関。
決算 一定の期間ごとに売上高や利益などを開示して投資家の判断材料にする仕組み。上場会社は通常3カ月ごとに開示する。

イチ子 一方で上場した後は、きちんと経営しているかを常に問われるし、決算(キーワード)などの詳しい情報も明らかにする必要があるの。誰でも株が買えるということは、望まない人が株主になることもあるの。買収される可能性も高まるわ。株主から「早く業績を上げろ」と言われて、長期的な経営がしにくくなることもあるのよ。

■郵政、競争でサービス磨く

からすけ メリットばかりじゃないんだね。ところで今度上場した日本郵政グループって、郵便の会社だよね。

イチ子 郵便事業の会社は日本郵便というんだけれど、それは今回の上場はなし。でも郵政グループには他にもいろいろな仕事をする会社があるの。今回の上場はグループ内で保険を担当する「かんぽ生命保険」と銀行を担当する「ゆうちょ銀行」、そしてこの3社の株を持つ親会社の「日本郵政」の3つ。親会社というのは、子会社の株式を過半数持つなどして経営をコントロールできる会社のことよ。

からすけ 親会社の日本郵政の株は誰が持ってるの?

イチ子 日本政府よ。もともと日本郵政グループは国が運営する企業だったわ。国は今回の上場で持っている株の一部を売るの。上場の時に株の一部を売ると、大きなお金が入るって説明したでしょ? 3社の売却(ばいきゃく)総額は今回の初回分だけで1兆4千億円にもなるの。昨年新たに上場した会社の合計金額を上回るほど巨額(きょがく)だわ。国は今回を含めて計3回にわたり株を売るの。そのうち4兆円を、東日本大震災の復興に使う予定だわ。

からすけ 政府が創業者利得を得て、復興資金にするというわけか。郵政グループでも上場はあらたな成長のきっかけにもなりそうなの?

イチ子 成長力を心配する意見もあるの。まだ政府が多くの株式を持っているから、各分野でライバルになる会社の経営を圧迫(あっぱく)しないように、事業を広げるのに制限がかかることもあるからよ。でも上場したからには、公平な競争の上でがんばってさらに成長してほしいと思うわ。そうなれば将来追加して株を売る時も高く売れて、復興のお金が増えるかもしれないわよ。

■非上場の郵便にも良い刺激?

東京都立桜修館中等教育学校の荒川美奈子先生の話 江戸時代の郵便制度といえる飛脚(ひきゃく)。幕府などの公用文書に加え、商人など民間の文書を運ぶ手段として広まりました。運賃は距離(きょり)と速さで決まり、文献によると、江戸―大坂間で最も安い並便は現在のお金で約300円。最も早い「三日半限」は2日半で着き、料金は40万円を超えました。
これを受けて始まった国の郵便事業はさらに便利さを追求しました。1円切手に肖像(しょうぞう)が残る当時の郵便事業のトップ、前島密は自ら東海道を往復して配達時間を算定。切手の使用や全国均一料金などを定め、郵便制度を整えました。
今回、日本郵政グループで郵便事業を担う日本郵便は上場しません。全国均一料金で配達する公共性を重視したからです。とはいえ昨年度は国内郵便事業は赤字で、経営環境は厳しいのも事実。グループの上場はどんな刺激剤(しげきざい)になるのでしょうか。
今週のニュースなテストの答え 問1=習近平、問2=フィンテック

[日経プラスワン2015年11月7日付]

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