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休職・休業制度 正しく知って 多様な働き方、企業対応進む 短時間や孫誕生休暇

2015/10/30 日本経済新聞 夕刊

育児や介護、家族や自分の病気などで会社を長期に休まなければならなくなったら――。「退職」を考える前に、勤務先の休職・休業制度を調べてみよう。法律上の長期休業のほか、最近は多様な働き方に合わせた独自の制度を設ける企業も増えている。一時的に休んでも、働き続ける道はある。
社員が集まる食堂の卓上で、休業制度などの情報を発信する(京都市のワコール本社)

「選択短時間勤務を知っていますか?」。ワコールの社員食堂の卓上には、ほぼ月替わりで勤務制度を紹介する「ダイバーシティ通信」が登場する。昨年本社ビルなどで始めた。10月は、同じ週にフルタイムで働く日と短時間の勤務を選べる制度だ。店頭勤務者には給与明細に同封する。女性社員が8割以上の同社。「育休復帰後も制度を使い、活躍し続けてほしい」(人事企画課の深沢信介課長)

子育てや介護をしながらなど、多様な働き方を支援する動きが活発だ。育児・介護休業法に基づく休みとは別に独自制度を持つ企業は多い。厚生労働省の2013年調査では、「病気」「リフレッシュ」など特別休暇制度を持つのは約6割、従業員千人以上では約7割だった。

ところが「制度は入社時に説明を受けたきり」という人は少なくない。帝人では、介護経験のある社員ですら、21%が「制度の存在を知らない」、53%が「内容は知らない」と答えた。

必要になっても誰に相談するか分からず戸惑い、悩んだ末に退職するケースがあとを絶たない。企業も制度を作るだけでなく情報発信に知恵を絞る。「休職制度は会社が自由に設計でき、就業規則に明記されている」(特定社会保険労務士の小磯優子さん)。職場の冊子や社内専用ネットで確認できるはずだ。

身近な相談相手である管理職の理解を促す取り組みも出てきた。第一生命保険は「パパトレーニング育児休業」と名付け、本人と上司あてに連続2営業日以上の休みを取るよう促すメールを送る。部下の男性が取れば上司も評価される仕組みだ。

企業人事制度に詳しい大和総研の広川明子主任コンサルタントは「優秀な人材確保のため、女性を想定した休暇制度の対象を広げる動きがある」と指摘。

50歳代以上の社員が多い第一生命は3日間の孫誕生休暇を設けた。昨年は870人が取った。「皆が取りたい制度で働きやすい職場に」(人事部ダイバーシティ&インクルージョン推進室)との狙い。介護が必要な親を抱える世代が6割という三菱ふそうトラック・バスは、4月、介護休業制度を法定期間を大幅に上回る2年に延ばした。

休職や休業を考えるときは直属の上司に話す必要があるが、制度に詳しいのは人事部門や両立支援相談窓口の担当者。自分に合う制度や手続きを聞こう。「まず有給休暇消化で対応」といった事例など、社内外で制度を使った人の体験談は参考になる。採用活動用ページの福利厚生の欄に、社員の声が載ることも多い。また、労使間交渉にたけた労働組合の詳しい人に聞くのは1つの手だ。

大和総研の広川さんは「制度を知って使う意識をもち、仕事を辞めない方法を考えて」と強調。一方で「権利の主張だけでなく、周囲に送り出してもらえるような日ごろの配慮が大切」と助言する。

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■育児・介護以外も充実 海外転勤への同行 可能に

仕事と生活の両立に悩むのは育児や介護に限らない。配偶者の海外転勤が理由の離職を防ごうと、帝人は昨年10月、同行する社員の休職制度を設けた。「貴重な人材をつなぎとめたかった」(日高乃里子ダイバーシティ推進室長)。取得は一度。3年までで無給だが、10人が利用した。

帝人ファーマで臨床試験の仕事をしていた福井優子さんは同制度で夫のバンコク赴任に同行。「キャリアの空白に不安はあったが、確実に戻れるのは安心だった」と話す。

常陽銀行は6月、余命宣告を受けた家族と一緒に過ごすための6カ月以内の休職制度を新設した。第一生命は目的不問で平日を半日単位から休める「ワークライフバランス休暇」を用意。不妊治療や病気、自己啓発などに使える。

勤務先に先進的な制度がなくても方法はある。多くの企業は就業規則で「『その他会社が認める場合』を休職事由としている」(小磯さん)。対象外だと諦めず、まず相談してみよう。

(南優子)

[日本経済新聞夕刊2015年10月29日付]

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