昼夜問わず室内明るく 天井照明の工夫や採光装置で

「せっかくの新築マンションなのに日当たりが悪い」「隣にマンションが建って日が差さなくなってしまった」など、住まいの日照に悩む人は多い。とりわけ視力が悪くなるシニアにとって、室内の明るさは重要な問題だ。日中、夜間を問わず、部屋をより明るくしたいというニーズは高まっている。
「ひまわり」で日中も明るくなった居間でくつろぐ薩摩さん夫妻(東京都中野区)

「晴れていれば室内には自然光がさんさんと降り注ぐ」と言うのは東京都中野区に住む薩摩泰治さん。18年前、自宅前に3階建ての住宅が建ち、日中でも室内に日が入らなくなってしまった。1級建築士で工務店も経営する薩摩さんは、どうしたら日照を取り戻せるか調べつくした。行き着いたのがラフォーレエンジニアリングの太陽光採光システム「ひまわり」だ。

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12眼のレンズと太陽センサーからなる集光器が太陽を自動追尾し、集めた太陽光を2本の光ファイバーケーブルで室内の専用ダウンライトやスポットライトに送り込む。紫外線は集光段階でカットするので、人体への影響や家具や床などが色あせする心配もない。直径52センチメートル、高さ81センチメートル、重さ14キログラムの集光器は屋根やベランダの手すりに簡単に取り付けられ、屋根に穴を開けずに済む。

「照明直下は太陽光のぬくもりが心地よい。布団も戸外に干したときの香りになる。朝焼けから夕焼けまで光の移り変わりを室内で楽しめるのも幸せ」。良さを知り尽くす薩摩さんは、今では「ひまわり」特約店として設置工事も手掛けている。

屋根やベランダに取り付け可能

「集光器1器で8畳に対応。一戸建てなら取り付け費用など込みで90万~100万円」(薩摩さん)。安くはないが、日常生活で日照問題は切実だ。湿気が籠もる浴室や地下室、さらには日陰で植物の生育が悪い庭にも太陽光を送り込めるため、2器、3器と増やす家庭も多い。

都心では新築マンションが急増しているだけに「近隣への日照保証対策で、デベロッパーからの引き合いも増えた」とラフォーレエンジニアリング営業部の田中雅幸担当部長は言う。

室内の明るさは日本工業規格(JIS)で推奨照度を規定している。例えば居間はだんらん時150~300ルクス、読書で300~750ルクス、手芸・裁縫なら750~2000ルクスが推奨される。スマートフォンのアプリでも照度を測れる。iPhoneなら「REPLE」、Androidなら「適正照度チェッカー」などだ。

明るさは特にシニアにとって重要だ。年を取るほど瞳孔の径が縮小し、網膜に届く光が少なくなるからだ。このためメーカーも部屋全体を明るくする発光ダイオード(LED)シーリングライトの開発に力を入れる。

昼間でも日が差さない居間
「ひまわり」導入後(施工例)

パナソニックは天井や壁面にも光が拡散する上下配光タイプを昨年発売。今年9月には日立アプライアンス(東京・港)も同種の効果を狙った機能を採用した。320個のLEDと3種類のレンズで下を、120個のLEDで上を照らす「ひろびろ光」で、天井や壁が明るいと部屋が広く感じられるという。

LEDシーリングライトの光量と適用畳数は、日本照明工業会が14畳までの表示基準を定めている。例えば4500~5500ルーメン未満なら12畳、5100~6100ルーメン未満なら14畳用といった具合だ。

これに対し日立は新機能を採用する最上位機種で1万ルーメンという明るさの製品を投入。工業会の表示基準外の明るさで「目安は20畳。天井が高めのリビングや高齢者のいる家庭にもおすすめ」(商品計画本部)。実勢価格も破格の約9万円だ。

日立「ひろびろ光」機能オフの状態
天井近辺の壁の明るさが約1.4倍に

シニア向けに小さな文字がくっきり読みやすくなる機能も上位10機種に搭載した。光量を上げるとともに、青緑色の光を補充するLEDを加えて太陽光に近づけたのがミソ。100に近いほど自然光に近い見え方を示す「平均演色評価数」は90。「人間の目が加齢とともに青色が見づらくなるのに対応した」(同)。パナソニックも文字が読みやすい機能を用意している。

人は年を重ねるごとに光のありがたさを実感するようになる。室内がちょっと暗いなと感じるようになったら、自宅の照明を見直してみたらどうだろう。

■照明の単位に注目
ルーメン(lm)は光源の光量を示す。ルクスは1平方メートルに入射する光量。照明で照らされた物の色の見え方を表す平均演色評価数(Ra)や、色温度のケルビン(K、数値が高いほど青みがかる)などの単位もある。

(生活情報部 福沢淳子)

[日本経済新聞夕刊2015年10月28日付]

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