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肥満で増すがんの危険 痩せすぎもリスク 糖尿病・心筋梗塞だけじゃない

2015/10/23 日本経済新聞 夕刊

肥満が健康を害することは今や常識だろう。太りすぎがもとで、世界で年間400万人超が亡くなったとの報告もある。糖尿病などの原因になるとは知られているが、最近は一部のがんの罹患(りかん)リスクを高めると指摘される。「万病のもと」といえるが、一方で痩せすぎの方が危険との指摘がある。バランス良い体重コントロールを心がけたい。
日本ではBMI25以上を「肥満」と分類している

肥満は3番目の死亡要因――。米ワシントン大保健指標評価研究所の研究チームは9月、こんな調査結果を公表した。2013年に世界188カ国で死亡した人について分析、最も死亡リスクを高めていたのは高血圧で、2番目が喫煙だった。続いて「高BMI(体格指数)」。いわば肥満だ。

BMIは体重をメートル換算した身長の2乗で割った数値。世界保健機関(WHO)は25以上を「過体重」、30以上を「肥満」と分類する。研究チームは25以上の人口は世界で21億人に及び、13年に肥満がもとで440万人ほどが死亡したと推計する。90年に比べると6割増の水準という。

心筋梗塞や糖尿病など様々な病気のリスクを高める肥満。脂肪細胞は善玉ホルモン「アディポネクチン」を分泌し、傷ついた血管壁を修復するなど重要な役割もある。ただ内臓脂肪が増えるとこのホルモンの分泌は減り、加えて血圧上昇など悪い働きをするホルモンも分泌されてしまう。

日本の分類は世界基準より厳しい。日本肥満学会が肥満と定めるのはBMI25以上。日本人はそれ以上で健康被害が出やすいとされるためだ。肥満症専門医の埼玉医科大病院(埼玉県毛呂山町)の栗原進准教授は「白人に比べて(血糖値を抑える)インスリンの分泌能力が低く、糖尿病を発症しやすい」と話す。

では上回ったらすぐ減量を始めなければならないのだろうか。答えは否だ。さらに糖尿病移行の恐れがある耐糖能障害のほか、脂質異常症や高血圧など11ある肥満関連疾患のうち1つ以上を発症し、「肥満症」と診断された場合に食事・運動療法が必要になる。高血圧などでなくとも、コンピューター断層撮影装置(CT)検査で腹囲の断面図の内臓脂肪が100平方センチ以上であれば肥満症となる。

近年、注目を集めているのが肥満によるがんのリスク増大だ。国立がん研究センターのがん予防・検診研究センター予防研究部の笹月静部長は「BMIが上昇すると乳がんの罹患率が上がる」と指摘する。

研究によると、閉経した女性の乳がん罹患率はBMI30以上の場合、23以上25未満の1.34倍。乳がんの発症や進行には女性ホルモン「エストロゲン」の過剰分泌が深く関わるが、閉経後の女性は脂肪細胞がこの分泌を促すため、肥満だとリスクが高まるという。

さらに原因は未解明だが、閉経前に目を向けると同じ比較で2.25倍に跳ね上がる。男性では大腸がんの罹患率が上がるという研究もある。

ではとにかく痩せればいいのだろうか。医師で老年医学が専門の桜美林大学の柴田博名誉教授は「むしろ痩せすぎの方が危険だ」と訴える。感染症への抵抗力が弱まり、特に肺炎で死亡する危険性が高まる高齢者は注意が必要だという。血管壁がもろくなり、脳出血も起こりやすくなる。

BMIが19未満では男性、女性ともに死亡リスクが肥満より高いという報告もある。柴田氏は「年齢を重ね、体重が一定量増えることは問題ない。大病を患えば体重は減ってしまうもので、脂肪は危機時への備えという考えを持つことも必要だ」と話す。

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■BMI25以上の割合 男性28%、女性は20%

厚生労働省の2013年の国民健康・栄養調査によると、肥満とされるBMI25以上の割合は男性が28.6%、女性は20.3%。男性は09年のピーク(30.5%)を境に減少傾向にある。女性は一進一退の状況だが、「普通」が減り、「痩せ」の増加が目立つ。

年代別でみれば男性は40代に肥満が最も多く、その割合は34.9%。女性は70歳以上が27.1%と最も多い。

経済協力開発機構(OECD)の統計では、BMI30以上は12~13年時点で米国は35.3%を占め、カナダ(25.8%)や英国(24.9%)も多い。対する日本は3.7%で、日本でいうところの「太りすぎ」は外国に比べかなり少ない。

(辻征弥)

[日本経済新聞夕刊2015年10月22日付]

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