働き方・学び方

イチからわかる

眠る資源・航路巡り揺れる南シナ海 どんな所?

2015/10/13 日本経済新聞 プラスワン

イチ子お姉さん 中国が南シナ海の一部を埋(う)め立てている問題を、米国のオバマ大統領と中国の習近平国家主席が話し合ったわ。でも何も進まなかったみたい。
からすけ 南シナ海ってどこにあるのかな。東シナ海とは違うところ? 問題っていうけれど、一体何が起きているの? 日本にも関係あるのかなあ。

■眠る資源・航路 争いの種

イチ子 南シナ海は中国や台湾(たいわん)、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、ベトナムなどの国や地域に囲まれた海のことね。東シナ海の南西にあるわ。「シナ」は中国という意味で、南シナ海は英語では「サウスチャイナシー」っていうの。

からすけ 南中国海か。英語でもそのままだね。どんな海なの?

イチ子 赤道に近くて台風がよく発生しているわ。小さな島がたくさんあるの。中国の南、ベトナムの東にあるのが西沙(せいさ)諸島、英語ではパラセル諸島。フィリピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナムに囲まれた場所にあるのが南沙(なんさ)諸島、英語名がスプラトリー諸島で、どちらもサンゴ礁(しょう)や岩、砂地でできた小島がたくさんあるわ。

からすけ 人はいるの?

イチ子 少ないけど、住民がいる島もあるのよ。軍隊の人がいたり、リゾートホテルがあったり。海がきれいだからスキューバダイビングにもいいみたいね。

からすけ 飲み水や食料はどうしているの?

イチ子 島を支配している国から運んでいるようよ。

■中国など、小島の「持ち主」主張

からすけ なんか大変そうだなあ。でもそんな場所で何をもめているの?

イチ子 周辺の国や地域がそれぞれの島を「うちの領土だ」って主張しているの。例えば西沙諸島は中国と台湾、ベトナムが自分の領土だと主張しているわ。南沙諸島は6カ国・地域が争っているの。特に中国とベトナムは争いが激しくて、中越(ちゅうえつ)戦争(1979年)の前後に、西沙と南沙の両方で海上での軍事衝突(しょうとつ)があったのよ。

からすけ 人があまりいない小さな島が何で欲しいの?

イチ子 大きく2つの理由があると言われているわ。まずは資源ね。何か分かる?

からすけ マグロとか?

イチ子 食べ物しか頭にないのね、からすけは。違うわよ。原油と天然ガス。米エネルギー情報局(EIA)の推定では、南シナ海には原油はメキシコと同じくらい、天然ガスはロシアを除く欧州より多くあるの。

からすけ 島を支配できたら、その周りの資源も自分のものってこと?

イチ子 そう。もう一つが、軍事的な側面ね。軍隊を置いて周りににらみを利かせれば、他の国に対して優位に立てるってわけ。

からすけ 日本は関係ないの?

イチ子 それが大あり。実はこの辺りの海は、原油を積んだタンカーが通るルートになっているの。もし日本と敵対する国が出てきて、タンカーを通れないようにしたら大変なことになるわね。

からすけ 石油危機だ。

イチ子 最近では中国が南沙諸島で大規模な埋め立てを行っているの。人工的に島を造って軍事施設(しせつ)を置こうとしているのね。米国は待ったを掛けているのだけど、中国は耳を貸さない。だから首脳会談で議題になったの。

からすけ 島を造るって大胆だね。

イチ子 中国からしてみれば、昔から自分たちの海だってことなんだけど、歴史は複雑ね。昔ベトナムを植民地にしていたフランスが一部の島を支配していたこともあるし、第2次世界大戦の時には日本も進出していたわ。今は中国が大半の支配権を主張しているけど、異論もあるの。

からすけ 米国はなんと言っているの?

<キーワード>
公海 国家が支配することができない海域。すべての国が、船で通る、漁をする、上空を飛ぶ、などが自由にできる。
領海 国際法では、海岸線から12カイリ(約22キロメートル)までは沿岸国の主権が及ぶと定められている。上空や地下も含まれる。

イチ子 南シナ海は公海(キーワード)であって領海(キーワード)ではない、つまりどこの国のものでもない、という立場ね。中国とはすれ違ったまま。そもそも南シナ海で中国が強く出るようになったのは、米国の影響(えいきょう)力が弱くなったからという指摘(してき)もあるわ。以前はフィリピンに米軍基地があって、にらみを利かせていたの。だけど1992年までに撤退(てったい)したのよ。その後中国が力をつけてきて、強く出るようになってきたの。

からすけ 今後は?

イチ子 最近、中国が軍用機が飛べそうな滑走路(かっそうろ)を完成させたといわれていて、緊張が一段と高まっているの。日本にも深く関わる問題だから、私たちも関心を持って見ていきたいわね。

■過去の語り直し 自制必要

灘中学校・高等学校の藪本勝治先生の話 「義経ジンギスカン説」をご存じでしょうか。日本が中国東北部を領有化していた1920~30年代に大流行した説で、満州・モンゴルはもともと源義経が大陸に渡りジンギスカン(チンギス・ハン)と名乗って治めた土地だと主張するものです。今ふり返れば荒唐無稽(こうとうむけい)ですが、当時の日本国民はこれを熱狂(ねっきょう)的に支持しました。
現在、中国政府が南シナ海の大部分を古来の領土と主張して問題になっています。しかし異論もあり、国際的に正しいと証明されているものではありません。中国政府は過去を語り直すことで歴史の再構築を図っているわけですが、それは人間の普遍的な営為(えいい)であるともいえます。
現在の状況を肯定(こうてい)したい。希望通りの未来を展望したい。そんなとき、人は過去を恣意(しい)的に語り直すものです。皆がそれを自覚し、互いに自制することが重要なのだと思います。
今週のニュースなテストの答え 問1=12、問2=生理学・医学

[日経プラスワン2015年10月10日付]

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