心躍る 初めてのバレエ鑑賞 ポイントは

セリフや歌ではなく、踊りで物語を表現するバレエ。ダンサーたちの優美な跳躍、ドラマチックな音楽、華やかな衣装や舞台美術――。バレエを見るのは、非日常的なスペクタクル空間に身を置くことだ。芸術の秋、劇場でバレエを堪能するのはどうだろう。初心者向けに鑑賞のポイントをまとめた。

名作 生演奏で楽しむ

優雅な踊りが目を引く井上バレエ団の舞台公演「シンデレラ」より(東京都文京区)=写真 五十嵐 鉱太郎

「爪先立ちでクルクル回転したり、手脚を伸びやかに開いてジャンプしたり。すごかった」と話すのは、会社員の原口理恵子さん(36)。最近、友人に誘われ予備知識もなくしぶしぶ出かけたが、「初めて見てとりこになった」という。

会場が暗くなり、音楽が流れはじめて幕が開く。チュールを重ねたバレエ特有の「チュチュ」と呼ばれる衣装やトーシューズを身に付け、軽やかに舞い踊るダンサーたち。指の先まで全身を使って感情を表す姿に「退屈かも、との心配が吹き飛んだ」という。

「芸術鑑賞は最初の出合いが肝心。初めて見るなら選び抜かれたプロの公演を」と、バレエ評論家の守山実花さんは力説する。秋から冬にかけて国内外のバレエ団の公演が目白押しだ。

初心者も楽しめる演目は何か。19世紀末のロシアで生まれた「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割人形」は王道作品だ。音楽はどれもチャイコフスキー作曲。井上バレエ団(東京・世田谷)理事の諸角佳津美さんは「音楽はバレエの大きな魅力。録音伴奏よりオーケストラが生演奏する公演を選んで」と話す。

「シンデレラ」「ロミオとジュリエット」など、物語が有名な作品も初鑑賞にお薦めだ。守山さん一押しはスペインの恋人たちを描いた「ドン・キホーテ」。「バレエって高尚で退屈なのではと思っている人に見てほしい明るく楽しい喜劇」。華やかな踊りが全編にちりばめられている。

バレエはセリフがないだけに、大筋がつかめれば十分楽しめる。頭上で両手を糸を巻くように回転させると「踊りましょう」の意味、胸に両手を当てれば「愛しています」の意味、といった特有のマイムもある。知れば理解が深まる。

物語を描く全幕ものに対し、名場面を集めて複数のスターダンサーがソロや男女2人で踊るパ・ド・ドゥを次々に披露する特別興行をガラと呼ぶ。「バレエの世界に浸りたいなら、全幕ものがベター」(諸角さん)。踊り、音楽、衣装、舞台装置、照明をトータルで楽しめる。一方、ダンサーの高度な技術を満喫したい人や、まずバレエがどんなものか知りたいなら、ガラ公演もいいだろう。

舞台見渡せる席 お薦め

チケットを買うには、まず、インターネットや情報誌などで、バレエ団や演目、キャスト、振付、会場、日時、料金をチェック。同じ演目でも回ごとにキャストが変わるので、お目当てのダンサーがいるなら、出演日時の確認を忘れずに。

ジャパン・アーツ(東京・渋谷)によると、海外の名門バレエ団のものは、公演の半年以上前から発売される。11月に来日するロシアのマリインスキー・バレエはS席が1枚2万2千円。高額だが「世界トップレベルの踊りを良い席でみたいという人が多く、一番早く売り切れる」(同社の寺沢光子さん)。

国内のバレエ団なら高い席で8千~1万円前後。2階以上の階の端など3千円程度の席もある。

座席はどの辺がベストなのか。「好みや劇場にもよるが、1階10~20列目、2階1~5列目の中央ブロックがお薦め」(守山さん)。舞台に近すぎるより、群舞や舞台装置を見渡せる中程の方が好まれる。「ダンサーの表情を見たければ、オぺラグラスで。ただし、重要なシーンを見逃さないように」(守山さん)

気になる観劇の服装だが、ドレスコードは特にないのでスマートカジュアルでもかまわない。ただ、せっかく非日常の世界に足を踏み入れるなら、少しおしゃれをして出かけよう。幕間の休憩時間はロビーでワインなど片手にちょっとした社交も楽しめる。

(ライター 松田 亜希子)

[日経プラスワン2015年10月10日付]