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飲みニケーション活用法 雑談力上げる機会に 部下・非公式の話聞ける 上司・職場の環境良好に

2015/10/8 日本経済新聞 夕刊

「上司が自慢話や説教をする場になる職場の飲み会はおっくうなだけ」と思う若手社員は少なくない。だが、就業中のコミュニケーションがメールで終始するようになったいま、「飲みニケーション」は職場の意思疎通を図るのに格好なツールだともいえる。それを成功させるか「ただの飲み会」で終わらせるのかは上司の力量次第だが、部下の心構えも重要だ。仕事の上でも、社会人として成長する上でも効用がある飲みニケーションを上手に利用してみてはどうだろう。

「飲みニケーションは部下にとって様々なメリットがある」。マネジメントコンサルタントの浜田秀彦さんは話す。上司の考えや非公式な話などの情報が得られ、自分の思いや考えを上司に伝えられる。副次的に上司との関係が良くなり、仕事がしやすくなる。「飲みニケーションは仕事環境を良くするための戦略的な時間投資と考えて」と若手社員にアドバイスする。

飲みニケーションは「雑談トレーニング」としての効用もある。年上と話すのを気詰まりに感じる若手も多いが、雑談は取引先との商談などでも欠かせない。上司との飲みニケーションで、その雑談力を養えばいいという。

■話は5W1H意識

人材育成コンサルティング会社フィールワークス(東京・中央)の前川孝雄社長は「大きな仕事をするなら20代のうちに社内ネットワークの構築を」と力説する。大仕事には直属の上司だけでなく他部門も含めた社内リソースのフル活用が必要になる。そのとき役立つのが飲みニケーションを通じたネットワークというわけだ。

仕事上の効用ばかりではない。「多様な世代の人たちとつながることで、いろいろな学びや気づきがある」と前川さん。社会人として成長していくトレーニングにもなるという。

同じ時間を費やすなら、飲みニケーションの効用は最大にしたい。そのためには聞き上手、質問上手になることだ。相手の目を見て相づちを打つ、相手がいろいろと教えたくなるような質問をする。浜田さんが勧めるのは「5W1H」型の質問だ。

例えば、ゴルフの話になったとき「調子いいですか」ではイエスかノーで終わってしまうが、「なんで(why)始めたんですか」などwhen(いつ)、where(どこで)、who(誰が)、what(何を)、how(どうしたのか)を使って質問することを勧める。

「20回のしらふな面談より1回の飲みニケーションの方が有効」と新規開拓の朝倉千恵子社長

飲み会の場でも礼節には気をつけよう。上司に「きょうは無礼講だ」などと言われてもタメ口などご法度だ。社員研修を手掛ける新規開拓(東京・千代田)の朝倉千恵子社長は「無礼講は肩の力を抜いてという意味にとらえて」と注意を促す。

ビジネスマナーに詳しい朝倉さんによれば、「部下はドアに近い席に座る、あるいは上司の左側に座る」「飲み物はボトルのラベルを上にしてつぐ、手のひら返しでボトルを持たない、ビールをつぐときにグラスの縁に瓶を付けない」「上司と乾杯するときは脇を締めて」「ビールをつぎ足すならグラスの半分以下になってから」「料理の取り分けをする」「はしを付けるのは上司が先」――など気をつけたいポイントがある。

「差し出がましくないように目配り、気配り、気働きを心がければ、自然と身についてくる」。気働きできる若手に目を掛けない上司はいないだろう。

有意義な飲みニケーションになりやすいのは、会の目的が明確で、90分なり2時間なり時間が区切られているときだ。これは上司の力量が問われるところ。飲み会の目的・意図を部下に伝え、時間配分を考えながら進行させる。聞き上手、質問上手を心がけるのは上司も同じ。「バブルの頃は」など異世代で共有できない話は嫌われる。

ファクトリージャパングループの前社長で、整体サロン「カラダファクトリー」を国内・海外210店舗以上になるまで育て上げた子安裕樹さんは、これまで目的を明確にした飲みニケーションで社員のモチベーションを上げてきた。

■参加者で役割分担

例えば、社員に海外1号店への赴任を決意してもらうことが目的だった飲みニケーションのときは、その社員の先輩、上司を含め数人に参加してもらい、当該社員以外は目的を共有。自分の海外体験を語る役、夢を語る役、言葉の壁などデメリットを語る役など参加者に役割を与え、それに応じた席順にした。子安さんが飲み会進行のシナリオを書いたという。「ミーティングルームの面談でうまくいかないことはあるが、飲みニケーションで目的を達成できなかったことはない」と言い切る。

上司も部下も気配りがあれば飲みニケーションは成功する。「楽な人とだけ飲んでいても勉強にならない。適度なプレッシャーが人を成長させる」(朝倉さん)ことを肝に銘じ、時には上司との飲みニケーションを楽しんでみよう。

[日本経済新聞夕刊2015年10月5日付]

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