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冬の風呂、まず浴室暖めて 温度変化抑えて事故防ぐ

2015/10/3 日本経済新聞 夕刊

 温かいお風呂がうれしい季節になってきた。ただ、冷えた浴室に入ったり、温かい湯船につかったりするとき、急激な血圧の変化が心筋梗塞や失神を引き起こすことがある。高齢者はもちろん、生活習慣病の人も注意が必要で、こうしたヒートショックを避ける住まいの対策を探った。

 東京都健康長寿医療センター研究所(東京・板橋)の調査によると、寒暖差が原因とみられる入浴中の死亡事故は1月に最も多く、8月の10倍を超える。10月ごろから目立って増える。

 東京ガス都市生活研究所(東京・港)が今年1~2月に20~79歳の男女1236人に実施したアンケート調査の結果では、ヒートショックという言葉の意味を知っている人の割合は60代以上でも半数以下。「意識を失ったりする危険を感じるか」という質問には、最も高かった70代でも28.2%だった。危険への備えが心配だ。

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浴室暖房機には壁掛け型や天井設置型など様々なタイプがある(東京ガス新宿ショールーム)

 東京都健康長寿医療センター研究所の高橋龍太郎副所長は、ヒートショックを防ぐポイントとして「温度のバリアフリー化」を挙げる。「服を脱いだ時にブルッと寒さを感じるのは危険。浴室や脱衣所を暖かく保つ」。お風呂が冷えやすい一戸建て住宅に、1人で住む高齢者は特に用心するよう力説する。

 浴室を暖める設備として代表的なのがガス暖房だ。東京ガス新宿ショールームでは、浴室暖房機が展示してあり、ミストサウナなども体験できる。ガス暖房機の強みは立ち上がりの早さとランニングコストの安さ。東京ガスによると、外気温5度の環境で1坪(3.3平方メートル)のユニットバスなら、約6分で浴室内の温度は25度まで上がる。そのときの料金は約9円という。

 ガス暖房機のタイプは壁掛け型と天井設置型に大きく分けられる。壁掛け型は既存の浴室にそのまま取り付けることができるのが利点。天井設置型は新築やリフォーム向き。東京ガスの「ホットドライ」の場合、最も安い機種で7万200円(希望小売価格、税込み)。本体とは別に約7万円の熱源機などが必要で、工事費も含めると最も安くて20万円くらいからが目安。「価格は上がるが、ミスト機能がついているタイプを選ぶ人が増えている」(東京ガス)。

洗い場の床にも保温材を入れた(東京都新宿区のLIXILショールーム東京)

 LIXILの戸建て住宅のリフォーム用システムバスルーム「リモア暖房プラン」は暖房で暖めた浴室の温度を下がりにくくした。天井や壁、床の全面に保温素材を使用。浴槽もお湯が冷めにくい。費用は施工業者や浴室の状況によっても変わるが、1坪タイプで約100万円(施工費込み)ぐらいかかる。戸建てだけでなくマンション向けプランもある。

 費用をあまりかけられない場合はポイントを絞ったリフォームもできる。LIXILハウジング企画室の吉田格室長は「窓の対策だけでも保温効果は高い」という。既存の窓に設置する同社の内窓「インプラス」の場合、縦1メートル横1.5メートル程度の窓であれば、工事費込みで5万~6万円が多い。リフォームを検討する場合、まずはどのくらいの費用でどんな対策ができるのか施工会社に相談しよう。

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タワー型の暖房器具なら狭い脱衣所や浴室でもあまりスペースを取らない

 一般の暖房器具を活用するのも手軽なヒートショック対策になる。電気式の温風暖房機を使って脱衣所や浴室を入る前に暖めておく。1台数千円から購入することができるし、家庭にあるものを使うこともできる。ガスファンヒーターはよりパワフルだが、大きすぎるものが多い。都内の大手家電量販店の暖房器具売り場の担当者は「ガス栓が浴室の周辺にないケースもある」と話す。

 脱衣所など狭い場所に置くときはタワー型を使う手もある。直接触れてやけどをしたり、のびたコンセントの線にひっかからないように気をつける。

 暖房による対策だけでなく、お風呂の入り方や毎日の習慣にも気を配りたい。血圧の下がりやすい食事直後や飲酒時の入浴は控えること。気温の下がる深夜の入浴はなるべく避ける。寒いと、湯の温度を上げてしまいがちだが、40~41度以下に設定するのも大事だ。

■シャワーでお湯張りを
 きょうからできるヒートショック対策としておすすめなのがシャワーを高い場所に設置して浴槽にお湯を張ることだ。浴室全体を暖める効果がある。お湯を張ったあと、浴槽に蓋をしないでおくと、浴室の温度は下がりにくくなる。

(生活情報部 高田哲生)

[日本経済新聞夕刊2015年9月30日付]

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