くらし&ハウス

暮らしの知恵

スムーズな転職に向けて 円満退社でスッキリ 仕事や会社の不満 ご法度

2015/10/1 日本経済新聞 夕刊

キャリアアップを目指して転職するビジネスパーソンが増えている。スムーズな転職のために大切なのが、円満退社。トラブルを抱えたり、後ろ指を指されたりして辞めるのは、その後のキャリアにもマイナスだ。「立つ鳥跡を濁さず」に転職するためのポイントは。

「円満退社は得こそすれ、損は一つもない」と語るのは、数多くの転職事例を見てきたDODAキャリアコンサルティング統括部長の大浦征也さんだ。円満退社すれば「その後のキャリアや仕事にプラスになる」「有給休暇など得るものを得て辞めることができる」「同僚が人脈として生きる」などのメリットがあるといい、「だからこそ非常に重要」と強調する。

円満退社するために注意すべき点は何か。最も重要なのは、仕事や会社に対する不平不満を辞める理由として挙げたり、吹聴したりしないことだ。そうした行為は、上司や人事の心証を悪くし、退職交渉や退職の手続きがスムーズに行かなくなる恐れがあるからだ。

■今後にも影響

また、意外な形でキャリアにも影響しかねない。ある大手外資系IT企業から別のIT企業に転職することになったAさんは、送別会の席などで会社の悪口を取引先や知人の同業者に言いふらし、それが取引先を通じて辞める会社の社長の耳にまで入ってしまった。

Aさんの元同僚は「社内でもかなり話題になった。社長もカンカンだったようだし、この業界は結構狭いので、Aさんは今後、仕事がやりにくくなるだろう」と話す。

最近は、いったん辞めた社員を再雇用する「出戻り」を認める会社も増えている。「けんか別れのような形で辞めたら、出戻りもできない」(大浦さん)

円満退社がその後のキャリアや仕事にもたらすメリットとして、こんな例がある。出版社を数年前に辞め、現在はフリーで働くBさんは、今でも元の会社から仕事の依頼を多く受ける。「辞めた動機は仕事への不満だったが、仮に会社に文句を言ってけんか別れしていたら、仕事の依頼はなかったと思う」という。

「実際、仕事を依頼してきた元同僚は、辞める時に会社とトラブルがなかったかどうか確認してきた」とBさんは円満退社のメリットを語る。大浦さんも「職場の人と良好な関係を維持して辞めれば、それが後々、貴重な人脈になる」と指摘する。

現実には、仕事への不満から転職する人は多い。だが、円満退社のためには、愚痴る相手は家族や気の置けない友人にとどめておくのが無難だ。

■転職先明かさず

退社の理由に転職を挙げるのは問題ないが、円満退社のためには、転職先の会社名を明らかにするのは控えた方がよい。「転職先の会社の悪口を聞かされ、退職を慰留させられる場合があるほか、転職先に連絡されてしまい、会社同士で『社員を引き抜いた、引き抜いていない』といったトラブルに発展する可能性がある」(大浦さん)からだ。

会社によっては、同業他社への転職を内規で禁じているところもある。法的拘束力は必ずしも明確でないが、少なくとも円満退社にはならないので、転職先に関しては他言しないに越したことはない。

退社の手続きには関連本が参考になる

有給休暇の消化にこだわったり、働いた期間のボーナスの先払いを要求したりするなど、強硬に権利を主張するのも避けた方が良い。権利の正当な主張は、法律上は正しいが、上司や人事担当者も人間。相手の気を悪くし、円満退社とはならない。

逆に「相手の立場も考えて情に訴えれば、スムーズに有給休暇が取れたり、ボーナスで特別な配慮をしてもらったりすることもあり得る」(大浦さん)。

退社するまでの「仕事ぶり」も重要だ。転職も含めたキャリア相談に乗っているエグゼクティブ・コーチの和気香子さんは、「仕事を途中で放り出すような辞め方は、会社に迷惑をかけ、円満退社にならないので、すべきではない」とアドバイスする。

「成功しているビジネスパーソンは、担当するプロジェクトにメドが立ったタイミングで転職をする人が多い。キャリアで成功する人は、辞め方もちゃんと心得ている」(和気さん)

このほか、円満退社のためには、「退職想定日の1か月ぐらい前までに、上司に退職の意思を伝える」「仕事の引き継ぎをきちんとやる」といった、社会人としての常識、マナーは、前提としてしっかり守るべきだろう。

(ライター 猪瀬 聖)

[日本経済新聞夕刊2015年9月28日付]

くらし&ハウス 新着記事

ALL CHANNEL