ギリシャ危機の原因は 手厚い社会保障で借金膨らむ

イチ子お姉さん ギリシャで総選挙が20日にあるわ。外国からたくさん借金しているのだけれど、ちゃんとお金を返す覚悟(かくご)があるかを国民に問うのよ。
からすけ ギリシャって神話の神様がたくさんいる、太陽がいっぱいの明るい国だよね? どうして借金漬(づ)けになっちゃったの?

赤字ごまかしユーロを導入

イチ子 ギリシャといえば……。

からすけ パパとママの新婚(しんこん)旅行先! エーゲ海クルーズに行ったんだって。

イチ子 すてきよね。でもギリシャは今、お金がなくて困っているの。外国から多額の借金をしていて、つい最近、お金が返せないと大騒(おおさわ)ぎになったのよ。

からすけ え、何で?

イチ子 かいつまんでいうわね。2010年、お金がないと訴(うった)えるギリシャに対し、ヨーロッパの国々でつくる欧州(おうしゅう)連合(EU)や世界の国々がお金を出す国際通貨基金(IMF)がお金を貸し始めたの。12年にも追加で貸したのだけれど、一部を返す期限が6月末にやってきたの。

からすけ それで?

イチ子 ギリシャは「返すお金がない」と言って大もめになったの。結局は8月、今後3年間で約11兆円を超(こ)す3回目の支援をすることで合意したわ。

からすけ そもそも、何でお金に困っちゃったの?

イチ子 ユーロ(キーワード)って何か知ってる?

からすけ うん。欧州で使っているお金だよね。

イチ子 ええ。ユーロを使う国をユーロ圏(けん)といって、ギリシャは01年、これに加盟してユーロを自分の国の通貨にしたの。それまで使っていた通貨に比べ、ユーロの信用は高くてお金を借りやすくなったわ。04年にアテネ五輪があったので、政府は地下鉄や空港などを造るのに多くのお金を借りたわ。でも五輪の費用が想定の2倍になるなど、財政が苦しくなったの。

<キーワード>
ユーロ 欧州連合(EU)に加盟する28カ国中19カ国が採用する共通の通貨。2002年から現金として流通。
欧州中央銀行(ECB) ユーロ圏の金融政策を担う中央銀行。通貨ユーロを発行。本部はドイツのフランクフルトにある。

からすけ 危機の原因はそれだけ?

イチ子 観光と海運以外に主要産業がなく、稼(かせ)ぐ力が弱かったわ。おまけに働く人の約4分の1が公務員で、彼らの給料を出すため政府の支出がかさむの。50代で退職する人も多く、人口の約4分の1が年金をもらっているわ。

からすけ 普通(ふつう)、そんな国に簡単にお金を貸す?

イチ子 いい質問ね。実はギリシャは2つ、ウソをついたの。1つは通貨ユーロを導入するときよ。財政赤字や借金の残高が一定の基準よりも低くないと導入できないの。ギリシャは基準を満たしていなかったのにそれを隠(かく)していたのよ。

からすけ 2つ目は?

イチ子 ユーロ導入後、赤字が膨(ふく)らんでいたのを当時の政権がずっと隠していたの。09年に政権交代で就任したパパンドレウ元首相が暴露(ばくろ)したのよ。ギリシャのせいでユーロが信頼(しんらい)を失うことを恐れたEUは、IMFやECB(欧州中央銀行、キーワード)と共に助けることになったわ。

手厚い社会保障で借金膨らむ

からすけ なんかギリシャに甘い気がする。

イチ子 いえいえ。EUは、支援と引きかえに「徹底的に切りつめなさい!」とギリシャに財政構造を改革する策を求めたの。

からすけ 例えば?

イチ子 年金や公務員への支出を減らす、増税するなどね。でも生活が苦しくなった国民の不満が募(つの)ったの。今年1月には切りつめ反対の政党「SYRIZA」が議会の第1党になり、党首のチプラスさんが首相になったわ。チプラスさんはEUに借金の負担を減らすよう交渉(こうしょう)してきたのよ。

からすけ それで?

イチ子 7月に国民投票を行ったら6割が切りつめに反対したわ。チプラスさんは交渉材料に使おうとしたけれど、EU側も折れなくて、結局3回目の支援を受ける代わり、ちゃんと切りつめると約束したの。

からすけ じゃあどうしてまた総選挙を行うの? 

イチ子 切りつめに反対していたのに、結局はEUの要望を受け入れたチプラスさんに、仲間の与党(よとう)政治家が反発したの。チプラスさんは自らの判断を改めて国民に問い、政権の基盤(きばん)を立て直すつもりよ。

からすけ もし反チプラス派が勝ったら?

イチ子 再び財政危機が問題になりかねないわ。一方で借りたお金はいずれ返さなくちゃならない。どちらにしても、国民にとっては険しい道のりよ。

■古代から弁論術が発達

豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話 地中海に面したギリシャは、欧州で最も早くに開けた地域です。神話や哲学、アテネに代表される都市国家「ポリス社会」の発展は有名です。近代オリンピックの前身となったオリンピアの祭典、いわゆる古代オリンピックを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
ギリシャは民主主義発祥(はっしょう)の地でもあります。古代アテネでは人々が自分の意思を直接示す「直接民主制」が発達し、自分の意見を演説するときに用いる技術「弁論術」が出世の手段とされました。このため、これを教えるソフィスト(知者)たちが多く現れました。
ただ弁論術は、説得を目的としたものであったため、自分に都合の良い結論を正当化する「詭弁(きべん)」に陥(おちい)ることがしばしばありました。苦境に陥ったギリシャは財政再建し借金を返せるのか。詭弁の応酬(おうしゅう)にならないとよいのですが。
今週のニュースなテストの答え 問1=安倍晋三、問2=10

[日経プラスワン2015年9月12日付]