リハビリロボ、専門外来に続々 手や足を効果的に補助最先端訓練、やる気引き出す

けがや脳卒中の後遺症で手や足が不自由になった人のリハビリテーションにロボットを活用する医療機関が増えてきた。ロボットを使った訓練は、患者のやる気を引き出すことにもつながりやすく、機能回復の効果も従来のリハビリと比べて一般に高いとされる。ロボットリハビリの専門外来も登場している。

ロボットアームのような器具の先端に患者が左手を固定し、正面のディスプレーに映し出された手の位置を確認しながら、矢印の指示に従って腕をゆっくりと動かしていく。腕には動きを補助したり負荷をかけたりする力が伝わり、患者はこれを感じながら決められた作業を進めていく。

■患者も効果実感

ここは佐賀大学医学部付属病院(佐賀市)が2014年10月に開いた「ロボットリハビリテーション外来」。男性患者(76)が使っているのは帝人ファーマの上肢用の訓練支援ロボット「ReoGo―J」だ。男性は3年前に転倒して左手が上がらなくなったといい、6月から週1回1時間の訓練をしている。

上肢用の訓練支援ロボットを使ったリハビリ(佐賀大学医学部付属病院)
スタッフに体のバランスを見てもらいながら歩行訓練(佐賀大学医学部付属病院)

「様々なリハビリの経験があるが、いろいろな動きが練習できる機械は初めて。最先端の訓練をしているという感じで励みになる」。男性はやりがいと効果を実感しているという。

廊下では女性(69)がホンダの「歩行アシスト」を下半身に装着し、スタッフに付き添われながら歩行訓練をしていた。この装置は股関節部の角度センサーの情報をもとに、足の踏み出しをタイミングよく補助する。正しい歩き方を体に教えてくれるため、訓練を重ねることで歩行能力が回復する効果がある。

歩行アシストの訓練プログラムは通常、週3回で2カ月。装置を付けない状態の歩行能力を訓練の前後で比べると、10メートルの距離を歩く時間が短縮し、6分間に歩ける距離が伸びた。効果には個人差があるが、「脳卒中の後遺症で仕事をやめた人がリハビリ後に作業職場に復帰した例もある」(理学療法士の北島昌輝氏)。

佐賀大はロボットのリハビリ利用に10年ごろから本格的に取り組んでおり、導入機器は、サイバーダインの「ロボットスーツHAL福祉用」、帝人ファーマの「ウォークエイド」、トヨタ自動車の「歩行練習アシスト」など上肢用・下肢用合わせて8種類に上る。

機器数は全国でもトップで、リハビリテーション科の浅見豊子診療教授は「まひの状態に応じて機械を使い分けるなどニーズに応じた対応ができる」と話す。

兵庫県立リハビリテーション中央病院(神戸市)や第一病院(東京都)もロボットリハビリの専門外来を設けた。リハビリテーション診療科などにロボットを導入し生活期(維持期)のリハビリに使う例も増えた。

■ノウハウを蓄積

病院側には患者をロボットに任せている分、理学療法士などのスタッフの身体的負担を軽減できる利点もある。ロボット利用には現在、保険が適用されていない。多くは病院側が関連費用を負担しており、患者側負担は通常と変わらない。

浅見教授は「今はロボット利用の効果を最大限にするためのノウハウを蓄積している段階だ。機器のレンタル費用が下がれば、小さな病院でも導入しやすくなり、患者が自宅で使う形も増えるのではないか」と語る。

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上肢・下肢用合わせ10種超

リハビリに使うロボットは上肢用と下肢用に大別され、国内では合わせて10種類以上の機器が使われている。歩行訓練などを担う下肢用で最も普及しているのは筑波大学発ベンチャーのサイバーダインの「ロボットスーツHAL」だ。医療機関のほか専用のフィットネススタジオでも利用されている。

股関節の動きを補助する機器ではホンダの「歩行アシスト」が普及。トヨタ自動車は昨年から「歩行練習アシスト」と「バランス練習アシスト」の2タイプを供給している。

これらの機器がモーターや油圧の力で動くのに対し、電気刺激による筋力の強化やまひの改善をはかる「機能的電気刺激」(FES)と呼ぶ機器も上肢・下肢向けに製品化されている。

(編集委員 吉川和輝)

[日本経済新聞夕刊2015年9月10日付]