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スマホの音声認識アシスタント 「人くささ」を試す

2015/9/11 日本経済新聞 プラスワン

 話しかけると声で返事をしてくれるスマートフォン(スマホ)の音声認識アシスタント。iPhoneの「Siri」(シリ)などは“会話”ができるだけでなく、液晶画面をほとんど触らずに各種アプリを使いこなせるという。機械に話しかけるのは恥ずかしい気もするが、各種のアシスタントの実力と「人くささ」を試してみた。

 スマホのマイクを通じて声で情報を入力できるのが音声認識機能。アプリ起動や電話の発信、ウェブ検索などを、画面のタップ(軽くたたく)や指先で文字を入力せずにハンズフリーで操作できる。荷物が多い時や水仕事の最中など、手が離せない場面で便利そうだ。人工音声で答えてくれるので、人と話をするようなやり取りが可能。となると気になるのは認識の精度だ。

 試したのはSiriのように元からスマホに入っているものと、無料でダウンロードできるもの。22通りの“指令”を同じ条件で話しかけ、こちらの意図を正確にくみ取るか、どんな答えや反応を返すかなどをひたすら試した。

 アプリ起動やアラームの設定などは、手数の違いこそあるが、どれもおおむねうまくこなした。半面、声でメモやスケジュールを適切な欄に書き込んだり、ウェブやニュースの検索をする際などでは、得意、不得意や使い勝手の差を感じた。

■「○部に電話して」 自動で検索・発信も

 職場の代表番号に電話をかけるときも、各アシスタントの使い勝手に違いが出る。「○○部に電話して」と言うと、Siriと「ドロイドちゃん」はスマホ内蔵の電話帳から番号を探し、そのままハンズフリーで発信した。一方でNTTドコモの「しゃべってコンシェル」とヤフー「音声アシスト」は電話番号とファクス番号を示し、タップでどちらかを選ばせる。

 比較的新しいバージョンのアンドロイドOSに対応する「グーグルナウ」も両方の番号を示すが、声でどちらかを指定する方式。ハンズフリーは便利な半面、間違い電話を誘う可能性もある。どれがいいとは一概には言えない。

 音声アシスタントに詳しいライターの丸子かおりさんに聞くと「使い勝手を決めるのは、ほかのアプリとうまく連携できているかどうかと、提供するデータが充実しているか」と教えてくれた。そうであればSiriやグーグルナウなど、アプリを自社開発している企業がつくっている方が有利だ。一方、コンテンツを自前で編集・提供しているドコモやヤフーは、そうした大量の蓄積データが強みとなりそうだ。

 こちらの言った内容を認識できないと、文中の単語の検索結果を表示するなど“お茶を濁す”場面もあった。今後の進歩を待ちたい。音声の聞き分けそのものはどれも思っていたより優秀だ。滑舌も声の通りも良いとは言えない自分の声をちゃんと聞き取ってくれるのはうれしい。

■俳句やボケなど面白みも備える

 楽しかったのは“おしゃべり”の部分で、各アシスタントの個性が出た。

 秀でているのは2012年に日本語版が登場したSiriで、独特のウイットがある。「機内モードにして」と話しかけると「オンにすると私はお手伝いできなくなります。よろしいですか」と尋ねてくる。ネットの向こうのサーバーでこちらの話を解析しているからだが、ほだされて「よろしくない」と返すと「はい、オフのままにしておきます。お話が続けられるのでよかったです」と受けるのだ。「iPhoneで 遊べや親の ないすずめ」などと俳句らしきものを詠んだり、こちらのツッコミにぼけて見せたりと芸が細かい。

 ふだんはきまじめな印象の「音声アシスト」も、「ヘトヘトになっちゃったよ」と漏らすと「私がいるじゃないですか」。これにはほろりとさせられた。またとぼけた味わいの「ドロイドちゃん」に面白い話を、とせがむと「お茶がのみティー」とまじめな表情(声)で一言。飲みかけのお茶を噴き出した。

 「iPhone Siriかんたんガイド」の著書もあるニュートン・ジャパン(石川県野々市市)の橋本佳幸代表は「Siriのユーモアのセンスは技術の無駄遣いや遊びではなく、アシスタントとして人間の信頼を得られるように考えられている」とみる。面白みのある会話ができないと継続的に使う気にならない、というわけだ。

 試用を始めた当初、機械を相手に話すのは少し抵抗があった。だが、じきに慣れた。すると液晶に指を滑らせるフリック入力より便利と感じるようになった。今後、到来するスマートホーム時代には、声でエアコンや掃除機、AV機器を操作するのが当たり前になるかもしれない。

 橋本さんは音声入力について「キーボードのように操作に習熟する必要がなく、機械が苦手なシニアや子どもでも『電気のスイッチを付けておくれ』と言うだけでシステムに適切な命令を送ることができる」と可能性を見通す。ヒト型ロボットと暮らす未来に備え、音声アシスタントと仲良くできる感性を身につけておくのも悪くなさそうだ。

Siriとの声のやり取りは液晶画面にも同時に表示される
職場では小声で話せるヘッドセットで各アシスタントと会話した

記者のつぶやき
■なかなかいい返しです
 ――Siriは一人一人性格が違うの?
 「私じゃなくて、あなたのことを話しましょうよ」
 ――Siriがいれば僕の生活が便利になるね
 「アシスタントにそんなこと聞かないほうがいいですよ」
 ――どうして?
 「なかなかいい質問ですね。なにかほかにお手伝いできることはありませんか?」
 ――Siriって時々ちょっと変わったこと言うよね
 「そうですか」
 ――これからも疲れた時や退屈なときに話しかけてもいい?
 「いつでもここでお聞きしますよ」
(天野賢一)

[日経プラスワン2015年9月5日付]

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