介護予防で保険料低く 自治体が対策、地域差3倍体操教室/要支援から「卒業」プラン

3年に1度の改定で今年度から65歳以上の介護保険料が変更になった。保険料は自治体ごとに異なり、9割の自治体で上昇し、全国平均は月5千円を突破した。ただ、地域によって3倍以上の差があり、減額した自治体もある。ポイントはいかに健康維持など介護予防に取り組むか。保険料の上昇に頭を悩ませる自治体の参考になりそうだ。
「荒川ころばん体操」に参加する高齢者たち(東京都荒川区)

「あらかわのあー」。東京都荒川区の地域コミュニティー施設「町屋ふれあい館」に8月上旬、お年寄りの元気な声が響いた。集まった約50人は音楽に合わせて歌いながら、片足を上げて足先で「あ」の字を描き、「ら」「か」「わ」と続けた。

■転びにくい体に

区が大学などと開発した「荒川ころばん体操」。介護予防として普及しつつある“ご当地体操”の先駆けだ。足文字のほか、イスに座って両膝を伸ばすなど、36の動作で構成。足腰の筋力と柔軟性を高め、転びにくい体を作る。指導役の麻生由起子さんは「声を出すことで脳の活性化なども期待できる」と話す。

現在、体操教室は26カ所。運動機能の数値改善など成果も上がっており、都内で唯一、保険料を引き下げた。「教室への参加が習慣になっている人も多い」と麻生さん。同体操は孤立しがちな高齢者を社会に引き出す役目も担う。

埼玉県和光市は医療や介護を一体で提供する「地域包括ケア」を展開し、地域ぐるみで高齢者を支える。司令塔役は毎週開く「和光市コミュニティケア会議」だ。介護を受ける人の個別のケアプランを話す場で、管理栄養士や薬剤師も加わる。

特徴は高齢者のやる気を引き出し、自立を促すこと。「自宅から300メートル先にあるコンビニに行けるようにする」など意欲を持って身体機能などの改善に取り組めるような目標を立てる。掃除や洗濯など現状の生活行為を評価し、支援した後にどう変化するかも予測。ヘルパーは家事ができるように支援し教える。

同市では「要支援」と認定された人のうち約4割は支援が必要な状態から“卒業”。65歳以上に占める要介護・要支援者の割合(2014年)は9.4%と全国平均(18.2%)を大きく下回る。「なるべく自立した生活を続けようという意識を、市民と事業者の間で共有できるようになった」(東内京一・保健福祉部長)

■認定者2割減に

成功例はヒントになるが、地域の実情に即した対策作りが欠かせない。大分県豊後高田市は和光市のノウハウを吸収する一方、高齢者の暮らしぶりを徹底調査。要介護予備軍向けの運動教室などを実施し、要介護・要支援と認定される人を3年で約2割減らした。

12~14年度の保険料が全国で3番目に高かった新潟県上越市はレセプト(診療報酬明細書)を分析。年1千人を個別に訪問して生活改善を働きかけ、保険料を167円下げた。

高齢者自らが介護予防の担い手となるケースも。山梨県内で保険料が最も低い北杜市は元気な高齢者をボランティアの「介護予防サポートリーダー」として育成。彼らを中心に地域の公民館で体操の集いなどを開く。厚生労働省も新しい介護予防の考え方の一つとして打ち出しており、市の担当者は「ボランティア自身の介護予防にもつながる」と期待している。

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負担、月平均5000円超え 最高は奈良・天川村8686円

厚生労働省によると、2015~17年度の65歳以上の介護保険料は全国平均で月5514円。12~14年度に比べて11%上がり、2000年度の制度導入時のほぼ2倍になった。

月額の保険料は2000円台から8000円台まで、地域による差が大きい。最も高いのが奈良県天川村(8686円)で、65歳以上が人口の半分近くを占める。福島県飯舘村(8003円)が続く。

最も低いのは鹿児島県三島村(2800円)。黒島など3島からなる人口約400人の村で「地元で暮らし続けるために健康維持に努める高齢者が多い」(同村)。次いで北海道音威子府村(3000円)。保険料の低い自治体は高齢者の健康維持の取り組みに力を入れているところが多い。

同省は25年度の保険料の全国平均は8165円に上がると推計する。淑徳大学の結城康博教授は多くの自治体に共通する課題として「現場力の欠如」を挙げ、「民間事業者に仕事を丸投げせず、現場を回って関係者と課題を共有する努力がもっと必要だ」と訴える。

(江口博文、竹本恵)

[日本経済新聞夕刊2015年8月27日付]

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