服のオーダーメードでオシャレの幅広げたい
自分の1着1万円台から
「肩幅や袖丈でジャケットを選ぶと、胸のボタンが留まらない」と打ち明けるのは、会社員の林礼子さん(32)。自営業の山口里香さん(35)は「身長が低く細めなので、すそ上げや幅詰めなど、お直し代がかかって大変」と話す。
こうしたサイズの悩みだけでなく、「好みの既製服がなかなかない」「人と違うオシャレがしたい」と、ファッションにこだわる女性たちが楽しんでいるのがオーダーメードだ。値が張る印象だが、実はワンピースなどが、中心価格帯1万~4万円で注文できるサロンが登場している。
東京・恵比寿の「Fit Me(フィットミー)」は、ワンピースやブラウスなど、どんな服も、生地や縫製代込みで1万円台という。最も高いコートでも1万9500円だ。代表の星田奈々子さんは「家賃や宣伝費をかけず、ベトナムで縫製することで低価格を実現した」と明かす。
好きなデザインや生地で、ぴったりサイズの服が作れると評判になり、顧客数は約2000人にのぼる。リピーターも多い。
東京の南青山にあるA85(アトリエはちじゅうご)にも全国から女性客が訪れる。価格帯は、ワンピースが2万~3万円、ジャケットなら2万5000~4万円程度。百貨店で既製服を買うのと同じか、より安く、自分だけの1着が手に入る。
中国での仕立てで価格を抑える。「現地に縫製技術の専属スタッフが約20人いる」と代表の佐藤かおりさん。オーダーメードは、デザインなど顧客の思い通りに仕立てあげることが大事。「外注ではなく内製化することで感覚を共有するようにしている」と話す。
同店が扱う生地は、洗濯機で洗えるオリジナルのストレッチ生地など、約1万5000種と豊富だ。ブログなどで、新しい生地が入るたびに情報を提供する。「限定品はすぐ売り切れる」という。
生地に合わせデザイン
オーダーの仕方には、サンプルを基に作るパターンオーダーと、一からデザインするフルオーダーがある。初めてなら、まずはパターンオーダーから始めてみるとよい。Fit Meは約500着のサンプルを用意する。
夏服を13着注文した高村京子さん(39)は「二の腕を隠すため袖をサンプルより3センチメートル長くし、縁取りの色を変える、といった細かいリクエストを出した」と満足そうに話す。ポケットやファスナーの位置なども着心地に関わってくるので、忘れず注文したい。
一からオリジナルで思い通りの服を作るには、「雑誌の切り抜きや自筆のイラストがあると、希望が伝わりやすい」と星田さん。「スカートはふんわり」だけでは、どの程度のボリュームにしたいのか分かりづらいという。
「生地とデザインの相性も大切」とA85の佐藤さん。自分でどんな服にもできると思うと、盛り込み過ぎてヤボったくなることも。そんなときはプロと相談しながら進めていこう。
同店で人気のツイード生地では、襟のないジャケットとワンピースのアンサンブルや、膝上丈のAラインのコートを作る人が多い。ツイードは上品だが重たい感じが強く、年齢が高めに見えやすい。「体形を考え、丈やシルエットを調整し、コンサバになりすぎないようにする」(佐藤さん)。
「オーダーメードで、長く愛用できる服を作る楽しさを味わってほしい」(星田さん)。まずは一着、気負わず服をあつらえてみてはどうだろう。きっとおしゃれの幅が広がるはずだ。
(ライター 松田 亜希子)
[日経プラスワン2015年8月22日付]
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