道徳の時間 呉勝浩著「小骨」が読みごたえの学園物

2015/8/14
(講談社・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本年度江戸川乱歩賞受賞作。近ごろの新人賞は口当たりのいい優等生ばかりと不満のある読者に――。これは「難物」だ。小骨の多さが読みごたえ。

 舞台は閉鎖的な地方の町。訳ありの名士が自殺するが他殺を疑わせる要素もある。一方で、13年前の事件が蒸し返されてくる。小学校の児童の前で起きた殺人だ。それを追うドキュメンタリ映画の制作が進行する。

 大枠は学園ミステリー。道徳のレッスンを謎解きの根幹にすえた「観念臭」は、学園ものにぴったりだ。映画制作に執念を燃やすヒロイン像の「孤高」もそこに由来する。

 かなり強引な作品世界を支えるのは、モラルの劣化した時代を生きる「子供たちの時間」の焦燥と不安だろう。

★★★★

(評論家 野崎六助)

[日本経済新聞夕刊2015年8月13日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

道徳の時間

著者:呉 勝浩
出版:講談社
価格:1,728円(税込み)