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遠距離介護、仕事と両立 職場の理解得るのも大切国・勤務先の制度、よく知ろう

2015/8/14

安心・安全

離れて暮らす親に介護が必要になっても、仕事を続けられるのか。夏休みに帰省し、不安を感じた人もいるだろう。地域包括支援センターでは介護体制の整え方は教えてくれるが、自分のキャリア相談にはのってもらえない。突然訪れる老親の遠距離介護に備え、国や勤務先の就労支援制度をおさえておきたい。
働く息子や娘から夜間の延長利用の依頼が増えている(鎌倉市のデイサービス鎌倉古の花)

「介護休業中に父の入居先が見つからなかったら、仕事を続けられなかったかもしれない」。1カ月の介護休業を経て2013年春に復職した米製薬大手の日本法人、バクスター(東京・港)の男性管理職(42)は振り返る。

長崎県五島市で独り暮らしの父(当時71)が認知症と診断されたのは12年の暮れ。休日や有給休暇を使って通院に付き添い、入居先の特別養護老人ホームなどを探したが、「飛行機と船を乗り継いで五島列島まで半日がかり」。施設探しは難航した。

上司に相談し、職場に迷惑がかかりにくい時期を選んで介護休業を取得。1カ月間集中して探し、ようやく入れるグループホームが見つかったという。

突然訪れる老親の介護。介護による離職者は年10万人に上る。成り行き任せで介護を始めて行き詰まり、自身のキャリアを断念するケースも多い。親が受けられる介護サービスを調べるのも大事だが、その前に、普段から国や勤務先の就労支援制度について情報を集めておこう。

育児・介護休業法では企業に介護休業を設けるよう義務付けている。上限は家族1人につき93日間。企業によっては独自に「最長1年」や「最長3年」などに延長している。ほかに年5日までの介護休暇もある。勤務先の就業規則などで確認できる。

次に知っておきたいのは、休業中の所得補償だ。休業前の賃金の40%相当額が、介護休業給付金として雇用保険から支給される仕組みだ。手続きなどは、ハローワークで聞くとよい。

復職後の支援制度もおさえておきたい。例えば短時間勤務。企業は介護目的の短時間勤務の制度化を義務付けられてはいない。短時間やフレックスタイム勤務などから1つを実施すればいいことになっている。勤務先にどんな制度があるか、確認が必要だ。

ただ、こうした制度に頼って権利を主張するだけでは長続きしない。周囲から理解を得るには、「上司や同僚に自分の状況を話し、急な早退や欠勤に備え、必要な情報を共有しておくこと」。13年秋に復職し、短時間勤務を続ける積水ハウスの女性社員(49)は強調する。

もし遠距離介護に直面したら、独りで抱えこまないことも仕事を続ける上で重要だ。親が住む地元の自治体や地域包括支援センターでの相談が全てのスタート。受けられるサービス内容や手続きの仕方などを教えてくれる。最近は夜も高齢者を受け入れるデイサービスがあるほか、通院の付き添い代行などの民間サービスもある。

ケアタウン総合研究所(東京・新宿)の高室成幸所長は「介護休業を仕事を続けるための準備期間と捉え、体制を整えることが両立のカギ」と指摘する。

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政府、休業分割を検討 独自で見直す企業も

法律で定められた介護休業は、介護を必要とする家族1人につき原則1回しか取れない。いったん職場に復帰した後、同じ家族が再び介護が必要になっても、前回と同じ傷病を理由に取ることができない。

介護に直面しても「もっと大変な時に備えて取っておきたい」などと取得をためらうことが多い。取得率は3%程度にとどまり、離職の遠因にもなっている。国は分割取得ができるよう、制度の見直しを検討中だ。早ければ、来年の通常国会に、育児・介護休業法の改正案として提出する。

一方、独自に介護休業の分割取得を認める企業も出てきた。積水ハウスは2014年から最長2年に延ばし2週間から分けて取れるようにした。三菱ふそうトラック・バスも今年春から最長2年までに延長。93日までは必要に応じて1日単位で取れる。企業も独自に制度を見直す動きを急いでいる。勤務先の制度を、いま一度確認してみよう。

(編集委員 阿部奈美)

[日本経済新聞夕刊2015年8月13日付]

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