働き方・学び方

イチからわかる

お墓不足、大都市で進む 新たな埋葬の形も

2015/8/11 日本経済新聞 プラスワン

イチ子お姉さん もうすぐお盆(ぼん)ね。東京ではお墓が足りないって知ってるかな? 毎年抽選(ちゅうせん)になるんですって。倍率が20倍を超えることもあるそうよ。
からすけ 20倍ってすごい! そんなに足りないとは知らなかったよ。増やせない理由でもあるのかなあ。将来、ボクたちのお墓は大丈夫なの?

■都会に人集中、場所がない

イチ子 東京都の都立霊園(れいえん)は、毎年夏にお墓の利用者を募集(ぼしゅう)するの。8月末に抽選をするんだけど、昨年は倍率が22倍のお墓があったわ。22人申し込んでたった1人しか当たらないってことね。

からすけ 当たらなかった人はどうなるの?

イチ子 お寺や民間の会社が運営しているお墓を探すしかないわね。東京だけじゃなくて、横浜でもお墓が足りないらしいわ。

からすけ どうしてお墓がないの? お墓ってご先祖さまから受け継いでいくものじゃないの?

イチ子 東京や横浜みたいな大都市は、地方から引っ越してきた人がたくさんいるの。先祖代々のお墓は地方にあるけれど、墓参りに通うのが大変だから、今の家の近くで探したいみたい。都市部にどんどん人が集まってきているから、お墓もその分、必要になってきているの。

からすけ ご先祖さまの時代から、ずっと東京や横浜に住んでいる人は?

イチ子 代々東京で暮らす人でも、おじいちゃんたちと一緒に暮らさず、お墓も別にする人が増えてきたの。しかも、生きているうちに自分のお墓を決めておきたい人がたくさんいて、墓探しがますます大変になっているのね。

からすけ じゃあお墓を増やせばいいじゃん。

イチ子 都市部には場所がないのよ。近くに住む人が反対するケースも多いわ。それと、お墓に関する法律では、自治体がルールを決めていいことになっていて、いろいろ条件がつくところが多いの。通路の幅(はば)をかなり広くしないといけないとか、納める遺骨の数に応じて駐車(ちゅうしゃ)場を確保しないといけないとかね。

からすけ 肝試(きもだめ)しには広いお墓がいいな。

イチ子 ふふ。確かにそうできるといいわね。日本は高齢化(こうれいか)が進んでいるから、亡くなる人も増えているの。2014年は約127万人だったけれど、30年には1年間で160万人を超える見込みだわ。鹿児島県の人口と同じくらいの数よ。

からすけ えっ、そんなに。じゃあ日本中でお墓が足りなくなっちゃう。

イチ子 それがね、そうでもないのよ。足りないのは一部の大都市だけ。地方は逆にお墓が余っているの。

からすけ なんで?

イチ子 都会に人が出ていった結果、お墓の世話をする人が減っているの。管理する人がいない無縁(むえん)墓(キーワード)が増えていて、墓石の不法投棄(とうき)も出始めたわ。

からすけ お墓の墓場だね。何とかならないの?

イチ子 何年も放置された墓石を撤去(てっきょ)して、遺骨を別の場所に移す動きがあるみたい。そうなる前に遠くにある先祖代々のお墓を処分する「墓じまい」をする人もいるわ。

<キーワード>
無縁墓 管理する人がいなくなった墓。地方で急増しているが、都市部でも増えつつある。撤去には法に基づく手続きが必要。
樹木葬 樹木の下に遺骨を埋葬する。他人と一緒に埋葬する合葬のほか、個別埋葬もある。近年人気が高まっている。

■増える「他人と一緒に埋葬」

からすけ そんなに大変なら、お墓はいらないという人もいそうだね。

イチ子 そうなの。例えば砕(くだ)いた遺骨を海などにまいてとむらう「散骨」という方法を選ぶ人がいるわ。それに、お墓自体もいろいろな形に変わっているのよ。

からすけ サッカーボールみたいな形とか?

イチ子 そういう意味じゃないの。お墓といえば、地面に墓石やプレートを設ける独立したタイプが普通だったわ。でも最近は遺骨が入った箱をロッカーや棚(たな)におさめる納骨堂を使ったり、同じ場所に何人もの遺骨を埋葬(まいそう)する合葬という方法を選んだりする人が増えているわ。都立霊園が新しく募集したお墓の種類を見ると、8割がこれらのタイプなの。樹木葬(キーワード)って知ってる?

からすけ 聞いたことがあるような……。

イチ子 樹木の下に納骨するの。遺骨はやがて分解されて土にかえると考える人に人気なのよ。お墓のことで子どもに負担をかけたくない思いもあるみたい。お墓って家を継ぐイメージがあるけれど、その意識が薄(うす)れてきたのかもしれないわね。

からすけ うちは姉ちゃんがいるから大丈夫。

イチ子 そういう他人任せの考え方がよくないのよ。墓参りにいって、ご先祖さまの前で反省してきなさい!

■火葬、庶民への普及は明治時代

豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話 日本で一般的(いっぱんてき)な火葬(かそう)は、仏教との関連でよく語られます。仏教の伝来で火葬の風習も伝わり、江戸時代に仏教と葬式が強く結びつき広まったというものです。しかし、日本では古墳(こふん)時代にすでに火葬が存在していた可能性もあります。庶民には、人口が急増した明治時代に、埋葬(まいそう)の場所をとらない火葬が普及(ふきゅう)したようです。
そもそも、葬送は多様なものでした。縄文(じょうもん)時代には、死者の霊(れい)が浮遊(ふゆう)するのを防ぐため、遺体の手足を折り曲げて埋める屈葬(くっそう)が行われましたし、その後も土葬が主流でした。世界にも様々な葬送方式があり、たとえばチベットには鳥葬という風習があります。遺体を鳥が集まる場所に放置して、食べさせて葬る方法ですが、魂(たましい)の抜け出た遺体を天に送り届けるという意味があるようです。このように、葬送には人々の死生観、宗教観が表れるのです。
今週のニュースなテストの答え 問1=10、問2=30

[日経プラスワン2015年8月8日付]

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