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高齢者の健康、介護食が守る 食べやすさと栄養で体力の衰え・誤えんを予防

2015/7/17

安心・安全

年をとると、かむ力や飲み込む力が低下し、「食べる」ことすら若いころのようにいかなくなる。気管に食べ物が入り肺炎を起こすばかりか、体力が衰えて寝たきりになることも。介護する家族にとって日々の献立など悩みは大きい。そんな人に寄り添う、食べやすく栄養バランスに優れた食品が充実してきた。健康は食事から。介護食などをうまく活用してみよう。

6月下旬、東京都小金井市にある「食のサポートステーションはつらつ」。「父が80歳になり、食が細くなってしまった。硬い物をかむのがつらそうで」と来店した50歳代の男性に、「かむ力に応じた食品があります」とスタッフ。

同店は、高齢者向け食品を全国宅配するヘルシーネットワーク(東京都日野市)が3年前開いた。レトルトからゼリーまで300種類の食品を4つのタイプ、(1)容易にかめる(2)歯ぐきでつぶせる(3)舌でつぶせる(4)かまなくてよい――に分けて販売している。

例えば(2)は硬い物や大きい物が食べづらい人向けで、白ご飯に例えると、軟らかいご飯から米1に対して水5の割合で作る「全がゆ」まで。(4)は固形物が食べにくい人向けで、ミキサーなどにかけて作る「ペーストがゆ」だ。男性は分類(2)のレトルトの鶏飯とうどんを約500円で買った。

「介護食は乳幼児の離乳食のようなもの」(同店スタッフ)。カロリーやたんぱく質などの表示もあり、利用者の体の状態に合わせて選べる。専門店のほか、ドラッグストアなど流通チェーン店でも買える。調剤薬局を併設する店舗には、栄養士がいることもあるので相談するといい。

かむ力に対応した物だけでなく、ゴックンと飲み込む力が衰えた人のためのトロミ剤もある。介護食品大手、日清オイリオグループ健医食営業部の森川聡部長は「飲み込めないのは口の中や喉の神経がマヒしているか弱っているため。食べ物を舌でうまくまとめられない」と説明する。

飲み込む力が衰えると、食べた物が食道ではなく気管に誤って入り、むせる「誤嚥(ごえん)」が起きる。食べ物と一緒に口内細菌が気管に入ると、体力の衰えた高齢者は肺炎を引き起こしやすい。軟らかい介護食や、トロミ剤を入れた飲み物などで防げる。

粉末状のトロミ剤はお茶や味噌汁のような液体に入れて使う。液体にトロミをつけて喉を流れる速度を緩やかにし、むせるのを食い止める。トロミの強弱は人によるが、小さじ1杯、すりきりの量(1.3グラム)から試してみてはどうか。

親や妻や夫などを介護する人の中には働き盛りだったり、自身が高齢だったりして、食事の支度に不便を感じる人もいるはずだ。地域内で、高齢者に弁当や総菜を宅配するサービスも広がり始めている。

保冷バッグに入った宅配総菜を受け取る秋谷さん(千葉県松戸市)

千葉県松戸市に住む秋谷美沙子さん(70)は昨年4月から、同居の母(97)の介護食として、軟らかく調理された総菜を取り寄せている。宅配するのは市内の介護施設「ひまわりの丘」。施設内の管理栄養士が監修する栄養バランスのとれた食事を、宅配総菜にも生かしている。

7月初旬、秋谷さんはサバの味噌煮、菜の花のあえ物など7品目を注文。料金は送料不要で1850円。真空の冷凍状態で届く。冷蔵庫での日持ちは3~4日。「取り寄せに手料理を1品加えて出す。老老介護なので助かる」と話す。

この宅配情報は、市内の介護相談センターなどで手に入る。施設から原則2キロ圏内に住んでいれば誰でも注文できる。全国では自治体が介護事業としてカロリーや塩分に配慮した弁当を届けるサービスもある。介護保険認定の有無にかかわらず利用できることも多いので、まずは地元の市区町村の介護関連窓口に問い合わせるといい。

まもなく本格的な夏。高齢者は食が細くなり、介護する人の心配は増す。市販の食品やサービスを上手に活用し乗り切りたい。

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85歳以上 3人に1人「低栄養」 病気やケガしやすく

かつては「年を取ればやせるのは当たり前」と言われたが、健康長寿を考えると、必要なエネルギーとたんぱく質不足の「低栄養」状態が問題になっている。病気になったりケガをしやすかったりするからだ。高齢者こそ食事をしっかり取ろうとの考えが広がる。

低栄養かどうかを測るのに、BMI値と呼ぶ体格指数がある。指数が20以下なら低栄養だ。厚生労働省の「2013年国民健康・栄養調査」では、65歳以上の男女約2300人のうち約17%が低栄養。さらに85歳以上では約30%と、3人に1人があてはまった。

農林水産省では、感染症や合併症、骨折、皮膚炎になりやすくなる、と低栄養リスクを指摘、高齢者が食事をとりやすくなるよう介護食の普及を急いでいる。自分が該当すると思われる人は、医師や栄養士に相談してみてほしい。

(保田井建)

[日本経済新聞夕刊2015年7月16日付]

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