スポーツ、社会科見学…都市の最新水辺ツアー

川遊びや船遊びは山や海といった大自然の中だけではない。サーフボードや観光船に乗って都市部の水路などを巡りながら、最新スポーツを楽しんだり、環境をテーマに学んだりする水辺ツアーが人気だ。見慣れた都会の景色も、水上から見ると新鮮に見えてくる。もうすぐ夏休み、都市探検に出てみてはどうだろう。

見慣れた景色、新鮮に

横浜・みなとみらい近くの水上で開くSUPヨガ教室(横浜市中区)=写真 遠藤 宏

「見て! 水の上でヨガやってる!」。横浜市の大岡川河口近くで、子どもが岸辺から声をあげる。6月中旬、横浜ランドマークタワーや大観覧車近くの水上で開かれた「SUPヨガ」教室。潮風で揺らぐサーフボードの上で両腕を広げて膝で立ったり、両足を抱えて尻でバランスを取ったりと様々なポーズをとる。

乗っているのは長さ約3メートルのスタンド・アップ・パドルボード(SUP)。基本はボードの上に立って1本のパドルでこぐもので、ハワイ発の最新スポーツだ。その上でヨガを楽しむ。インストラクターのKikuさんは「不安定な水面は陸上よりも体幹を鍛えられる」と話す。参加者は水に落ちず、1時間のレッスンをやり遂げた。

スタンド・アップ・パドルボードで大岡川を上る参加者たち(横浜市中区)=写真 遠藤 宏

ツアーは、まず、大岡川を日ノ出町の大岡川桜桟橋から河口までパドルをこいで移動する。青葉が鮮やかな桜並木やJR高架下を軽快にすべり抜け、1時間かけて往復する。横浜市に住む都市計画コンサルタントの荒井詩穂那さん(25)は「見慣れた地元の風景だが、新鮮な気分で楽しめた」と笑顔。水上の都市体験は「仕事の良いヒントにもなった」と話す。

主催する水辺荘(横浜市)はほかにも桜の季節に特大SUPの上で茶会を開いたり、デッキなどを活用したピクニックを企画したりと地域と連携してイベントを開いてきた。代表の山崎博史さんは「活動を通して、都市の河川に新たな価値やにぎわいを作りたい」と語る。

都市部の水辺の役割を研究する法政大学デザイン工学部の陣内秀信教授は「江戸時代、水辺は祭礼や儀式に使われ、遊びの文化や密なコミュニティーを育んでいた」と話す。戦後、高度経済成長期に排水で汚れた河川も、環境意識の高まりとともに浄化が進む。この数年、大阪や東京などの大都市で水辺におしゃれなカフェができるなど風景が変化してきている。

水面に映る歴史と未来

環境と歴史がテーマのツアーも人気だ。船上で「江戸の街は水路と共に発展しました」と解説するのは、NPO法人「あそんで学ぶ環境と科学倶楽部」理事長の中林裕貴さん。東京の中心部を流れる神田川と日本橋川を電動ボートで巡る「都心の水辺でエコツアー」を実施している。

水道橋からお茶の水、万世橋と景色の変化に富む神田川を下り、隅田川に出て日本橋川へ。石造りの日本橋をくぐり、鎌倉橋付近に差しかかると、川岸には江戸時代に作られた外堀の石垣。「石をよく見ると、整備した大名の印が刻まれているでしょう」と中林さん。

同ツアーは10年前に始まり、都内全3エリアで開いている。同NPOは水辺の清掃活動に取り組むほか、6~9月の毎週末には「夕涼みクルーズ」を運航。中林さんは「臭い、汚いと嫌われた東京の川の風景は徐々に変わってきた。その魅力を伝え、環境保全の意識につなげていけたら」と語る。

水辺から都市の機能や文化を見直す動きは東西で活発化している。東京では2020年の五輪・パラリンピック開催時、新たな移動手段として水路の活用が注目される。大阪では官民が一緒に「水都再生」を掲げ、水辺のイベントが盛り上がっている。水上から都市の未来を想像してみるのもいいだろう。

(柳下朋子)

[日経プラスワン2015年7月11日付]

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