働き方・学び方

イチからわかる

日本独特の就職活動、歴史と背景は

2015/7/14 日本経済新聞 プラスワン

イチ子お姉さん 学生の就職活動が本番を迎(むか)えているわ。日本では大学生のうちに入社する会社を決めて、卒業したら社会人になる人が多いのよ。
からすけ 黒いスーツを着て歩いている人たちのことだね。シューカツっていうんでしょ。いつごろから始まって、いったい何をするのかな。

■会社の筆記試験や面接に挑戦

イチ子 日本の会社は、翌年に大学を卒業予定の人を主な対象にして採用活動をしているわ。学生は今の時期に会社の説明会などに行って、エントリーシート(キーワード)という書類などを提出するの。リクルートキャリアの調べでは一人約26社に出すそうよ。

からすけ 説明会ってどういうことをするの。

イチ子 「ウチの会社はこんな製品やサービスを提供していて、こんな人材を求めています」と学生に説明する催しよ。入社したい学生は申し込んで、会社の人の目に留まったら、さらに筆記試験を受け、面接試験に進んでいくの。

からすけ 大変だなあ。

イチ子 会社が学生の選考を始めるのが今年は8月からなの。だから今は追い込(こ)み時期なのよ。昨年までは大学3年生の12月に会社説明会を開始し、4年生の4月に選考を始めていたけれど、大学の学期末の試験などに影響(えいきょう)するといわれて、今年から遅(おく)らせたの。

からすけ いつからこんな採用の仕方になったの?

イチ子 明治時代からよ。昔は大学を卒業したら明治政府の役人や学校の先生になる人が多かったけれど、三菱(みつびし)や三井といった大きな会社が「ウチにきて働いてほしい」と採用するようになったわ。その後、多くの大学ができて卒業生の数が増えると選考試験をするようになったの。優秀(ゆうしゅう)な人を確保しようと在学中に声をかけることも多くなったので、1928年に「選考試験は卒業後にする」と取り決めたのよ。

からすけ 100年近い歴史があるんだね。

イチ子 第2次世界大戦後の経済復興で、働く人がたくさん必要になって、人材の獲得(かくとく)競争が激しくなったので、1953年に政府と会社と大学が集まって選考の開始日を決めた「就職協定」が始まったわ。でも守られないことが多くて、1997年に廃止(はいし)になったの。

からすけ 何か決められた日がないと、学生も動き出せないよね。

イチ子 それで、大きな会社が集まっている経団連というところが「内定開始は10月とする」と決めて、ずっと続けてきたの。2011年には大学側の希望で説明会と選考の開始日が加わったわ。

<キーワード>
エントリーシート 履歴書とは別に、詳しい志望動機や自己PRを書いたもの。会社説明会の申し込みになる場合も。
通年採用 1年を通じて必要な人材を採用する形態。念入りに選考でき、他で実績を積んだ人材を得られる。

からすけ 今年は学生の獲得競争は激しいの?

イチ子 景気がよいから求人数は多いみたい。でも、就職氷河期といわれた、景気が悪かった時期は、求人数が就職希望者数より少ない年もあったの。

■一斉に学生採用、見直す動き

からすけ 卒業予定の学生をまとめて採用するのって、外国も同じ?

イチ子 新卒の一括(いっかつ)採用と言って、日本独特のようよ。米国では卒業間近や卒業後に希望する会社に連絡をとって書類を送るケースが多いわ。英国では大学の専攻に合わせて応募するんですって。お金について学んだ人は銀行、通信技術ならインターネットの会社に自分で売り込むらしいわ。

からすけ でも、新卒一括採用はこれだけ長い歴史なんだから、メリットもあるんだよね?

イチ子 会社側は、入社後に計画的に教育研修できるわ。学生側も、卒業と同時に仕事に就けるので経済的に自立できるわね。

からすけ ボクが就職するころまで続くのかな。

イチ子 通信会社のソフトバンクなど一部の会社では、通年採用(キーワード)といって、いい人がいれば、いつでも採用する姿勢を示し始めているの。それと、日本の会社は海外でもたくさん仕事をするようになっているので、外国人の採用も増やしているわ。海外では新卒一括採用は異例だから、日本の会社も対応を迫られているの。

からすけ ボクはまだまだ先だけど、イチ子姉ちゃんはそろそろシューカツのこと、考えないとね。

イチ子 そう。だから、からすけに構っているヒマはないの。もう少し自分で勉強してよね。

からすけ 姉ちゃん、ちょっと怖い……。

■人工知能、仕事を奪うか

渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生の話 子どもたちが将来就く仕事は、今の社会にまだ存在しない企業(きぎょう)や職種になるかもしれません。英オックスフォード大学のオズボーン博士らの論文「雇用の未来・コンピューター化によって仕事は失われるのか」が話題です。コンピューターが生み出した「人工知能(AI)」の活用が進めば、人間の仕事の多くは失われる可能性があると指摘(してき)しています。
2045年には人工知能は自己学習能力や感情・人格を持ち、全人類の知性を上回るとの予測もあります。人間は何をすればいいのかと不安の声も上がっています。
19世紀の初め、英国で産業革命に反発する労働者が「機械打ちこわし運動」を起こしました。しかし技術の革新はその後、より人間らしい創造的な仕事を生み出しました。人工知能をどう活用するか、人類の知性の働かせどころです。
今週のニュースなテストの答え 問1=153位、問2=3400万台

[日経プラスワン2015年7月11日付]

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