食べ残しの問題点、食べ物のムダを減らすには

イチ子お姉さん 日本でまだ食べられるのに捨てられている食品の量を国が発表したわ。1年間で食べる魚の量くらいあるのよ。食べ残しや作りすぎが原因よ。
からすけ そんなに多いなんてびっくりだよ。「もったいない」って日本語は世界でも知られているのに。食べ残しってどんな問題があるんだろう

30%の食べ物がムダに

イチ子 私たち日本人がムダにしている食品の量って多いのよ。日本でまだ食べられるのに捨てられるのが1年間に約640万トン。1年間に消費される水産物の量とほぼ同じくらいなの。世界中で飢(う)えに苦しむ人々に向けて援助(えんじょ)する食料が約400万トンなのだけれど、その1.6倍になる計算よ。

からすけ どこからそんなにたくさんの食べ残しが出るのかな。

イチ子 食品メーカーやスーパー、外食店などから出る量が約330万トン。たくさん作りすぎたり売れ残ったりして捨てられるの。私たちの家庭からは約310万トンで、食べ残しや消費期限切れで捨てられることが多いわ。家庭から出る量が食品メーカーや外食店から出る量と変わらないくらい多いのはちょっと驚きね。

からすけ 世界中だともっと多くなるんだろうね。

イチ子 国連食糧農業機関(こくれんしょくりょうのうぎょうきかん)(FAO、キーワード)によると、1年間でムダになる食料は約13億トンだそうよ。世界で人が食べるために作られる食料の約30%にもなるの。発展途上国(はってんとじょうこく)では、生産してから流通するまでの間に品質が悪くなったりしてダメになる量が多いけど、先進国では食べ残しなどで捨てられる量が多いわ。

からすけ ボクはいつも腹ぺこだから絶対残さないよ。

イチ子 でもね、環境省が調べたところ、日本の小中学生は給食の食べ残しだけでも、1人当たり年間で7.1キロをムダにしているんですって。子どものご飯茶わんで約70杯分にもなるわ。

からすけ もったいないなあ。ボクが食べたいよ。

飽食の裏 8億人が栄養不足

イチ子 もったいないだけじゃなくて、ムダがどんな深刻な問題につながっているのかも知っておくべきね。世界では9人に1人、約8億人が栄養不足の状態よ。食品の廃棄や食べ残しは、こうした国々に行き渡る可能性がある食料をムダにしている面もあるの。今、世界の人口は約70億人だけど、2050年には90億人を超す見込み。食品のムダが減らないと、食料不足が深刻になるかもしれないわ。

からすけ それは大変だ!

イチ子 それにね、食品を作るまでに使われた大量の水や電気などのエネルギー、飼料や肥料もムダにすることになるの。海外から輸入された食品を捨てることは、日本に運ばれてくるまでの輸送や冷蔵などに使ったエネルギーも捨てることと同じなのよ。

<キーワード>
FAO 国連食糧農業機関。世界の人々の栄養や生活水準の向上などに取り組む国際機関。本部はイタリア・ローマ。
フードバンク 消費期限が近いなど、品質に問題がないのに捨てられる予定の食品を、生活に困った家庭や施設に配る活動。

からすけ 食べ物を捨てると腐(くさ)るから、環境にも悪そうだね。

イチ子 そうね。腐りかけた食べ物は空気を汚(よご)すだけでなく、メタンガスという有害なガスを発生させて地球温暖化の原因にもなるの。温暖化は洪水(こうずい)や干ばつなどの異常気象を引き起こすことになり、世界の食料生産はさらに不安定になるわ。

からすけ ボクたちの食卓は世界とつながっているんだね。

イチ子 そのとおり。国連は昨年、売れ残ったり食べ残されたりする食品の量を、2030年までに今の半分まで減らす目標を打ち出したわ。特に食品を大量に海外から輸入している日本は世界からも動きが注目されているわ。

からすけ どうしたらムダを減らせるのかな。

イチ子 食品メーカーなどは、天気予報を使って売れる量を予測して生産量を細かく調整したり、できるだけ商品の賞味期限をのばしたりすることに取り組んでいるわ。捨てられる予定の食品を寄付に回すフードバンク(キーワード)と呼ばれる活動も盛んになっているの。

からすけ ボクたちにもできることはある?

イチ子 まずたくさん買いすぎないことや最初から注文しすぎないこと。スーパーで棚の奥から新しいものを選んで買う人が多いけど、みんながそうしちゃうと、売れ残って捨てられる食品が増えるわ。レストランでの食べ残しはお店の人に持って帰れるか聞いてみるといいわね。消費期限は安全に、賞味期限はおいしく食べられる期間なので、賞味期限が過ぎたからといって慌(あわ)てて捨てない、といった正しい知識をもっておくことも大事よ。

断食で感じる食べ物のありがたみ

豊島岡女子学園中学高等学校の神谷正昌先生の話
宗教の中には、断食を義務付けているものがあり、中でもイスラム教の断食は有名です。イスラム暦の9月にあたるラマダンの1カ月、イスラム教徒が全ての食を断つ宗教的務めです。日の出から日没までの間の実施で、全く何も食べないわけではありませんが、それでもかなりの空腹を経験するようです。
なぜ断食をするのでしょうか。いくつもの宗教的意味があるようですが、食べ物のありがたみとそれを与(あた)えてくれる神に感謝することが、目的の一つとして挙げられます。食べ物が目の前にあるのが当たり前とは限りません。私の両親は戦前生まれで、戦時中や敗戦直後の食糧難を経験しています。食べ残しがいかに罰(ばち)当たりなことかを、子どものころ繰(く)り返し聞かされました。日ごろから、食べ物への感謝の気持ちを忘れてはいけないと強く思います。
今週のニュースなテストの答え 問1=日本遺産、問2=2427万円

[日経プラスワン2015年7月4日付]

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