かき氷、家でもお店の味を再現したい
とけ始めの氷でふわっと
口どけのいい氷、とろりとしたかぼちゃのシロップ、ほろ苦いキャラメルソース。極上スイーツを食べた気分にさせてくれるのは、かき氷専門店「雪うさぎ」(東京・世田谷)の「かぼちゃキャラメル」だ。
生の果物で作るシロップ、フロマージュ(チーズ)、コーヒーなどの洋風の味のほか、黒糖、きなこといった和物との組み合わせも様々。「今年は従来のかき氷の概念を超える物が出てきた」と話すのは、かき氷食べ歩きガイド本「かきごおりすと」を企画・編集・出版した小池隆介さん。
氷へのこだわりも強い。天然氷はその年の気候で出来が違う。削り具合も刃の角度を調節するなどして、ふわっふわっ、さらさら、ジャリジャリなどさまざまに。「シンプルそうだが奥が深い」と話すのは雪うさぎ店主の小沢聡さん。
小沢さんが心を配るのは、「どこを食べても、最初から最後までおいしいこと」。氷やシロップ材料の特性を考え、組み合わせる。
家で作るとどうしても味に偏りが出て途中で飽きる人が多い。都内に住む女性(38)は「店のように作れない。シロップもマンネリ」とこぼす。店と同じ食感にするのは難しいが、おいしくするコツを聞いた。
まず、「氷は天然水で作る方がおいしい」(小沢さん)。冷凍庫から出したら室温にしばらく置く。氷の表面がトローッととけ始め、「汗をかいた」透明の状態が削りどき。「刃の当たりが良くなりキレイに削れる」。水は絶対かけてはいけない。
シロップで氷が沈まないよう、氷をかく時は器の周りに積んでいき、優しく包むようにまとめる。目指すのは「綿菓子の雪玉」(小沢さん)。次に練乳を回しかける。脂肪分で氷が沈まないようにする。粘度が低い方が満遍なくかけやすい。その後にシロップ。これを繰り返して層を作る。
特別なぜいたく感があるシロップ作りにも挑戦したい。旬の熟れた果物をミキサーにかけ、砂糖と水を煮詰めた白蜜を混ぜ、とろみと甘味を調節。甘さは控えた方が素材の味が生きる。冷凍焼きイモもお薦めだという。ラム酒につけたレーズンをふれば大人のかき氷に。器やシロップは必ず冷やしておこう。
アレンジで好みの味を
かき氷の歴史は古く、平安時代の「枕草子」には、「削り氷」に甘い液をかけて食べたとされている。
先人の知恵を拝借、甘酒をシロップにするのもいい。「天野屋」(東京・千代田)の夏メニュー「氷甘酒」は、自家製米糀(こうじ)で作る甘酒を使う。甘味料ゼロでノンアルコール。江戸庶民も夏に飲んだという。「栄養価が高く、夏バテ防止になる」と女将の天野史子さん。「氷甘酒」は、白蜜と冷やした甘酒を器に入れて氷をかく。
日本だけでなく、台湾やシンガポールなどでも氷を食べる文化はある。韓国の「パッピンス」は日本流に言えば「小豆氷」。「韓流茶房(同・新宿)の店主、金賢稀さんは「ミスカルと呼ぶ玄米、麦、大豆、ごま、緑豆などの穀物を粉にしたものをかけるのが伝統的」と説明する。きな粉に似た風味で、ビタミンやミネラルが豊富だ。
「かき氷の魅力は、懐かしさと斬新さ」(小池さん)。専門店をめぐり、お気に入りを見つけるもよし、自宅で果物や野菜で自分好みのシロップをアレンジするのも楽しい。暑くても楽しい夏になりそうだ。
(ライター 小長井 絵里)
[日経プラスワン2015年7月4日付]
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