家事代行、一般の人に依頼 アプリ使って募集も
直接やり取りで割安、知り合い同士限定も
「本当にきれいになりました。ありがとう」
「こんなんでよければ、またやりますよ」
生後6カ月の子どもを持つ東京都渋谷区の主婦、阿部奈海さん(29)は自宅のベランダの床掃除と窓ふきを大学院生の村田智士さん(27)にしてもらった。
阿部さんが村田さんに報酬として提示した額は5000円。「子どもがいて落ち着いて掃除できないので助かる」と阿部さんは満足げ。仕事を請け負った村田さんも「1時間ちょっと働いただけでこんなにもらえるなんて家庭教師やコンビニのバイトよりも割がいい」と笑顔だ。
阿部さんと村田さんは赤の他人。「エニタイムズ」というスマホ向けアプリで知り合い、この日初めて顔を合わせた。
このアプリは掃除や料理、家具組み立てなどの家事や日曜大工などを代行してくれる人を募集できる。例えば掃除なら「部屋の広さは?」「気になる汚れは?」などあらかじめ用意された質問に回答。最後に報酬額を設定し掲示板に投稿する。
働き手は掲示板を見て、できる仕事があったら応募する。応募した人が複数いる場合、依頼主は応募者の過去の実績や5段階評価を参考にしたり、サイト上で応募者とメッセージをやりとりしたりして、条件が合った人に実際に仕事を発注する。
お墨付きマーク付与
掃除はワンルームで3000円、料理は5食分で5000円程度が報酬の相場。依頼者はクレジットカードや銀行口座振り込みで支払う。プロの家事代行サービスだと掃除で1万円を超えるケースが多い。エニタイムズが安く提供できるのは依頼者とサポーターが直接仕事を受発注をし、業者が徴収する中間マージンが低く抑えられているからだ。
現在、登録者数は約1万人。登録すれば、仕事を依頼する側にも請け負う側にもなれる。見知らぬ人が家に入ることに不安を感じる人もいることから、同社は履歴書や面談で一定の条件をクリアした働き手にお墨付きのマークを付与している。こうした対策により「トラブルが起きたことはない」(エニタイムズの角田千佳社長)という。
ブランニュウスタイル(東京・港)が運営する「タスカジ」は掃除や洗濯、買い物などの家事全般をワンパッケージで依頼できる。1時間あたり1500円からと「家事代行業界平均の半額」(同社)だ。
登録中の働き手約50人のうち8割はフィリピンなど海外出身者が占める。「家事をしてもらいながら子どもに英語を教えてもらえる」として、子育て世代に人気だという。
子どもの保育園の送迎や一時預かりに特化しているのは「アズママ」だ。利用したい人はまず自ら会員登録し、その上で同じ保育園の親や近所の人に会員になってもらう。
対価払い気兼ねなく
「誰か代わりに迎えに行ってくれませんか」など、急な残業や体調不良などの時に会員サイトに投稿。対応できる会員がいたら請け負う。知り合い同士で助け合うことで安心感を生んでいる。依頼者は支援した会員に1時間あたり500~700円を支払う。「対価を払うことで気兼ねなく依頼できる」(同社)
お隣のおばあちゃんに子どものお守りをしてもらうような地域関係はすっかり失われてしまった。こうした新サービスが地域の相互扶助の関係を呼び戻すきっかけになるかもしれない。
(電子編集部 鈴木洋介)
[日本経済新聞夕刊2015年7月2日付]
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