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足腰悪くても快適な旅 高齢者に選択肢広がる 車いす移動や入浴サポート、国内外問わず充実

2015/7/3 日本経済新聞 夕刊

 「足腰が悪くても快適な旅を楽しみたい」。介護が必要な高齢者が増えるなか、国内・国外を問わずバリアフリーの旅行の選択肢が広がってきた。観光地なども受け入れ体制を整備し、旅行各社もツアーを用意する。介助者が同行してくれるサービスもある。

 ▼車いすで生活する男性(78)は入浴時に介助が必要だ。「広々としたお風呂にゆっくりとつかりたい」。ささやかな夢を無理だとあきらめていた

 「杖(つえ)・車いすで楽しむ旅」という旅行パンフレットを発行しているクラブツーリズム(東京・新宿)の「ドリームフェスティバル」はこんな願いをかなえる。9月28~30日の日程で予定されるツアーでは、山梨県内のホテルの大浴場を貸し切る。のびのび温泉を楽しんでもらうのが狙いだ。

 旅行には「トラベルサポーター」が同行する。介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)以上の資格を持ち、大浴場での入浴を助けてくれる。旅行代金は5万4800~9万9800円。

 同社ユニバーサルデザイン旅行センターの渕山知弘支店長は「通常ツアーの半分の人数で開催している」と説明。時間に余裕があり、少人数の分目配りがきくが、料金は通常ツアーの1.5倍程度になる。

 鉄道や航空機など公共交通機関のバリアフリーも進んできた。国土交通省の基準に適合する車両の割合は、鉄道が59.5%、航空機は92.8%(2013年度末)。新幹線は基本的に車いす対応座席がある。あらかじめ駅などに伝えておくと、乗降車もスムーズに進む。

 ▼若いころ海外旅行が好きだった女性(77)。もう一度行きたいが、車いすでの渡航は不安は大きい

足が不自由でもハワイの海を満喫できる(ワイキキビーチ)=エイチ・アイ・エス提供

 エイチ・アイ・エス(HIS)の「バリアフリー旅なかま」は国内外で年間60カ所程度のツアーを実施する。専任搭乗員が同行し、現地では車いすの貸し出しもある。行き先はハワイやスイス周遊、アフリカ南部のビクトリアの滝と幅広い。

 専門家によると、家族水入らずで海外に足を運ぶにはハワイがおすすめ。同社バリアフリートラベルデスクの薄井貴之所長代理は「家族旅行の9割はハワイ」と話す。ホテルや交通機関などのバリアフリー対応が進んでいるのが理由という。

 一方、欧州はバリアフリー対応が進んでいるが、歴史的な建造物を活用した宿泊施設の場合などは使い勝手が悪いこともある。風情を感じさせる街中の石畳も車いすの振動が大きく、注意が必要だ。

 インドネシア・バリ島などアジアのリゾート地はホテルの対策は進むが、街中の店舗では入り口に段差があるなど、街全体の取り組みは遅れている。

 ▼東京都の要介護5の男性(86)は「故郷に帰りたい」と思った。親戚などと再会を果たした帰りの飛行機の中で思った。「北海道にめいっ子がいたな」

 観光地に行くことだけが旅ではない。「死ぬ前にふるさとを見たい」「お盆に墓参りに行きたい」。ツアーではなく、個人にあった計画を提供する旅行会社もある。

 SPIあ・える倶楽部(東京・渋谷)は「トラベルヘルパー」と呼ぶ旅行時の介助者約800人と契約しており、自由度の高い旅行をサポートしてくれる。料金は1日当たり2万1600~2万7000円。交通費や宿泊費も利用者負担だが、それぞれの土地で違うトラベルヘルパーに頼むことで、交通費を節約できる。

 篠塚恭一社長は「旅に出れば、外に出てもなんとかなるという自信が出る」と指摘。「それが普段の生活にも影響を及ぼし、日常生活が豊かになる」としている。

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■旅行会社に相談 最適なプランを しっかり準備 楽しく安全に

 車いすなどの高齢者が旅行する際の注意点は何か。旅行会社に申し込む時点では体の状況を正確に伝えること。断られるのではと過少申告する人がいるが、正確に伝えてこそ自分に合ったプランを紹介してもらえる。

 高齢になると体調を崩すリスクも高くなる。国内旅行でも旅行保険の活用を検討すべきだ。海外なら滞在先の医療機関も調べておいた方がいい。ハワイなら日本語が通じる医療機関がある。

 NPO法人、東京バリアフリーツアーセンター(東京・江東)の斎藤修理事長は「障害者目線の情報を集める必要があり、事前に障害者支援団体に聞いた方がよい」と助言。同センター(電話03・3646・3544)のほか、各地の社会福祉協議会やボランティアセンターで相談先を紹介してもらうこともできる。

(辻征弥)

[日本経済新聞夕刊2015年7月2日付]

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