限りなく続く円周率、今も計算中

算数の時間に円周率を習ったよ

3.14と教わったかな。でも、それで終わりじゃないんだよ。

何ケタまであるのかな。それに、どうやって調べるの。

どこまでも続くから、今も計算中なんだ

森羅万象博士より 円周の長さを直径でわった円周率は限りなく続く不思議な数なんだ。多くの科学者が正確な値を求めようと挑んできた。最も簡単なのは円形のものを1回だけ転がして、進んだ距離を直径でわる方法だね。転がし方で差が出ないように何回か測って平均を出すのがコツだよ。

古代エジプトで、円の面積を測って約3.16と出したという記録が残っている。3.1まで正しかったけど、このやり方では詳(くわ)しい値は求められないんだ。

数学的な方法で計算したのが古代ギリシャのアルキメデスだ。「正多角形」を使うことで、紀元前3世紀に3.14と計算した。

まず円の内側と外側に正六角形をかいた。正六角形は6つの正三角形にわけられる。もし直径が1だとすると、正三角形の辺の長さは2分の1。それが6つあるから周りの長さは3になる。円周はこれより長いから円周率は3より大きいとわかるよね。外側の正三角形は高校で習う数学で計算すると1辺が0.577…となるので、周りの長さは6倍した3.46…。円周率は3より大きく3.46より小さいといえる。

辺の数を増やすと、形が円に近づくよね。この作業を正九十六角形まで続けて約3.14と求めたんだ。

その後も多くの数学者が計算し、19世紀に小数点以下700ケタに達した。残念ながら、20世紀に検算したら528ケタ以降はまちがっていたんだ。

◇            ◇

第2次世界大戦後はコンピューターの登場で記録が伸びた。1949年に米国のENIAC(エニアック)というコンピューターを使って2037ケタまで求められた。2011年に長野県の会社員、近藤茂さんが自作のパソコンを使って計算し、10兆ケタを超(こ)えた。近藤さんの記録は12兆ケタを突破している。

なんで無限(むげん)に続くかって? それは高校3年生で習う数学を使えば証明できる。大学の入試問題に出たこともあるよ。

普通は3.14で十分だけど、かなりのケタ数が必要になる場合もある。たとえば、小惑星(しょうわくせい)探査機「はやぶさ」は地球から3億キロメートルはなれた小惑星から帰るために16ケタまで使った。太陽を回る地球の動きも考えながら複雑な曲線の軌道(きどう)を計算するには、これだけ必要だった。3.14ならば、地球がいない場所を飛んで帰ってこれなかった。

陸上競技のトラックではコースの内側と外側で走る距離をそろえるため、5ケタで計算している。必要とされる精度で使うケタ数も変わるんだね。

大工さんも使っているよ

L字の内側に横方向へ刻まれた目盛りが「丸目」。縦方向は「角目」
博士からひこと 円周率は大工が使う「さしがね」と呼ぶL字型のものさしにも使われている。裏面には丸目という目盛りがあって、丸い木材の直径に合わせると円周の長さがわかる。
さしがねには、角目と呼ぶ目盛りもある。丸い木材の直径に合わせると、切り出す正方形の一辺の長さがわかるんだ。

(取材協力 桜井進氏・サイエンスナビゲーター、根上生也・横浜国立大学教授)

[日経プラスワン2015年6月20日付]

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