季節外れの気温上昇 「フェーン現象」が原因

5月なのに暑かったのはなんで?

スーちゃん 4月の末から5月にかけて暑い日が続いたね。北海道でも30度以上になっちゃうんだからびっくり。すごく気温が上がったのは「フェーン現象」が起きたからってニュースで説明してたけど、なんで暑くなるんだろう。

風が山を越えて気温が上がるんだ

森羅万象博士より 「フェーン」は欧州のアルプス山脈で春先に吹(ふ)く強い南風のことなんだ。この山越えの風が吹くと、山のふもとは急に気温が上がる。髪(かみ)をかわかすドライヤーをドイツ語でフェーンというのは、この風にちなんだんだよ。似たような風は世界各地で吹くので、「フェーン現象」と呼ぶようになったんだ。

4月27日、東京の最高気温は25度だったのに、北海道の十勝地方や釧路地方は30度を上回った。西から吹く風が日高山脈などを越(こ)えてフェーン現象が発生したからといわれているんだ。5月半ば、日本海側や関東地方で30度を超す日が続いたときもフェーン現象が起きていたという。

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風が山を乗り越える間にどんなことが起きるのか説明してみよう。風が山にぶつかると、斜面に沿って上っていく。だいたい100メートル上昇するごとに1度くらい下がるといわれているんだ。例えば、ふもとで25度だったら、高さ1000メートルでは15度になる。

空気は水蒸気を含んでいるけど、温度によってめいっぱい含むことのできる量が違うんだ。これが「飽和水蒸気量」。空気が上昇して冷やされると飽和水蒸気量に達し、水蒸気は細かい水のつぶになるよ。それで雲ができ、雨をふらせる。

空気中の水蒸気が水のつぶになるときには熱を出すんだ。それで、100メートル上昇しても0.5度ほどしか下がらなくなる。1000メートルの高さで雲ができて2000メートルの頂上にたどりついたとき、気温は10度にしか下がらない。

雨をふらせてかわいた空気が山を下るとき、100メートルにつき1度上がる。2000メートル下のふもとでは20度上がって30度になる。風上と風下の間で5度も高くなるわけだ。

フェーン現象は台風が通りすぎた後など風が強いときに発生しやすい。

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フェーン現象には、上空の空気が山に沿っておりて平地に流れ込むパターンもある。周りよりも気圧が高い高気圧におおわれたときに起きるんだ。高気圧では下向きの風が吹いているからね。

なんでこんなことが起きるのかというと、空気の性質が関係しているよ。空気は圧力が低くなって体積が膨張すると温度が下がる。逆に、圧力が高まって圧縮されると温度が上がるんだ。

例えば、スプレー缶を噴射した後にさわると、缶が冷たいよね。中の空気が外に出て中の圧力が減ったからなんだ。空気を入れた後の自転車のタイヤは圧力が高くなってあたたかくなっている。

フェーン現象は猛暑にも関係している。2013年に高知県の四万十市で国内最高の41.0度を記録したのをおぼえているよね。このとき西からの風が山を越えて吹きおろしていて、フェーン現象も記録的な暑さになった原因のひとつと考えられているんだ。40.9度の記録がある埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市でも、同じように起きたといわれているよ。

火事や自然災害にも注意

博士からひこと フェーン現象で吹く風は強くてかわいている。だから、火事が広がりやすく大きな被害が出やすい。フェーンのことを日本では「風炎」と訳(やく)したくらいだ。
たとえば、鳥取市の市街地のほとんどが焼けた1952年4月の「鳥取大火」では、フェーン現象による強い南西風にあおられて火が燃え広がった。雪の多い地方で春先にフェーン現象が発生すると、雪がとけてなだれが起こりやすくなるんだ。
気温や気圧が急に変わるから、体調管理にも注意する必要がある。頭や体の関節が痛くなる人もいる。まだ暑さになれていないから、熱中症に気をつけた方がいいね。

(取材協力=気象庁天気相談所)

[日経プラスワン2015年6月6日付]

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