汗のかき過ぎ、改善法 専門家に聞く

汗をかく季節がやってきた。暑さのせいだけでなく、人前などで緊張した時にも汗は出る。ワキ汗の汗ジミが目立ったり、頭からぐっしょり汗をかいたりすると、人目も、ニオイも気になり、ゆううつなものだ。少しの注意や対処で、改善されることもあるという。正しい方法について専門家に聞いた。

汗は暑い時や運動した時、体温が高くなると出る。「温熱性発汗と呼び、全身のエクリン汗腺から汗を出し、熱を逃がして体を守るためだ」と東京都立大塚病院の藤本智子皮膚科医長は説明する。脳の視床下部に体温調節中枢がある。部位により量は違うが、全身から出る。

■緊張で局所に

一方、緊張などストレスが引き起こす精神性発汗もある。「大脳辺縁系と呼ぶ場所に発汗のスイッチがあるのでは、と考えられている」(藤本医長)。体温調節の時と同様に、大半はエクリン汗腺から汗が出るが、ワキ、手のひら、足の裏、頭、顔など局所から多く出るのが特徴だ。

「これは太古の名残と言われる機能。危険を察知した時、木を握る手のひら、地面を捉える足の裏が多少湿ったほうが滑り止めに適していた」と帝京大学心療内科の中尾睦宏教授は話す。

汗はヒトに備わった大切な機能とはいえ、大量の汗に悩む人は多い。ニベア花王(東京・中央)が今年1月に実施した、汗の悩みに関する意識調査では、「緊張で汗をかきやすい」と思う人は約63%。汗ジミなど見た目、量、臭いのどれをとっても、約6、7割が「体温調節の発汗よりも気になる」と回答。部位別では、ワキが53%と首位。

臭いを気にする人が多いが、汗自体は無臭。皮膚にいる細菌が汗の成分や皮脂を分解して臭いを発生する。ワキは蒸れやすく、菌には好環境となる。脂質やたんぱく質が比較的多い汗を出すアポクリン汗腺もあるので、臭いが強くなりがちだ。

どう対処すればよいのだろうか。見た目なら、汗取りパッドや、通気性のいい、汗ジミが目立たない色の服を選ぶのも手だが、「制汗剤などで汗を抑えると、臭いも解消されることが多い」と藤本医長は話す。

「直接塗る市販の制汗剤も効果がある」(藤本医長)。制汗成分ACH(クロルヒドロキシアルミニウム)や殺菌成分が入っているものを選ぶとよく、根気強く毎日塗ると、入浴時に洗っても、皮膚の一番外側の層に沈着していき効果が出るという。「寝る前にも塗るとよい」(藤本医長)

効果的な塗り方のコツは「ワキ全体に広く」(ニベア花王の研究員の伴和佳さん)。手軽さで選べばスプレー式だが、直接指で塗るクリームなどは密着度が高く、より効果が期待できる。ロールオンやスティックタイプでもよい。緊張した時の汗は、急激にドッと出るが、あらかじめ塗っておけば予防できるという。

■重症なら治療も

一方、手のひらの汗で紙が破ける、パソコンが故障するというように、生活に支障が生じるほど過剰な汗が出る人もいる。他の病気がなく、原因不明で局所的に過剰な汗が出る場合、原発性局所多汗症の可能性もある。汗を出す腺数が多く、1つから出る量も多い。「受診者は10~50代と幅広い。対人面の悩みや勉強や仕事に集中できないと訴える」(藤本医長)

2010年、診療ガイドライン(日本皮膚科学会)が作られ、医療機関で適切な治療が受けやすくなった。主な方法は、塩化アルミニウム溶液を家で毎日塗布するというものだ。微弱な電流を流す方法もあるが、実施できる病院はまだ少ない。

症状が改善されないと、ボツリヌス毒素製剤を直接注射するという方法もあり、半年程度は効果が持続するとされる。ワキに限っては、重症と診断されれば、12年から健康保険の適用となった。脳からの指令を汗腺までつなぐ交感神経を遮断する手術は、「他の部位の汗が多くなる副作用を起こすこともある」(藤本医長)という。

「心理的要素が気になり、心療内科を受診する人もいるが、まずは皮膚科や内科で、甲状腺機能亢進(こうしん)症など他の病気がないか調べるのが先決」(中尾教授)。汗が出て困ったと思うとさらに汗をかく。リラックス状態に自分を置き、汗をおさめる練習で不安を軽くする方法もあるという。皮膚科治療である程度汗が抑えられると、「安心感から治まる人もいる」(藤本医長)。

汗はヒトの体に欠かせないもの。汗にもっと寛容になることも大切だ。

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べたつく汗 ミネラル不足に注意

エクリン汗腺から出る汗の成分は99%が水分だとされる。この汗腺では、ミネラルなどの体に必要な成分を再吸収して体に戻しているからだ。

ところが、急激に多量に発汗すると、「うまく再吸収できず、水分とともにミネラルが排出されてしまい、ベタつく汗になる。低ナトリウム血症のような症状が出る場合がある」と藤本医長は話す。

中尾教授は「大量の発汗に悩むあまりに『汗をかきたくないから』と、夏でも水分摂取をしない人がいる。これはとても危険」と熱中症への注意を促す。汗は恥ずかしいものではない。恐れずに、水分と塩分の補給は心がけよう。

(ライター 小長井 絵里)

[日経プラスワン2015年5月30日付]