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認知症は生活習慣で防げ 糖尿病や高血圧、リスク高く 食事改善と運動大切、薬に頼らず体重管理

2015/5/29 日本経済新聞 夕刊

どんな人が認知症になりやすいのか。最近注目されているのが認知症と生活習慣病の深い関係だ。中高年で糖尿病や高血圧症などを患った人が認知症になるリスクが高いことが明らかになってきた。専門家は食生活などの生活習慣を見直すことが認知症予防の大きな力になると強調する。

■脳血管に影響

認知症のリスクを高める病気として専門家が挙げるのは糖尿病や高血圧のほか、コレステロールなどの値が高まる脂質異常症、内臓肥満などを特徴とするメタボリック症候群の4つ。

特に認知症のリスクとの関係が深いとみられるのが糖尿病だ。国内の推定患者数約950万人、予備軍を含めると2000万人を超える病気だが、中高年で糖尿病になると認知症になりやすくなるという調査結果が国内外で相次いでいる。

認知症のタイプは様々だが、脳内にアミロイドβ(ベータ)という異常たんぱく質がたまって神経がこわれるアルツハイマー病が約6割を占める。次いで脳梗塞や脳出血など脳の血管の病気で神経細胞が壊れる脳血管性認知症が多い。

東京都健康長寿医療センターの井藤英喜理事長らは、糖尿病と認知症発症の関係を追った国内外の19論文を調べた。糖尿病の人は、アルツハイマー病で約1.5~2倍、脳血管性認知症で2~3倍、それぞれ発生頻度が高かった。

糖尿病は血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなる。血糖値が上昇して血管が傷む病気だ。井藤理事長は「脳血管も影響を受けると考えれば脳血管性認知症との関係はうなずける。それにとどまらずアルツハイマー病のリスクも高まることが注目されている」という。

糖尿病とアルツハイマー病の関係については、血中のインスリン濃度が変化することで、アミロイドβの蓄積を促したり、分解が邪魔されたりするなどのメカニズムが推定されている。糖尿病と症状が重なるメタボリック症候群もこうした仕組みで認知症が増えると考えられている。

■発生頻度10倍

糖尿病だけでなく、高血圧も認知症のリスク要因になるという証拠が増えている。九州大学のグループが福岡県久山町の住民を対象に実施している疫学調査「久山町研究」でもこれを裏付ける結果が出ている。

調査では、正常血圧の人と比べて、軽い高血圧(ステージ1)では4.5~6倍、より重いステージ2では5.6~10.1倍、それぞれ血管性認知症の発生頻度が高かった。アルツハイマー病発症との関係は明らかではなかった。

この調査では中年期から老年期にかけての血圧レベルの変化と、認知症発症の関係も調べた。老年期になって高血圧になった人より、中年期に血圧が高かった人の認知症発症リスクが大きいことがわかった。研究グループは「中年期からの高血圧管理が、将来の血管性認知症の予防に極めて重要である」とみている。

糖尿病も高血圧も脂質異常症も薬によって数値は下げられる。だが認知症との関係で言えば、薬で血糖値が急に下がることで認知症のリスクが高まることが指摘されている。井藤理事長は「薬をできるだけ減らして体重を減らし、食事や運動習慣を改善するのが良い」と強調する。

認知症への対処としては近年、兆候を早期に発見して、進行を抑える方法が注目されている。軽度認知障害(MCI)と呼ばれる部分的な記憶障害が現れている状態を診断し、食生活の見直しや運動などを指導する。これにより進行を遅らせ、人によっては症状が出ずにすむ人もいるという。

生活習慣病と関連した認知症リスクへの対応は、MCIに至る前で先手を打つことを意味する。認知症になりにくい生活習慣としては、毎日しっかりと歩くなど運動を習慣づけたり、野菜や魚を主体とした食事をとったりすることが推奨されている。これらはそのまま生活習慣病の予防につながる。認知症のリスクも視野に入れ、転ばぬ先のつえとして生活習慣を改善することは賢いやり方だといえそうだ。

(編集委員 吉川和輝)

[日本経済新聞夕刊2015年5月28日付]

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