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カツオ節より「宗田節」、麺類のダシに濃厚な味わい 高知の隠れた名産

2015/5/27 日本経済新聞 夕刊

 ショウガやニラ、ナスなどと並び高知県が出荷量日本一を誇る特産品がある。ソウダガツオを使った「宗田節」だ。一般的な知名度は低いものの、カツオ節に比べると力強くコクのある味が特長で、そばやうどんなど麺類のダシとして使われている。最大の産地の土佐清水市では一本釣りで大切に水揚げされ、手間暇かけて作られている。「和食」が世界無形文化遺産に登録されたこともあり、注目を集めそうだ。

ソウダガツオはサオで釣り上げられる

 高知市中心部から車で2時間半ほどかかる県西部南端の漁師町、土佐清水市。訪れた4月24日の夕方になると漁を終えた船が下ノ加江漁港に次々と戻ってきた。釣り上げたソウダガツオが保管されたコンテナが次々とクレーンでつり上げられ、水揚げされた。

 この日は比較的大漁で、1匹当たり500グラムのソウダガツオを1トン近く釣り上げた漁師もいたという。地元の船主会の会長を務める船長利男さん(60)は「下ノ加江ではすべてサオで一本釣りする。傷つきやすい魚でもあるため、氷を使わずにセ氏2度に保てる冷蔵装置を活用するなど品質には徹底的にこだわっている」と胸を張る。

 土佐清水市の漁港では年間3800トン前後が水揚げされ、5割以上が下ノ加江だ。こうして大事に扱われた素材が宗田節加工会社に渡されることになる。

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宗田節の原料となるソウダガツオ

 下ノ加江から車で30分ほどの場所にある宗田節加工の新谷商店。加工場内は香ばしさで満たされている。従業員の女性たちがゆで上がったソウダガツオの骨や内臓、頭を1匹1匹手作業で素早く落としていた。

 「非常に手間をかけている。取引先からは絶対に必要な素材といわれると手は抜けない」。新谷商店の新谷重人さん(38)は話す。

 宗田節はまず、セ氏90度以上で4~5月の場合で90分以上ゆでる。骨などを落とした後に、せいろに並べて薫製する「焙乾」の工程に入る。1日4回ほど火入れをして、1週間前後続ける。焙乾後には1~2日ほど天日干しする。ここまででできるのが「裸節」だ。

 気温28~30度、湿度85~90%に保った加工施設に入れてカビ付けすると「枯れ節」になる。油脂や水分を除去し、風味に変化を出す効果がある。

ゆでたソウダガツオを手作業でさばく(左)、焙乾後には天日干し(右)

 裸節は濃厚なうまみが出て、主に西日本で好まれる傾向。枯れ節はあっさりしたやや上品な味わいとなり、関東でよく使われているという。

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 「日本の麺文化の一翼を担っているという自負は持っている」。土佐清水鰹節水産加工業協同組合の代表理事組合長、武政嘉八さん(66)は強調する。

 土佐清水でもかつてはカツオ節が生産されていた。ただ、水揚げが少なくなってしまったことから40年ほど前から、ソウダガツオが中心になる。東京のそば店や関西のうどん店などから高い評価を受けたことから生産が拡大。土佐湾周辺に多く生息していることもあり、全国の出荷量の7割以上を占めているという。

 漁業の衰退などによる漁獲量の落ち込みなどで2005年に3000トン以上あった生産量は09年には半分程度にまで落ちこんだ。需要も個人経営のそばやうどんの専門店などが減少傾向にあることから、低迷期に入ってしまっていた。

 このため、販路拡大にほとんど取り組んでこなかった個人向けの商品に着手した。ヒット商品となったのが宗田節を瓶に詰めた商品だ。しょうゆを入れると手軽に濃厚なダシじょうゆが味わえる。10年にいち早く商品化したウェルカムジョン万カンパニーが「だしが良くでる宗田節」を14年は年間7万本販売。15年には加工場を新設した。

 第三セクターの土佐清水元気プロジェクトは地元の特産品と宗田節を合わせたドレッシングなどを投入し、順調に売り上げを伸ばしている。節加工会社も削り節や粉末にしたダシのもとなどを販売している。中でも、新谷商店の「卵かけご飯専用極上宗田節」は生産が追いつかず、店頭に並べるのに1週間以上待ってもらう時があるという。

 「宗田節は素材から加工まですべて地元で完結できる。和食の文化遺産登録も需要拡大の追い風となる」。土佐清水市の市長を務める泥谷光信さん(56)は期待する。手間暇かけて作られた宗田節が飲食店だけでなく、家庭でも手軽に使われるようになる日がやってくるかもしれない。

<マメ知識>生食には不向きだが
 宗田節の原料となるソウダガツオはカツオより小型で体長30~40センチメートルほど。目と口が近いことから高知では「メヂカ」ともいわれる。傷みやすく鮮度落ちの早い魚で血合いが多いため、生食には向かない。一方で、ダシとしては濃厚な味わいで、「香りカツオに、味ソウダ」ともいわれる。
 資源量についてはどうか。高知県土佐清水漁業指導所の所長である津野健太朗さんは「土佐湾周辺には十分に存在し、現状のように釣り漁が主流であれば枯渇する可能性は低いと考える」と話す。

(高知支局長 古宇田光敏)

[日本経済新聞夕刊2015年5月26日付]

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