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ビジネスは声が肝心 トレーニングで好感度アップ 営業・プレゼン・会議で有利に

2015/5/21 日本経済新聞 夕刊

ビジネスの場などで「声で損をしている」と感じる人は少なくないだろう。よく通る声ではきはきと話すことができれば、好感度はぐっとアップする。ぼそぼそ、がらがらした声もトレーニングや工夫次第で印象を変えることができる。具体的な方法を専門家に聞いた。

メーカー勤務の松本稔さんは「周囲とのコミュニケーションがうまくいかない」と悩んでいる。もともと地声が聞き取りづらいせいか、営業先で相手から聞き返されることが多い。会議でもしっかり声が出せず、耳を傾けてもらえない。「なんだか暗い感じ」「やる気がなさそう」。そんなイメージまで持たれているようだ。

■腹式呼吸を意識

「声で印象は大きく変わる」と、プレゼン話し方研究所(東京・港)社長の吉野真由美さんは話す。「地声は人によっては聞きづらいうえ、がさつな感じがする場合もある。営業やプレゼンテーション、会議などでは、意識して『通る声』で話そう」と提案する。

通る声といっても、単に大声を出せばいいわけではない。過度に大きな声は威圧感を与えることもある。響きがあり、聞き取りやすい声を目指そう。

青山ヴォイス・メイクアップアカデミー(東京・渋谷)代表の白石謙二さんは「まず呼吸を見直すべき。息を吸うときおなかに空気を入れ、吐くよう意識する腹式呼吸を勧めたい」という。

姿勢や口の開け方を意識し発声練習をする(東京都渋谷区の青山ヴォイス・メイクアップアカデミー)

胸を膨らませて空気を吸い込み、吐きながら声を出す胸式呼吸をする人が多いが、この方法だと呼吸が浅くなってしまい、しっかり発声できない。大きな声を出そうとすると、喉に負担がかかり、いかにも苦しげな声になってしまう。

「声の響きや大きさは、吐き出す空気の量や圧力で変わる」と白石さんは言う。深く多く息を吐き出せる腹式呼吸なら、上手に声をコントロールできる。

腹式呼吸で声を出すには、まず上下の歯を閉じ、歯の隙間からスーッと息を吐ききる。こうすると自然に腹筋が締まるのがわかる。次に腹筋を緩めると、空気が体の中に入ってくるが、このとき口ではなく鼻から息を吸うようにする。

このように呼吸しながら、息に声を乗せるつもりで発声すると、しっかりした発声ができる。「おなかを水道の蛇口、喉をホース、声を水と考える」と白石さん。鼻や口、喉の周辺に声が響くよう意識しよう。

腹式呼吸での発声は、腹筋や横隔膜などをしっかり動かすため、最初は少し難しいかもしれないが、慣れれば自然にできるようになる。「口はあくびをするときの要領でゆったり大きく開ける。こうすると、自然と舌が下がり喉が大きく開く」(白石さん)。話すときは唇をしっかり動かし、一語一語をはっきり、ゆっくり発音したい。

■普段より高めに

声の高さも重要だ。吉野さんは「明るい印象を与えるには、普段よりやや高めの声を出すこと」と助言する。「女性も男性も、音階の『ソ』の音を出すつもりで発声するといい。電話営業ではさわやかに聞こえるからと、裏声を使って話す人も多い」(吉野さん)。このとき、声を上あごに響かせるよう意識する。

表情も声に影響を与えるという。口角を上げ、笑顔で話すと、好感が持てる声になる。姿勢も重要だ。猫背で机に肘をついて話すと、きれいに発声できない。浅く腰掛け、背筋を伸ばそう。

人前で話すことが多い人は、日ごろから出勤前、休憩時間などに発声練習をしておきたい。

腹式呼吸や、笑顔で話す練習は鏡の前でする。デスクワークの多い人は、筋肉の凝りからしっかり呼吸、発声できないことが多いので、首や腕の柔軟運動をしておくといい。

舌の運動も効果的だ。吉野さんが勧めるのは、口を大きく動かしながら「あいうべー」と発音する運動。「べー」というところで、舌先をあごにつけるつもりで、思い切り舌を出す。

ただ、いくらきれいに発声できても、相手の心に届かなければ、意味がない。

音楽座ミュージカルのプロデューサーで俳優の藤田将範さんは、「舞台の役者は観客の反応を見ながらせりふをしゃべる。自分の声がしっかり届いているか、耳障りでないかどうか、相手の表情などを確認しながら話すことが大事」と指摘する。

ずっと明るい流ちょうな感じで話していると、聞き手も飽きてくる。話の流れに応じて、トーンやリズムを変えるといいだろう。たとえば、親近感を持ってもらうには、ささやきかけるようにしゃべる。特に重要な場面では、声のトーンを落とし、ゆっくりと強調するように話そう。

きれいな声を保つには、強い酒やタバコは避ける。乾燥も喉によくない。水分をこまめに取り、あめなどで喉をなめらかにするなど、ケアを心がけよう。

(ライター 西川 敦子)

[日本経済新聞夕刊2015年5月18日付]

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