足のかゆみ…、水虫か? 正確な判定は顕微鏡で

暑い日が増え、水虫が気になる人も多いだろう。水虫が別の炎症と診断されたり、かぶれなのに水虫だと言われたりするケースが続出している。ちょっと見ただけでは紛らわしい場合が多いからだが、本来使うべき薬とは違うものを塗ったり服用したりして、症状が長引く例もあるので注意が必要だ。

50代のYさんはある年の夏、足の裏がかゆくなり、皮膚科を受診した。医師は一目見ただけで、「足の指の間がきれいだから水虫ではない」と炎症を抑える軟こうを処方した。ところが翌年もかゆみがぶり返したため、受診先を変えるか迷っている。

日本大学の照井正教授は「皮膚組織を顕微鏡で調べる必要がある。そうしないと数十パーセントの確率で間違う」と警鐘を鳴らす。水虫なら原因となるカビの仲間の白癬(はくせん)菌が顕微鏡で見える。

■知らず感染源に

帝京大学の渡辺晋一主任教授によると「足がかゆく水虫ではないかと悩んでいる人の多くは実際には水虫ではない」。逆に、本当に水虫にかかっている人のほとんどは自覚症状がない。かゆみを訴えるのは10人に1人くらいで、気づかないまま放置すると「白癬菌をばらまき感染源になってしまう」。

水虫と間違われやすいものにはどんな病気や症状があるのだろうか。照井教授は代表例として、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症を挙げる。免疫系の異常などで起きると考えられ、40歳前後に患者のピークがある。女性患者は男性の2倍程度いる。喫煙などが発症の引き金になる。

手足などの汗をかきやすいところに血液中のリンパ球の一種が集まって起き、かゆみを伴う。指の間に皮疹ができる様子が水虫のように見える場合もある。透明な水疱と濁った膿疱の両方が現れる。繰り返すうちに鱗屑(りんせつ)と呼ぶふけのような白い粉が生じ、ひび割れする。白癬菌をやっつける抗真菌剤を飲んでも効果はない。ステロイド軟こうや活性型ビタミンD3外用薬で炎症を抑える。紫外線を週に1、2回照射する治療法もある。

掌蹠膿疱症患者の1~3割は骨や関節の炎症を伴い鎖骨と肋骨、胸骨が合わさるあたりが痛む。寝返りを打つのもつらい例もある。「内科、整形外科、皮膚科などを転々としてようやく掌蹠膿疱症だとわかるケースもある」(照井教授)。治療には免疫抑制剤を使うほか、抗体製剤の臨床試験(治験)も始まっている。

皮膚がかさかさする乾癬も水虫と間違えやすい。一般的な尋常性乾癬は鱗屑を伴い、大きさが1~2ミリメートルの赤く小さな紅斑が頭、肘、膝などに出る。高温で湿度も高い夏に悪化しやすい水虫と異なり、季節によるかかりやすさの違いはない。炎症を鎮めるのにステロイド軟こうなどを使う。

尋常性乾癬は皮膚の表面を覆いバリアー機能を持つ角質がやられ、足の裏全体が固くなる角質増殖型水虫と見分けにくいという。関節の炎症を伴う乾癬もあり、関節症性乾癬と呼ばれる。手足の指に膿疱ができる膿疱性乾癬も知られる。掌蹠膿疱症や関節リウマチとの見分けが難しい。

水虫に比べてまれだが、紅色陰癬も紛らわしい。細菌による感染症で、指の間や股の皮がむける。紫外線を当てると原因の細菌がサンゴ色の蛍光を発することを利用して、診断が可能だ。このほか皮膚表面の角層の隙間にある脂分が、あたかも菌のように見えるものをモザイク菌と呼び、これを水虫と見誤り薬を塗り続けている人もいる。

■アレルギーの例も

菊池皮膚科医院(東京・荒川)の菊池新理事長は「手のひらや足の底の皮がむける金属アレルギーも水虫と誤診されやすい」と指摘する。体中がじんましん状になりかゆみが広がることもあるが、足にできると水虫と区別しづらい。同理事長は原因の金属として、虫歯治療に使うパラジウムなどをあげる。長年のうちに溶け出し、血流にのって体中に回りアレルギー症状を起こすとみる。

水虫(足白癬、写真左)と、掌蹠膿疱症(同中央)、金属アレルギー(同右)などは見分けにくい=菊池皮膚科医院提供

発汗異常で汗腺の出口付近が詰まるなどしてできる汗疱も水虫によく似る。照井教授によると、この場合も汗の中に溶け出した金属によるかぶれが起きる。

水虫の判定は皮膚の白っぽくなった部分などをピンセットでとってプレパラートに載せ、薬剤をたらして顕微鏡で白癬菌の有無を調べるのが確実だ。顕微鏡を置いていないクリニックなどで受診するのは避けた方がよい。また、勝手に自己診断して薬局で塗り薬を購入すると、余計な成分でかえってかぶれる場合があるという。必要のない飲み薬を続ければ、副作用や他の薬との相互作用など不利益の方が多くなりかねない。

受診時はそれまでどんな薬を使い、症状はどう変わったかをきちんと話す。信頼できる医師をみつけておくことが大切だ。

(編集委員 安藤淳)

[日本経済新聞夕刊2015年5月8日付]

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