健康・医療

健康づくり

肩のつらいこり、脇の筋肉の硬さから

2015/5/7 日本経済新聞 プラスワン

 「慢性的な肩こりでつらい」「肩を回しにくくなった」「痛みで腕が上がらず、仕事や家事にも支障がでる」――。加齢とともに増えてくる肩の不調だが、その原因は肩以外の場所にある可能性もある。肩を健康な状態に保つコツを専門家に尋ねた。

 誰でも一度はやったことのある、ボールを山なりに投げるオーバースロー(上手投げ)の動作。小さな子どもでもできるが、実はヒト以外ではチンパンジーなどサルの仲間の一部だけができる。腕を前後左右に大きく回せる自由度の高い肩の関節のおかげで可能になっている。

■肩甲骨が中心に

 肩を動かすのに一番重要な働きをしているのは肩甲骨だ。肩の背中側についている三角形の骨で上腕の骨は主に肩甲骨を介して胴体とつながっている。肩甲骨の特徴は、「上腕三頭筋」など腕の筋肉、「僧帽筋」や「広背筋」など背中の筋肉、「小胸筋」など胸の筋肉など様々な筋肉とつながっていることだ。

 昭和大学藤が丘リハビリテーション病院(横浜市青葉区)の筒井広明教授は「肩甲骨は、いわば軟らかい筋肉の海のなかに浮かんでいる船のような存在」と解説する。この肩甲骨を取り囲む筋肉群が腕のスムーズな動きを担っているのだが、そのせいで肩は全身からの影響を受けやすい。

 筒井教授が肩こりで悩む患者の体を調べてみると、「体の脇の筋肉が硬くなっているなど、肩以外の場所にもともとの原因が見つかることもある」と話す。また、四十肩や五十肩は肩の老化が原因と思われがちだが、運動不足によって体全体の動きの滑らかさが失われることで発症しやすくなっているのだという。

 例えば、近くにある物を取ろうとしたとき、若いときには意識しなくても体全体を目的の物の方に向けて取るが、運動不足が続くと体がついていかず腕だけを動かすことになりがちだ。すると、肩の筋肉の一部に負担がかかり関節に炎症を起こすことになる。

■心身の状態映す

 また「肩を落とす」「肩に力が入る」といわれるように、精神的なショックなども肩に表れる。筒井教授は「肩は心身の状態を映すバロメーターともいってもいい」と話す。肩の動きの異常に早く気づくことが大切だが、問題は腕や脚の動きは自分で見えても、その動きが正常かどうかは気づきにくいことだ。

 理学療法士の山口光国さんは「鏡を使えば肩の基本的な動作を確認できる」と話す。例えば、真っすぐ胸を張って立ち、左右の肩が同じかどうかを確認する。さらに腕を上げてバンザイしてみる。この時に左右の腕の角度は同じだろうか。

 次に背中を伸ばして椅子に座り、片方の肘を直角に曲げ、もう片方の手で軽く固定。そして円を描くように回してみる。スムーズな円ではなく、肩の動きが三角形を描いていないか。また、腕を肩の位置まで上げて体の前に伸ばしたり、後ろに引いたりしたときに、しっかり肩も動いているだろうか。

 山口さんは「こうした肩チェックは、肩の異常に気づくきっかけになるほか、肩の動きを健康に保つトレーングにもなる」と話す。ただ、この動作で強い痛みを感じる場合、動作が正しく行えない場合などは、早めに整形外科などで相談した方がよいという。

 肩には体全体の老化が表れやすい。肩の不調を予防するために心がけたいこととして筒井教授は「若々しいエレガントな動き」を挙げる。例えば、物を取るとき、振り返るとき、年とともに首や手など先端部から動かしやすい。それを腰や胴体から動かすと「若々しく見える」だけでなく、五十肩や首の痛みを予防することにつながる。

 また、体の筋肉は動かさないでいると、しだいに硬くなる。デスクワークの多い人は、足腰や胴体の筋肉が硬くなっているのに、腕だけ使うので肩に負担をかけて肩こりになりやすい。正しい姿勢と軽い運動で解消を心がけたい。

 背筋を伸ばし、椅子に浅く腰掛け、立ち上がろうとするような前傾姿勢が肩に負担がかからないという。こりを感じたら、強く肩をもむのは逆効果だ。座ったまま腕をゆっくりと左右に引き上げるような運動を数回行うと、体の脇の筋肉を伸ばすことができ、肩の負担も軽くなるという。

 普段、自分では気づきにくい体の動き。筒井さんは「週に1度は、鏡やスマホの動画撮影機能を使って姿勢や動作をチェックしてみては」と助言する。

◇            ◇

■子どもの肩動きにくく、ケガの原因に

 理学療法士の山口さんは、普段の診療経験を通じて、「子供たちの肩が硬く、可動範囲が狭くなっている」と感じている。「住宅事情によりハイハイなど腕をつかって動きまわる機会が減っている上、ジャングルジムなどぶらさがる遊具も減っていることが原因ではないか」と推察する。

 肩の機能が未発達のまま、少年野球、サッカーなど激しいスポーツに取り組むと、さまざまなスポーツ障害をもたらす要因にもなる。「安全を確保しながら、野外での遊びなど、さまざまな運動に親しんでもらうことが、子供の肩を守ることにつながるのではないか」(山口さん)と提案する。

(ライター 荒川 直樹)

[日経プラスワン2015年5月2日付]

【関連キーワード】

肩こり

健康・医療

ALL CHANNEL